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*自宅であま〜い味醂を仕込みたい! 悪戦苦闘三種類の味醂仕込み!
甘い味醂に仕上げるために、これまで何度も味醂を仕込んできた。
始めに仕込んだ味醂は、
蒸したもち米に、米糀を混ぜて保存瓶に入れ、
そこに米焼酎を注ぎ入れ、1年寝かせる、というもの。
これはとても簡単で、誰でもいつでも仕込むことができる方法で、
失敗もなく、それなりの味醂ができた。
しかし、ちょっと甘さが足りないな、と感じていたので、
お酒が好きな友人に話してみたところ、
味醂というのはもともと、室町時代に女性が飲んでいた甘いお酒で、
つまりは甘く仕込んだドブロクだったんだ、と教えてくれた。
ドブロクとは、蒸したうるち米と、米糀を発酵させて作るお酒の事で、
この蒸米をもち米にして作ると甘くなるというのだ。
なるほど、そんな原理だったのか、と仕込んでみたが、
この甘いドブロクが美味しすぎて、調味料にする前に全部飲んでしまった(;'∀')
それに、発酵食品であるドブロクでは、発酵が進むにつれ甘さがなくなってしまう。
これでは調味料にならないので、他に方法はないか、と考えていたら、
今度は九重味醂の販売をしていたという知人が現れた。
彼いわく、
米と米糀を甘く糖化させてから、米焼酎に仕込むんだ、と。
なるほど!
そして、米焼酎の度数は高い方がいい。
最終的にアルコール度数を14%ほどに仕上げたいが、
甘酒と混ぜることで、アルコール度数は下がるので、米焼酎の度数が高いほど、甘酒をたくさん入れることができる。
なるほど!
そして、私の発酵バイブルでもある、中島春紫著「発酵の化学」には、
味醂用に使う米糀はうるち米ではなく、もち米で作る方がいいと書いてある。
まだもち米で米糀を仕込んだことはないので、そのうち実験してみる予定であるが、少しづつ味醂が見えてきた。
ぼちぼちであるが進化してきた、そしてこれからもまだまだ進化途中である味醂仕込み。意外や奥が深かった。
さらに甘い味醂にするために、これからも精進予定である。
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簡単味醂
材料・もち米900g 米糀400g
米焼酎25度1800ml
①もち米を前日から浸水させておき、水切りしたものを蒸す。
中に火が通るまで。30分~様子をみよう。
②蒸したもち米を、飯台に広げ冷ます。
手で触れるほどに冷ましたら、米糀と合わせよく混ぜる。
③保存瓶に合わせたものを投入し、米焼酎を注ぎ、よく混ぜておく。
Pointしばらく保存していると、米が焼酎を吸って液体から米が出てくるが、ここで心配になって焼酎を足したりしないこと。またしばらく置いておくと、米が分解されはじめ、沈んでくる。
④そのまま1年ほど寝かせる。糖化とメイラード反応が進んだ味醂は琥珀色に変化してくる。
⑤晒で絞る。
液体は数日置いてオリを沈める。
上澄みを容器に移し替える。オリの入っているものは先に使うこと。
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味醂の醸造は発酵ではなく、酵素による糖化であり、米焼酎のアルコール度数が高いため、乳酸菌も酵母も働かない。
もちろん、仕込んだ時点で麹菌も死滅する。
糖化、というのは米あめ作りでも説明の通り、糀菌が出した糖化酵素により、米のでんぷんを糖に分解する働きである。
なので、醸造中に発酵したり腐敗したりすることはない。
完成までこのまま放置するのみである。
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甘酒味醂
甘酒味醂は仕込む前にもち米を糖化させておく方法で、
分量は記載するが確定はしておらず、
しかも使用する焼酎のアルコール度数によっては甘酒の量を増やすこともできる。
なんともアバウトな味醂仕込みであるが、こちらもよほどでない限り失敗はないと思うので、手軽に仕込んでいただきたい。
材料・もち米3合 麹200g 米焼酎25度
①もち米3合を水4合ほどでおかゆを作る。
②おかゆを60℃以下に冷ましてから、米糀を投入しよく混ぜる。
③50~60度で12時間以上保温し甘酒にする。
④保存瓶に出来た甘酒を投入し、米焼酎を甘酒の倍量以上入れる。
米焼酎のアルコール度数により、加減する。
⑤以後は簡単味醂と同じ要領でよい。
市販の米焼酎は25度~40度程までと種類があり、
度数が高くなるほどお値段も高くなる。
味醂にどこまでお金をかけるか・・と悩ましいところではあるが、
もし、度数の高い米焼酎を使えるのなら、甘酒の量をもっと増やすことができる。
出来上がりのアルコール度数が14度程に出来ればいいからだ。
甘酒の量が多ければ、甘い味醂ができるだろう。
甘酒絞り粕味醂
米あめ作りで絞った甘酒の絞り粕を使用して仕込む味醂。
甘酒を作ったら、絞った汁は米あめに、絞り粕は味醂に変化してくれる。
絞った粕とはいえ、甘酒は甘酒。十分に甘く美味しいものなので
甘酒を作ったら、米あめと味醂を同時に仕込んでしまおう。
材料・甘酒の絞り粕 米焼酎
①米あめ作りを参照に甘酒を絞る。
②絞った絞り粕を保存瓶に入れ、米焼酎を注ぐ。
米焼酎のアルコール度数が25度なら、絞り粕の同量以上入れること。
③以後は他の味醂仕込み同様に。
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熟成過程では糖化酵素による糖化と共に、
糖とアミノ酸によるメイラード反応が進む。
メイラード反応とは、玉ねぎを炒めたり、お肉を焼いたりしたときに、
美味しそうに色づいていく、あの反応と同じで、
食品に含まれる糖分とアミノ酸に熱が加わったり、長期保存されることにより、茶色く変色し、香ばしい香りが発生し、味にもコクが生まれる。
味噌や醤油も同じ原理で、仕込ん始めは白っぽかったものが、だんだんと褐色に変化していき、美味しくなるのだ。
さらに嬉しいことにこの褐色色素には、抗酸化作用と活性酸素除去作用が含まれている。
その作用は、色が濃いほど強くなる。
時間をかけてゆっくり熟成し、色が濃くなった調味料はただの調味料ではなく、健康食品もしくは薬に変化しているのだ。
古い調味料は薬として大事に保管しておこう。
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