N|道尾秀介
眉間にしわを寄せながら、読んでいる本は逆さま。
なんてシュールな姿。
『読む順番で、世界が変わる』
読む順番が自由とは重圧でしかない。
選択を誤ったらせっかくの物語が台無しになるかもしれない。
うんうんうなって最初の章を決める。
そしてまた、うんうんうなって次の章を決める。
これは神の遊びか。
すべて読み終えて言えること、それは、
私が選んだ順番こそが最高だ!
私の究極の順番。
笑わない少女の死
↓
飛べない雄蜂の嘘
↓
名のない毒液と花
↓
眠らない刑事と犬
↓
消えない硝子の星
↓
落ちない魔球と鳥
最高だとはいいつつも、おそるおそる、順番を変えて二周目を試みる。
やっぱり神の遊び。
『消えない硝子の星』を読みながら、中原中也の詩を思い出す。
誰かの服からちぎれ落ちたボタン。
手にしたボタンを捨てるに忍びなく、そっと袂にいれる。
この詩が発表されたのは、中也が息子を亡くしたあとだという。
月夜の浜辺に落ちている小さなカケラに、誰もが命を重ねてしまう。