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発刊から駆け抜けた180日。ZINE『ヨソモノ』のこれまでとこれから。/ヨソモノ、ヨコスカ。#10

まずは、ちっともnoteを更新できておらず、もし楽しみにしてくれているような、奇特な ありがたい方がいらっしゃったら、ホント全方向に申し訳ございません。

noteを書くのは大好きなのですが、ZINE『ヨソモノ』発刊後の日々は想像していたよりも慌ただしく、近況報告はサッと書けるSNSに偏りがちに……いかんいかん。

3/末の発売から、早くも6か月が経ちました。
その間、増刷決定、思いがけないメディア掲載、新たな出会いなどなど、まるで大きな渦の中にぽいっと投げこまれたような毎日でした。喜びや驚き、ときには戸惑いも感じながら、あっという間に過ぎ去った180日間

今回は、そんな時間を振り返りつつ、ZINE『ヨソモノ』発刊が教えてくれたことや、これからの展望について書いていきたいと思います。(長文です)

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さて、発刊後1か月のときに書いた前回の記事がこちら。

2024年3月、刷り立てのZINE『ヨソモノ』が入ったダンボールがドドッと自宅に届いたときは、「ホントにこの箱が空になるのかいな……」と遠い目になったものです。
しかし蓋を開けてみると、まさかまさかの増刷展開。こんなに多くの方々に手に取っていただけるとは、いまだに驚きと喜びが募ります。

反響が……思ったより来た!

『ヨソモノ』を作るにあたり大切にしたのは、横須賀という街をソトから見つめる視点でした。

横須賀にくらしているヨソモノが「この街らしいな」と思う風景を、フォトグラファー橋本さんと一緒に歩いて切り取った写真ページ「いつもの、けしき。」撮影/橋本裕貴(ヨソモノ誌面より)

観光的な情報や、地域礼賛ではなく、ヨソモノの視点で街を表現することに対するリアクションは未知数。しかし発売直後から、ぽつりぽつりと手紙やメール、DMが届き始め、SNSで感想をアップしてくださる方たちも。

その一つひとつに驚くやら、うれしいやら。寄稿&撮影してくれた仲間たちや、取材に協力してくださった方々と一緒に放ったものを受け止めてくれた人がいる。その事実にものすごく心打たれました。

・「ずっと住んでいるのに、自分では言葉にできなかった横須賀の好きな所が文章の中に表現されていて嬉しかった」
・「仕事の都合で引っ越して来て、あまり街をうろついたりしていませんでしたが、横須賀のことをもっと知りたくなりました」
・「インタビューを読んで横須賀に行ってみたくなり、東京から電車に乗って掲載されていた古書店を訪問してとても楽しかった」
・「住んだらこんな感じかなあ、と暮らしているような感覚になった。それがきっかけで、市内に部屋を借りて2拠点居住を始めました」
・「ふだん見ている何気ない景色が写真になっていて、ハッとした」
・「街を出た人の感想はなかなか聞く機会がないけど、思いが伝わってきて前向きな気持ちをもらった」

読者の皆さまからいただいたメッセージの一部から(一部省略あり)


さらに北は北海道、南は九州まで、注文をいただいたことも衝撃でした。「地方都市のZINEカルチャーにアンテナを貼っている人たちが、全国各地にこんなにいるんだ!」と思うと、本好きのひとりとして震えました。

渋谷のラジオさん、FMブルー湘南さん、ありがとうございます!


あとですね、完全に予想外だったのは、ラジオ出演の機会を2度もいただけたことです。『ヨソモノ』がきっかけで声をかけていただき、横須賀ぐらしの話や制作の背景についてお話する機会を頂戴しました。

ひとつが、4月30日放送の『渋谷のラジオの惑星。パーソナリティは横須賀在住の放送作家・小原信治さんです。ヨソモノを読んだ人ならわかる「17歳の魂」のお話ほか、共に「ヨソモノヨコスカ」として感じる街の魅力など、小原さんの温かく穏やかな口調に導かれるまま、安心してお話させていただきました。(以下よりアーカイブを聴くことができます)

そして、6月22日にはFMブルー湘南の人気パーソナリティ・灯織さんの番組『ウェルカムスタジオ』にお招きいただきました。

三笠商店街の中にあるスタジオの前は何度も通ったことがありましたが、まさかその中に入れていただけるとは……灯織さんの耳に心地いい声とさすがの会話力のおかげで、いつしか緊張も忘れてあっという間の30分。

こちらについても、番組のご厚意で音源のアーカイブを聴くことができます。せっかくなので途中まで文字起こしをさせていただきました。お時間があるときにぜひお楽しみください!

