オザケンのエッセイが書かれた帯が読みたくて。
全編手紙のやりとりのお話。
氷ママ子と山トビ夫の小粋な関係がよい。ヤキが回ったとか幻滅したとか、お互い「らしくない」と思ったら遠慮なしに言い合えるのは信頼の裏返し。
マナーもエチケットもない若造へのかっこいい返し。
かと思えば。
一晩考えて心情が変わった様は悪女とは言いきれないかわいらしさでよい。
丸トラ一の存在がなんとも愉快だ。大人二人が彼にはなぜか本音を吐露し、よくわからない立ち回りで結果的に全方位丸くおさまる。報酬ありき。
最初の登場から考えたら、皆から感謝されることになるとはとうてい思えない。本人は食欲とテレビ欲だけの人間なのに。
おそらく本作のテーマはこれ。
読者からの自分本意な手紙によほど辟易したもよう。時代を超えて現代のSNSにも通じるマナーである。
太宰治『恥』のあの子に教えて暴走を止めてあげたいとちょっと思った。
それにしても三島由紀夫の登場人物はひょうきんな名前が多い。今作もなかなかだが、私のお気に入りは『命売ります』の羽仁男。