見出し画像

うたうおばけ | くどうれいん

クスッとしたりヒヤッとしたり。昔を思い出したり、ホンワカしたり。
いろんな感情を呼び起こしてくれるエッセイ。
個性的でやさしい人たちばかりだけど、特に大人が。大らかでとても良い。

良い雪が降る日、わたしたちは決まって三人揃って遅刻ぎりぎりに学校に着いた。それをまゆみ先生はにこにことして叱らなかった。なぜって、雪の降る朝は各々雪に気を取られながら登校するせいで、みんな決まって遅刻ぎりぎりだったからだ。手とほっぺを真っ赤にして、目を輝かせていた。

雪はおいしい

「なんかあったときほど、夜道はひとりで帰らんといて」
「はい。ありがとうございました。お会計、教え」
タクシードライバーの手元から、ピ、と音がした。見るとメーターの表示が0になっている。
「わたしも泣いてる女の子ひとりで帰らすような女じゃないんで」
「いや、でも」
「その分、いつか泣いてる女の子助けたって」

冬の夜のタクシー

好きだなあと思う章がいくつもあった。それは好きだなあと思う人物が、ということでもある。
うたうおばけの岬ちゃん、喪服のミオ、フルーツナイフアミ、お米とお酒のまみちゃん、パソコンの人と内線の人、名人、エリマキトカゲのかおりちゃん、山さん、そしてミドリ。
特にからあげボーイズのかわいいこと。
この子達が健やかに育つような大人になりたい。

「こんにちはー!」とやっつけでわたしに挨拶をして夢中で走り去っていく。(略)
「リョウちゃんおれさっ」
「うんっ」
「きょうの夕めし、からあげなんだってー!」
「いいなーっ!」
「うおー」
からあげだー! ふたりは右手をグ―にして突き上げながら走って角を曲がっていった。

からあげボーイズ

かわいすぎる。
最近出会ったニーチェの言葉とリンクした。

『喜び方が、まだ足りない』
もっと喜ぼう。ちょっといいことがあっただけでも、うんと喜ぼう。
恥ずかしがらず、我慢せず、遠慮せず、喜ぼう。笑おう。にこにこしよう。素直な気持ちになって、子供のように喜ぼう。
周囲の人々も嬉しくなるほどに喜ぼう。
喜ぼう。この人生、もっと喜ぼう。喜び、嬉がって生きよう。

超訳 ニーチェの言葉

小さな喜びに慣れてしまった、つまらない大人になっていないか。
周囲の人も嬉しくなるほどに喜ぼう。
うおーっ。