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はじめて小走りした夜のこと

小走りした。タタタタってエレベーターの奥からわたしに向かって、タタタタって。
あ、走った!ってなって夫は最初気づいていなかったから、
え!あ!あれ?走ったね!(にこっ)
っとなった。夜の19:30のこと。

その日は夫となにか小さないさかいがあって、私はカフェにて1人時間を過ごして心を落ち着かせていたんだけど、夫も少しトーンがやさしくなり、珍しく夜ご飯は歩いてすぐの焼き鳥屋さんに行くことにした。

福岡では焼き鳥屋さんでも小さなこどもを連れた家族がいるのはごくふつうの風景で、よく見かける。座敷の私たちの隣の席も子ども連れで食事をしていた。
ちょっとした串を食べて、こどももうずらとか食べられるものをしっかり食べて。

帰り道、5分もかからない道のりを右手にパパ、左手にママと手を繋いで歩く。パパを見たりママを見たりして、ぶらーんとしたりして雨上がりの夜道を3人で歩く。
「きょうはおそいおひるねだったからとくべつなんだよ」
って、普段はこんな夜に歩くことはないから特別な夜だよって言い聞かせながら、親子3人でウキウキと歩いて、まるで学生時代に飲んだ帰りのように(飲んでないけど!)連れ立って歩いていた。
私にとっても産後に夜出歩くことなんて、一年に一回や二回の特別なこと!
濡れたアスファルトに街灯が反射して、なんかきれいだなって。

マンションのホールに入るとお約束のようにポストをあけて中をチェックして、エレベーターの中からおいでーって声かけると、テトテトやってくる。
にこって笑顔で1番奥に行った。
と思ったら、くるっと振り返りかけだした。

このウキウキの夜をしめくくるにふさわしいような、ウキウキが溢れ出てくるような小走りに、わぁぁ、走ったぁ、って嬉しさが込み上げてきた。

今日はなんてことない一日で、
でも母としてはモヤモヤしていた日だったから
小さなご褒美のような宝物だった。

毎日、育児や家事をしていてこんなに大変なんだからきっと私も成長してるはず!モヤモヤしてるんだからしてないとおかしいぐらいの気持ちで、この生産性はないけど忙しい日々を慰めていたんだけど。

子の成長はしんどさも大変さも、苦労も努力も感じさせない軽やかなウキウキの延長線にあった。
楽しくて、わくわくして、うきうきの先にある成長を目の当たりにして、わたしの心からも何かがポロッと落ちたみたい。

いつの間にか成長は困難や苦労の代償として得るものと考えていたけれど、私だってわくわくやウキウキの中で気づかぬうちに成長はをしているのかもしれない。そう思いたい。
そういう時間を少しずつ持てるようにしたいと思う。



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