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「Invent&Wander」を読んで考えた

  アマゾンを創ったジェフ・ベゾスの著作「Invent&Wander」(発行所:ダイヤモンド社)を読んでみた。

経営者自身の言葉

  昔から、起業経営者の自伝的な本が好きで、あれこれ読んできた。
  最近でも、ジェフ・ベゾスの他に、フィル・ナイト(ナイキ)、レイ・クロック(マクドナルド)、レイ・ダリオ(ブリッジウォーター)、ジェームズ・ダイソン(ダイソン)等の海外の経営者。国内の経営者でも、永守重信(日本電産)、高田明(ジャパネット)、似鳥昭雄(ニトリ)、藤田晋(サイバーエージェント)、南場智子(DeNA)、等々。

  起業経営者の自伝本には、2つのタイプがある。

      ● 起業経営者自らが書いた自伝本
      ● 起業経営者のことを知るライターが書いた本

 読み易いのは、圧倒的にライターが書いた本。起業した会社の成長過程等々が、理路整然として、重要ポイントが明確。著作のプロである編集者や新聞雑誌等の記者だけでなく、経営研究の専門家である学識経験者やコンサルタント等が、当該起業会社だけでなく、関連範囲まで網羅的に示し、当該会社をクローズアップさせてるので、わかり易いし、バランスもいい。その会社や経営者の人柄を網羅的に知るには、これがいい。

 一方の起業経営者自身が書いている自伝は、正直に言えば、読み難い。書籍の構成も偏ってるし、独特な文章表現も多い。まぁ、自己主張が強いから経営者になったんだろうし、物書きの専門家じゃないんだから仕方ない。

 それでも私は、経営者自身の肉声を綴った自伝的な本が好きだ。
 知りたいのは、その人の生き様。発する言葉遣いであって、国語的に正しくなくたっていいし、ベストセラーでなくても(書いた本人はそう思わないだろうけど)。可能なら、経営者自身の軌跡を、本人自身の語り口で直接、聞いてみたい・・・。

株主への手紙

 「Invent&Wander」はヘンな本だ。個性的っていう意味で。
 400ページにも及ぶ大著の半分くらいが、「株主への手紙」になっている。株主でもない読者に、株主向けに書いたものを読ませるって、どういうこと? なんか面白そう。

 「株主あての手紙」は、その会社に出資してくれた人達向けの手紙のようなもの。
 経営者が株主に対し、「しっかりと経営してますよ」、「あなたが出資してくれたお金はちゃんと収益につながってます」「この先も大丈夫ですよ。ご安心下さい」等々、現況報告や将来性をアピールする機会でもある。もちろん、そこに書かれているのは、将来への情熱や思い込みはあるかも知れないけど、嘘じゃない。真摯な経営所見だ。だけど、あくまで出資してくれた株主向けであって、読者向けじゃない。
 「株主への手紙」で思い起こすのは、高名な投資家のウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ社の年次書簡「株主への手紙」。ここには、成功し続ける投資会社の見立て(この先の世界動向や主要投資先、等々)が記されており、斯界に関わるいろんな人達が読み漁って、自分たちの投資の参考にしている。

 「Invent&Wander」には、1997年~から2019年までの20数年間の株主への手紙が掲載されている。こうしてまとまってると、アマゾンという会社の成長の軌跡が見えてくる。
 さすがジェフ・ベゾスと思ったのは、最初の1997年の時から、短期収益を重視する投資家たちに向けて、「ちゃんと儲けて見せるから、少し長い目で見て下さいよ」と直球を投げている。
 凄いな。
 日本では、モノ言う株主なんてことが物議を醸したことがあるけど、そんな株主の多いアメリカ市場で、長い目で見ろと言いきってしまう。
 正論だけど、それが言える経営者は少ない。それを、まだ、伸び盛りの頃に言ってしまうなんて、大したもんだ。

 書籍の通販としてスタートしたアマゾンは、今では書籍だけでなく何でも売ってる世界最大のネット販売会社。と思ってたら、2015年の株主への手紙では、自らを「発明マシン」と言ってた。小売店じゃぁない、ってことか。会社の在り方すら変わっていく
 けれど創業者のベゾス氏は、2021年にはアマゾンのCEOを退任し、宇宙ビジネスにシフトしていった。イーロン・マスクやビル・ゲイツなんかも自分が創った会社なのに、早々と離れ、次の道へ行く。こういう人達を才能ある人と言うんだろうな。この先、どうなるのか、楽しみだ。

 もちろん、ベゾス氏が抜けたアマゾンだって、右肩上がりで急成長を続けている。もはや、アマゾン無き世界は考えられないくらいの昨今、これからどうなるんだろう。

夢中になって働き、俯瞰して決断・・・・できるか

 ジェフ・ベゾス氏ほどの人でも、最初は書籍の箱詰めや郵便局までの搬送とか、地道な事をやっていたんだな。私と同じだ、と思った。
 何かを成し遂げるために、一生懸命になってる。脇目も振らず、時も忘れるほどに熱中すること、夢中になれることって、最強だ。

 やっぱり。

 ジェフ・ベゾスだけじゃない、フィル・ナイトも藤田晋も南場智子も、起業時は何もかも忘れて、夢中になる時があった。と書いてある。私如きでも、社長業の時は夢中であっという間に時が過ぎていった。

 けれど、ベゾスさんたちは、私と違って、「人生のギア・チェンジ」が上手だった。
 彼らは、私と同じように夢中になって働く自分がいるだけじゃなく、俯瞰して自分を見つめ、会社全体を見てる。そして、自分を含め、誰がどうすればいいのかを冷静に考え、決断していく。このあたりが、情に流されがちの私とは大違いだ。

(敬称略)

#ビジネス書が好き

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