かけがえのない経験をさせていただき、小原さん、灯織さんにはこの場を借りてお礼申し上げます!

初めてのZINEだけに……今後の課題もいろいろ


さて、『ヨソモノ』は私にとって初めてのZINE。つまり、やってみないと分からないことだらけの船出だったわけで、当然課題も見つかりました。

ひとつは、印刷~納品~販売の課題。
売れ行きなんて検討もつかないまま、おそるおそる刷った初版300冊が2週間で完売。あわてて第2刷、そして第3刷まで印刷手配をするのと並行し、オンライン販売の発送に、置いてくださっている書店さま・店舗さまへの納品、それにともなう伝票発行や売上の管理。

どのお取引先さまも公平に、かつ事務作業が煩雑にならないよう、直取引の条件はどの書店さま・店舗さまでも一律にさせてもらっているのですが、私が経理関係が得意なタイプではないこともあって、「いま・どこに・何冊納めて・何冊販売いただき・売上をいくらお預かりし・売掛はいくら残るか」を把握するのに、今もうんうん唸っています。

次に、包装の課題。

『ヨソモノ』はグラシン袋に入れ、カードを同梱する方式で販売しています(店舗様のご希望によって、PP袋に入っているバージョンもあります)。この販売方法にしたのには理由があります。

1500円(税込)という価格のZINEは決して安くはありません。それは、こんな時代に「紙の本」を作る以上、大事にしたいと思っていただける一冊にしたい=紙質も大切にしよう、と考えたからです。
しかし、白を基調としたデザインは、店頭にそのまま置くと万が一の汚れや痛みにつながるかもしれません。かといって、汚れにくいツルッとコーティングした紙は今回自分の中にあったイメージに合いません。

購入してくださる方に、できるだけキレイな状態でお手元に届ける方法として、汚れに強くビニールよりも環境にやさしいグラシン袋の味わいや表情も含めて「本の顔」にすることにしたのです。

お菓子やパンなど食品袋としてもよく使われるグラシン紙。吸湿性もあるため、ポストカードや切手などの保管袋として、文具店でもよく使われているのを目にします。

結果として、「この袋に入っているところも好き!」とお伝えくださる方も多く、今回の選択に1ミリも後悔はありません。ただ、納品するために袋詰めの作業が必要になるのは避けられず、イベント販売の前日や、まとまった注文が入ったときは袋に入れ、カードを入れ、テープで留める作業を夜遅くまで黙々と。
また、予想外の増刷になったタイミングで「ZINEは届いたけど袋が切れた」、「袋が届いたけどZINEがない」といった行き違いも起こり、ここは業務フローに改善の余地があるなあ、と思った次第です。

最後は、ZINE以外の問い合わせという課題。
これが今回私にとって、最も予想外かつ悩ましかった課題です。

・横須賀の街についてご意見を伺いたい
・横須賀でのビジネスの可能性について相談をしたい
・自分もメディアを作りたいので企画やアイデアを見てほしい
・ヨソモノの誌面に取り上げてほしい
・地域活動に参加してほしい
・横須賀について講演をしてほしい
・(目的は記載せず)一度会って話をしたい

などなど、ZINEづくりと脳内で紐付いていなかった、多種多様なお問い合わせが次々と……ありがたいのですが、中には(最後のやつとか)どう返事していいのか分からないものもあり。

もちろん、売れるか売れないかも分からなく始めてますから、「発刊にあたっての対応方針」なんて立派なものは考えていません。一つひとつの内容に対し、悩みながら、考えながら、自分なりに誠実にお返事をするのは、なかなかのエネルギーを要しました。これは、私が自分のやりたいことを明確に発信していなかったことが原因だな、と反省しました。

