スティル・ライフ | 池澤夏樹
冒頭2ページが良すぎて良すぎて。何度も読み返し、声に出して読む。やっぱり素敵。ここだけで読んだ甲斐があったというもの。
ーたとえば、星をみるとかしてー
くうううう。いい声で朗読を聞きたい。
星といえば。
大晦日の夜は、私の仕事が終わるのを待ってからのバタバタな帰省だった。実家の広い庭の外灯が届かないところに車を停めて二泊三日の荷物をおろす。
雲一つない新月。真っ黒な杉林の頭上に展開する星のひとつひとつがくっきりと大きい。夏は降るような星空だけれど、あの日は1個1個があるべき場所にきちんと配置されている星空だった。子供の頃から見てるのに、毎回初めて見るかのように圧倒されて言葉につまる。
呼応と調和。
外の世界と私の世界、はちょっと大げさか。私の世界とここに暮らす家族の世界との呼応と調和がなされたのだと思う。道中聞きながらきたFMラジオの脆弱な電波がつながったように。
「おかえりー寒い寒い」と出てきた母に「ただいまー寒いねー」と返事をした。
抽象化っておもしろいとわりと思っている。
なにがおもしろいのかも、どこがおもしろいのかも説明はできない。ただなんとなく抽象化という単語に反応してしまう。最大公約数なのかな、最小公倍数なのかな、とか。
だから佐々井が意味を切り落としてエッセンスだけと言ったことにいいねと思った。佐々井ともっと話したかった。