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登場人物に何を言わせるか、だ|クスノキの番人
「ああ、この台詞を言わせるための登場人物と設定なんだな。」
ここ最近、読書をしていてそう感じるようになった。
以前まではストーリーや設定を重視して物語全体の流れを楽しむことが多かった。
今回であればクスノキの秘密が徐々に解き明かされていくワクワクや、玲斗と千舟の関係性の緩やかな変化に焦点をあてていたはず。
最近読んだ数冊は、それだけではなく登場人物のピンポイントな台詞が際立って頭に残る。
この人にこの台詞を言わせるために書いた小説なんだろうなとまで思ってしまう。
でも覚悟はできています。失うものが何もないので、怖くありません。一瞬一瞬を大切にして、前から石が転がってきたら素早くよけ、川があれば跳び越し、越せない時は跳び込んで泳いで、場合によっては流れに身を任せる。そんなふうに生きていこうと思っています。そうして死ぬ時、何か一つでも自分のものがあればいいです。それはお金じゃなくていいし、家や土地みたいな大層な財産じゃなくていいです。ぼろぼろの洋服一着でも、壊れた時計でもかまいません。だって生まれた時には、この手には何もなかったんですから。だから死ぬ時に何か一つでも持っていたら、俺の勝ちです
主人公の玲斗が大人たちに言い放ったこの台詞が強烈に印象に残った。
きっと読み手によって受け取るメッセージは変わると思う。
もし私が小説を書くならどうだろう。
誰に、何を、どんな風に言わせたいだろうか。
設定やストーリー基点ではなく、台詞起点で物語を組み立ててみたいという気持ちがふつふつと湧き上がってくる。
みなさんなら、誰に、何を、どんな風に言わせたいですか?