雑感46:サンデルの政治哲学 <正義>とは何か
鮮やかな対話型講義で一躍、時の人となったサンデル。難解と言われる彼の政治哲学を、NHK「白熱教室」の解説でもおなじみの著者が読み解く。1冊=1章で、サンデルの全著書がこの1冊でわかる!
サンデル本人が推薦!!
「私の政治哲学を、完全に、そして深く、彼は理解している」
日本の読者に私の考えを紹介してくれている小林教授に、私は深く感謝している。長年にわたり多くを語り合っているので、彼の判断を私は信頼しており、私の政治哲学と同時代への示唆について、完全にそして深く、彼は理解してくれている。
―マイケル・サンデル
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『これからの「正義」の話をしよう』などの幾つかのサンデル本を読んでいる中で本書のことを知った。本って、面白い、というか巡り合わせであるとつくづく感じる。その分野に興味を持って本を読んでいるとその本の中で新たな本に出会って自然とその界隈について詳しくなっていくというか、興味が深まっていくというか。
何にせよ、サンデルお墨付きの解説本的な位置付けだったので迷うことなく買った訳だが、作者は素人でもわかるようにかなり平易に書いてくれているのだろうが、私には難解な部分もあり牛歩的な読書ペースであった。
しかし、実に読み応えがあった。
章ごと(講ごと)にサンデルの著作を1冊ずつとりあげてそのエッセンスを日本語で(←なんだかんだでここが一番重要では?)分かりやすく解説してくれる。
その中身は個人の善と正義であったり、国家の善と正義であったりと様々ですが、本著の主題は後半でも多く述べられている通り、人間にはストーリーがあり、それゆえ負荷があるということと、正義と善の相関(切りたくても切れない)なのだろうか。私の脳みそでは自信をもって記せないが、この主題をロールズ的なリベラリズムだったり、リバタリアニズムだったり、功利主義だったりと比較することで、その違いを明確に、浮き彫りにしているような、そんな印象を受けた本でした。
素人に助かるのは、事例が豊富なので読みやすい点。「サンデルがこの事例を持ち出している」という書き方が多い(多かったと思う)ので、一つ一つの事例を詳述しているわけではないが、アファーマティブアクションだったり、妊娠中絶だったり、代理母だったり、優生学批判だったり。
個人的に印象深いというか、読み耽ったのは第三講の『民主制の不満』の解説講。アメリカ建国からの奴隷制度や共和制(共和国)に関する当時の論議が見えてくるこの講は、在り来たりな表現になるが、学校の世界史の教科書ではなかなか見えてこないアメリカという国のバックグラウンドというか、経緯を垣間見ることができて非常に興味深かった。そして日本と比較する上でも重要な示唆になるかと。
『これからの「正義」の話をしよう』を読んで以来、素人なりにこういった界隈の書籍を色々読んでいるので、結果論になるが私はコミュニタリアリズム(本著に沿って厳密に言うと、「善-正相関的コミュニタリアリズム」)に共感・共鳴しているのだと思う。結果としてね。
私の生きている世界が狭いからか、日本が他国と比べてどうなのかよく分からないが、日本は資本主義が暴走しているというほど、暴走していないのかな。米国に比べると貧富の格差はそこまで大きくないのだろうか。どうなんだろう、一億総中流社会。
日本の政治家は米国ほど正義や善を政治でどう取り扱うかを明確にしていないような気もする。単に、私が自覚的でないだけかもしれないが。どうなんだろう。自助・共助・公助とは。
色々書いたが、素人でも読める非常によくまとまった本で、前にも何か別の本で書いたが、このような本が世の中にあることがありがたい。そして簡単にこういった本に出会える現代社会にも感謝である。
またいつか再読すると思います。とりあえず疲れたので次は平易な小説を読みたい。
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