ZINE『ヨソモノ』を機に、YOSOMONO BOOKSとして自分の心にフィットする一冊を今後も出し続けようという思いは持っています。それは無料ではなく、販売するつもりです。しかし、お金をいただいてお店を紹介する、といった動きは今後もする予定はありません。

一番大切にしたいのは、ひとりのヨソモノとして、そしてなにより執筆することに喜びと生きがいを感じる者として、街の人たちに敬意を持ちながら地に足をつけ、そこにある営みを見つめ、書くこと。そしてその内容は、とても個人的な、くらしに根づいた視点で書かれた真実であることです。

2024年6月29日のThreadsの投稿より

もし私に、街に貢献できる役割があるのだとしたら、こういったソトからのリアルな視点をナカに届け、ナカにある等身大のくらしの姿をソトに伝えることではないか、と思いますし、誰かの大切な故郷や思いのある土地についてヨソモノが書く以上、「これは私が感じ、書いたこと」という姿勢を明確にし、広告やタイアップ的なお金は介在させないようにしたい。ZINEという個人的なスタイルを選んだのは、そういう理由があります。

◆現在の方針◆
・意見交換・ビジネス・講演関連については、「ヨソモノで個人」の姿勢を大切に、特定の企業や団体の利益に依るものはご遠慮させていただき、公共性の高いもの・独立メディア・非営利活動を中心に対応させていただこうと考えております。
・書店さんへのご協力やブックイベント、カフェなどの読書会、マルシェでの本販売など、「本の文化」を地域で盛り上げる観点での活動には、企業や個人問わず、前向きに参加していく予定です。

※こんな話をしていたら、横須賀の知人に「じゃあどうやって稼ぐの?」と聞かれたのですが、現在はライター業の稼ぎで20年無事に生活しております。ただ、現業とZINEのスケジュールの両立は今後の課題のひとつ!

そして、「第2号」発刊に向けて


この180日で、ZINE『ヨソモノ』の発行部数はおよそ1,000部に達しました。この数字を話すと「え?もっと売れたと思ったのに」「ZINEが半年で1,000部? すごい!」と、はっきり反応が分かれます。

何千部、何万部が動く商業出版のイメージと比較すると、控えめな数字かもしれません。しかし個人制作のZINEは少ないと数十部から、多くても100冊単位と言われています。そもそもZINEというメディアの魅力は、商業主義の波にあらがう絞り込んだテーマであり、手触りや手作り感であり、小さくも濃厚な息づかい。

部数は指標として大切ですが、信じたことを、信じた仲間と草の根から発信し、それに手を貸してくださる書店さん、お店さんとつながり、手に取ってくれた読者と誌面を通じて対話ができた。しかも、ほとんど横須賀に友人・知人もいないスタートを切った「ヨソモノヨコスカ」が、です。そういう意味で、私はこの数字を誇りに思っています。

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さて、ひょんなことから越してきた横須賀ですが、魅力はまだまだ尽きません。これからも「ヨソモノ目線」を大切にしながら、2号の制作に入ろうと思います。内容やテーマについては現在、いい感じに熟成してきましたが、まだ決定には至っていません。でも、1号とはちょっと角度を変えるつもりです。また、おいおいご報告していきますね。

また、次号の制作をスタートするにあたり、1号は現状手元にある在庫にていったん売り切り、増刷はお休みとさせていただきます。年内にZINEイベントの出店を予定しており、そこで1号の販売を終える予定ですが、お取り扱い先様にはまだ在庫がございますので、ぜひ店頭でお買い求めください。(在庫状況は店舗にお問合せください!)

※状況により、オンラインショップをクローズする場合がございますので、恐れ入りますがご了承くださいませ。

手に取ってくれた皆さま、心から感謝します!


最後になりましたが、ZINE『ヨソモノ』を手に取ってくれた皆さま、本当に本当にありがとうございました。これからもマイペースではありながら、街の姿を見つめ、それをヨソモノらしい方法で表現していきたいと思います。

そしてまだまったくの皮算用ですが、2号が無事に完成できるようこれからも応援いただけたら嬉しいです!

『ヨソモノ』を通じてつながれた皆さまに、心からの感謝を。


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木内アキ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さんからの「スキ」やサポートががとてもはげみになります!

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