天才数学者×謎の館=本格ミステリ|読書感想「眼球堂の殺人〜The Book〜」周木律
突然届いた招待状。
行き先は山奥の奇妙な建造物。
招かれたのは、各界の天才たち。
そこで、突然起きる殺人事件。
外へのドアは開かない。
クローズド・サークルの中で
犯人からの挑戦を解くことは出来るのか。
「これこれ。そうだよ。こういうのがいいんだよ…!」
心の中で、ミステリ好きの井之頭五郎(イメージ)が満足そうに微笑む。
導入から結末まで、まさに、こんなミステリが読みたかった!と言いたくなるような、「まっすぐに面白い本格ミステリ」がそこにあった。
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「眼球堂の殺人〜The Book〜」
著者:周木律
出版社 : 講談社 (2016/9/15)
発売日 : 2016/9/15
文庫 : 576ページ
🏆️第47回メフィスト賞
✒天才同士の戦い、数学、建築学、精神医学、芸術家、物理学、政治家、クローズド・サークル、建造物の謎、二重扉、空中の死体、奇妙な落下死、黒と白
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とにかく、面白い。
魅力的な設定、推理に参加したくなるストーリー、丁寧な謎とヒントが散らばり、しっかりと読者にも解けるようになっている。
こういう「期待した通りに楽しめる」ミステリを探すのは、意外と難しい。ちょっとでも内容を調べようとすると、ネタバレを踏んでしまう世の中で
「推理を楽しめるクローズド・サークルはこちらです!!」
と大きな声で宣伝したくなるような作品だ。
舞台となるのは、天才建築家が作り上げた「何かを成し遂げる目的があって作った」感じがプンプン漂う奇妙な建物。
その見取り図から推理をしていく。理系っぽいとか、難しいと感じる方もいるかもしれないけれど、名探偵コナン等でも時々ある、部屋の図面に犯行の位置などが書いてあり、それをもとに推理する…。アレが好きな方は、楽しめるトリックだと思う。
天才が多数登場すると、どうしても学術的なセリフも増えるけれど、ワトソン役のジャーナリストが理解を助けてくれているし、もしも、それを読み飛ばしたとしてもストーリーを追うことは可能。
そして、読みすすめていくと
「ああ、そんな方法があったのか!」という驚きや、
「わかった!これしかない!さあ来い。解決編!」という高揚を味わうことができた。
あまりに楽しい読書体験で、最後まで読み切ってしまうのがもったいないと思ったのは久しぶり。
ゆっくりと終盤を読んで
驚く。
まさか、エピローグまで楽しめるなんて。
ここで語られたことは、ずっと気になっていたけれど、ピタリと正解にたどり着くことが出来ていなかった。
「ああ。とても悔しい!」
私の挑戦は、こんな風に終了した。
トリックまでは接戦だったけれど、最後に持っていかれてしまった感じ。
ページをめくると、作品一覧が載っていた。
嬉しいことに、この作品はシリーズ第一作目のようだ。
よーし。次は負けない…!
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