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【溺れる君】朝ごはん

一番最初

 「さっ、冷めないうちに召し上がれ」

ようちゃんの手のさきを見て、ごはんがのぼくのものだとやっとリカイした。

しろいつぶが立っていて、つやつやと光るごはん

ミドリの平べったいものとしろい四角いものがはだいろのシルから顔を出しているおみそしる

ほそながいお皿に三角の形のキリミが2つ

クンクンすると、ほかほかのゆげとみそとバターの香りがしたんだ。

「陽太があなたのために作ったのよ」

ぼくのためになんて、うれしい。

それにさっき、はじめてときいたから、なみだがでそうになる。

「いただきます」

はしを左手で持っただけでバカにされていたのに、そのふんいきさえない。

まずはくろいおわんを持ってビクビクしながら口もとへはこぶ。

ずずず

あまくてあたたかいシルの中にするりと平べったいものがすべりこんでくる。

のみこむととてもおいしい味が平べったいものから感じたから、目を大きくあけた。

「わかめ、好きなのね。とうふはどう?」

ぼくはカカのことばでミドリで平べったいものがわかめ、白くて四角いのがとうふだってはじめてしった。

次にわかめがついたとうふをつかみ、口へ入れる

はふはふ

みそのすっぱさがとうふにしみていたから、すぐにごはんをガツガツと口へつめこむ。


 「愛情込めて焼いたいちぐし食べてくれないの?」

ふわりとうしろからだきしめられ、耳もとでいじけたようにつぶやくようちゃんにからだがフルッとなる。

「いち、ぐ……し?」

この魚の名前なのかとおもって、くりかえしてみる。

「鮭の一番いい部位っていうのを"いちぐし"とここでは言うんだ。日本では食べにくいから嫌煙されることが多いんだけどね」

ぼくはほねをクロウしながらとり、こまかくしたミを口に入れる。

ほろほろ

バターの甘さとサケのおいしさがとけていく。

味がなくなるまえにごはんをまたガツガツたべて、おみそしるをのむ。

ぼくがあこがれていたごはんに、やっとであえたんだ。

そして、ぼくにいちぐしを食べさせたリユウもわかった気がした。

"君は捨てられたけど、俺らには一番大切な人だよ"

ねぇ、そうでしょ?
 

 「美味しい?」

うれしそうな声で言うから、わかってるくせにとおもうぼく。

「おいしいよ」

でも、ちゃんとことばにしてつたえたいんだ。

「良かった♪」

ふふっと笑って、より強くだきしめてくれるようちゃん。

「ようこそ、朝日家へ」

ぼくはほんとうにこの家のこども、弟になれた気がした。

 こんどはなぜかぼくのあたまにようちゃんのアゴがつきささる。

「食べ終わったら、この街に合う髪型に変えようね」

なんなら俺と同じピンクにしようよとあまく言うようちゃんがやさしく笑っているのがブルブルでつたわってくるんだ。

 ぼくはながい髪をみじかくしたいってずっとおもっていた。

でも、もしメダツような色に変わっても、いいなとおもえた。

続き

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