腸と脳の連動不調に効く食事とは
腸と脳はつながっている。
腸は、第二の脳。
そう見聞きしたことがある方も多いのではないか。一見関わりのない脳と腸が、互いに情報を伝達し合い、双方向で作用しあっているという「脳腸相関」。
しかもこの脳と腸との関係に、腸内細菌が深く関わっているという。
この考えを初めて知ったとき、長年悩まされてきた不調の謎が解けた気がした。
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私には二つ持病がある。一つは、「潰瘍性大腸炎」という原因不明の大腸の炎症性疾患。免疫システムが何らかの理由で異常をきたし、粘膜に炎症が起こる。
もう一つは、パニック障害。飛行機や電車など閉鎖的な空間で、立ちくらみや冷や汗、なんともいえない不調におそわれる。
やっかいなことに、この二つは多くの場合、連動して起こる。
バスや電車の中でおなかが痛くなると、「トイレにいきたくなったらどうしよう」との不安感から、パニック発作が起きてしまう。
反対に、トイレのない特急列車などで「おなかが痛くなったらどうしよう」と不安感からパニック発作が起こり、間もなく実際におなかが痛くなる。
まさに悪循環。相互不調が、連鎖反応的に起きる。
これが割と、つらい。どう例えるのが適切かわからないけれど、高熱が出た時のような、全身がだるくて頭がぼーっとして、体が崩壊しそうなヤバイ感じ。これが外出時に、よく起こる。
ただ、症状には波があり、快調な日々が何年か続いたかと思えば、またダメになったりもする。頓服の薬以外にも、呼吸法や、自律神経に効くツボ押しでよくなることもある。なにより、ストレスをためないように、バランスのよい食事と睡眠をしっかりとることで、悪化させないように、うまく付き合っていくものと思っている。
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そんなある時、『わたしたちの体は寄生虫を欲している』との衝撃的なタイトルの本を図書館で見つけた。著者は、ノースカロライナ州立大学生物学部教授のロブ・ダン氏。
その本には、寄生虫を腸内に戻すことで、免疫疾患が快方に向かうという説が書かれていた。
本来、人は寄生虫やさまざまな菌と共生関係にある。それが、食生活の変化や抗生物質により、腸内の異物がずいぶんと減ってしまった。
すると本来、異物を攻撃するようにできている免疫システムは、外敵がいなくなっても攻撃の手を止めることはなく、自分自身の腸の粘膜を攻撃してしまう。それが疾患の原因なのではないかとの仮説を打ち立てている。
そのため、腸内にあえて寄生虫を戻すことで、免疫システムが自分自身を攻撃することをやめるのではないか。著者はそう唱えている。
実際にその方法を取り入れ、症状が軽くなった事例も紹介されている。
寄生虫と聞くと驚くばかりだし、実際に寄生虫を自分に取り入れようとはなかなか思えない。でも、寄生虫を「腸内細菌」におきかえるとどうだろう。私には合点がいくように思えた。
食物繊維や発酵食品を多く含む食事、つまり腸内細菌の中でも善玉菌が活発に働きやすい食事をとると、腸の調子がよくなる。明るめの色の便が出て、炎症の気配はない。
一方、揚げ物や動物性のお肉、糖が中心の食事をとると、下腹部がじんわり重く、調子が悪くなる。翌朝の便は暗めの色になり、炎症が起きる。
腸内環境を整えることで、私の場合、自己免疫が誤作動しにくくなるようなのだ。
腸の調子がよければ、パニック発作もどこ吹く風となる。ついでにお肌もツヤツヤ。若返り効果もある。
結局のところ、日々、バランスの取れた食事が、腸と脳の相互不調の防波堤になる。
たまには、脂っぽい食べ物やお肉にも惹かれ、家族や仲間たちと楽しくいただくこともある。けれど、翌日、あるいはその日の夜、つらい思いをすることが多いのも事実。
全くおもしろみのない結論だけれど、腸と脳の連動不調から抜け出すカギは、バランスの取れた食事。食物繊維やビタミンやミネラル、それからタンパク質と炭水化物をバランスよく取り入れることになる。
そう書くと堅苦しいけれど、辛いことばかりでもない。
もともと料理は得意でない私だけれど、腸脳相関に気づいてからというもの、すっかり発酵食品の魅力に引き込まれてしまった。
発酵食品は、菌はもとより、食物繊維もビタミンも豊富にとれる。
キウイなどフルーツの発酵シロップや、自家製豆乳ヨーグルト、玉ねぎ麹や甘酒、ぬか漬けといった自家製発酵食材が食卓を彩る。食卓は、たくさんの菌とつながりなおす集会所のようだ。
腸も脳も、菌も食事も、不調も生活のウェルビーイング度も、すべてが関係し合っている。
そんなつながりを確かめて、今日も、楽しみに食事と向き合う。