イニシエーション・ラブ|乾くるみ
※ネタバレなし。
※本編については何ひとつ語れません。
積ん読の中からたまたま選んだ本書。
さて、なんでコレ買ったんだっけ。
あらすじを読んでもピンとこない。
恋愛小説か、困ったな、最後まで読めるかな。
でも、読みたい本リストにメモして買ったものだから、過去の私が読みたいと思ったのはまちがいない。
あまり気乗りしない感じでページをひらいた。
読み終わった私は、最後のページを凝視したまま時が止まる。
やがて、頭の中でパタ、パタ、パタパタパタパタと情報の断片が繋がりはじめて。
脳みそのシワがぶわっと開いた。
読み終わってから全てを理解する、強烈な体験。
衝撃度やトリックの巧みさなら、もっと優れた小説はあるかもしれない。
しかし、この脳みその感覚は、これまで味わったことがなかった。
恋愛小説だと最後まで疑っていなかったせいでもあるが、おかげでもある。
とはいえ、作品内にはいっさい説明は書かれていないため疑問だらけ。
考察を読み漁り、時系列に並べ直したものをながめ、やっと把握する。
進撃の巨人もそうだったが、考察を漁ることがおもしろかった証だと思う。
そして思い出す。
一時期このジャンルにハマって、検索に引っかかった作品を片っ端から買い込んだのだった。
次々に読んでいったのだが、タイトルのラブストーリー風味から、なんとなく後回しになって記憶が薄れていったのだろう。
おかげで先入観なしのまっさらな気持ちで最大級の衝撃を受けることになった。
又吉は、気持ちや場所など、コンディションを最大限にあげてから本を読むそうだ。
どこでどう買うかからはじまって、どう読むか。
そんな向き合い方をしているとどこかで話していて、いかにおもしろく読めるかどうかは自分の責任だと、ずっと心に留めている。
忘れたころに読むというのも、これ以上ないベストなコンディションだったのだ。
実際には2012年に読んだのだが、こんなふうにいまだにその衝撃が忘れられないのだから。