赤メガネの会

2009年にスタートし、読んだ本についての感想や意見を交わし合う本をこよなく愛する人が集まるBook Club (読書会)です。毎回さまざまな議論を交わし合い、お互いの読書欲や価値観を刺激し合っています。

赤メガネの会

2009年にスタートし、読んだ本についての感想や意見を交わし合う本をこよなく愛する人が集まるBook Club (読書会)です。毎回さまざまな議論を交わし合い、お互いの読書欲や価値観を刺激し合っています。

最近の記事

【第160回 開催レポート】「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」レフ・トルストイ

開催日:2019年10月18日 課題図書:「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」レフ・トルストイ 今回の課題図書は、ドストエフスキー、ツルゲーネフと並んで、19世紀のロシア文学を代表する文豪レフ・トルストイの作品です。 お久しぶりのロシア文学! トルストイというと、『アンナ・カレーニナ』『戦争と平和』『復活』などの長編もので知られている大作家。これまでなかなかメンバーの触手が伸びなかったのですが、中身はディープでも、気負いなく読める中編&短編作品もありました! この

    • 【第159回 開催レポート】「夕べの雲」庄野潤三

      開催日:2019年9月20日 課題図書:「夕べの雲」庄野潤三 いきなりだが、別の本の話をする。ホモ・サピエンスに関する本だ。「ネアンデルタール人の謎」によると、彼らホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスは現生人類の親戚筋だが、僕らの直接の祖先ではないらしい。脳の容積(実は彼らの方が大きい)、四肢の構造など、物理的にはおおかた現生人類と変わらない。ただ、命運を分けた違いがある。それは発声機能が著しく乏しい事だ。つまり彼らはコミュニケーションに限界があり、それゆえ徐々に現生人

      • 【第158回 開催レポート】「崩れゆく絆」チヌア・アチェベ

        開催日:2019年8月30日 課題図書:「崩れゆく絆」チヌア・アチェベ 暑いときには、暑い国の物語を、それもあまり、馴染みのない国の文学を! 今回の作品は、「アフリカ文学の父」といわれるナイジェリア出身のイボ人作家、アチェべの「崩れゆく絆」です。 西アフリカのどこかにある、「ウムオフィア村」。 そこには、古くから伝わる言い伝えや、呪い、祈りがあり、村のおきてに沿って人々が暮らしを営んでいました。主人公は、一代で名声と財産を築いた男、オコンクゥオ。このオコンクゥオが家長と

        • 【第157回 開催レポート】「野火」大岡昇平

          開催日:2019年8月9日 課題図書:「野火」大岡昇平 「野火」、戦争小説といえば必ず名前が上がる本である。 こういうものを避けていてはいけない、そんな想いがずっとあった。 一人で読むのは億劫だったともいえる。 主人公はレイテ島にて肺を病み、部隊から芋六本だけもらい、 野戦病院に行けと厄介払いされるところから始まる。 死を宣告されに等しい彼は、病と、飢えと、敵からの攻撃に怯えながらも 美しい自然に囲まれたフィリピンのジャングルの中をただひたすら彷徨う。 そしてそこに何か

          【第156回 開催レポート】「ソラリス」スタニスワフ・レム

          開催日:2019年7月19日 課題図書:「ソラリス」スタニスワフ・レム まず最初に、ソラリスの文庫の表紙のデザインが美しい。惑星ソラリスの地表に広がる静かな海と空。この惑星を舞台にどんな物語が待っているのか期待が膨らむ。 ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムが1961年に発表したこの作品は、過去にタルコフスキー監督、ソダーバーグ監督によって2度映画化され、コアなファンを持つSF作品として愛されている。原作を読んだことはなくとも「ソラリス」という名をどこかで耳にしたことが

          【第156回 開催レポート】「ソラリス」スタニスワフ・レム

          【第155回 開催レポート】「王家の風日」宮城谷昌光

          開催日:2019年6月28日 課題図書:「王家の風日」宮城谷昌光 今回は中国のお話である。しかも、古代中国である。商(殷)という時代のお話である。 紀元前11世紀頃という気の遠くなるような昔のお話である。 古代ともなってくるともう歴史のお勉強である。 学生の時に歴史を学んでいた人たちには、懐かしい、もしくは、そんなん憶えちゃぁいないって感じだろうか。 とはいいつつも、この日本には歴史好きって人はかなり多いと思う。 個人調べで確証はないが。 ただ、過去には歴史といえば、男たち

          【第155回 開催レポート】「王家の風日」宮城谷昌光

          【第154回 開催レポート】「菜食主義者」ハン・ガン

          開催日:2019年6月7日 課題図書:「菜食主義者」ハン・ガン 2005年に韓国最高峰の文学賞、李箱(イ・サン)文学賞を受賞。 その後、2016年にイギリスの文学賞で、世界的にも権威のある文学賞の一つであるブッカー国際賞も受賞したハン・ガンの「菜食主義者」が今回の課題図書。 ある夢をみたことをきっかけに、突然、肉を口にしない菜食主義になるヨンへ。 家族が心配するも誰の意見も聞き入れないヨンへは次第にやせ細り、おかしな言動を繰り返す。 そんな突如として壊れてしまった妻に戸惑

          【第154回 開催レポート】「菜食主義者」ハン・ガン

          【第153回 開催レポート】「美しい星」三島由紀夫

          開催日:2019年5月17日 課題図書:「美しい星」三島由紀夫 三島由紀夫、1962年(昭和37年)の小説。  飯能市に住む平凡な4人家族・大杉家のメンバーは、ある日突然、自分たちが宇宙人であると次々に自覚する。一家の父・重一郎は、東西冷戦による核開発競争からくる地球人類の危機を憂う。重一郎は家族の協力を得て、人類を救うための講演会を開き、徐々に名声を上げていく。  一方、仙台に住む羽黒助教授とその取り巻きも自分たちが宇宙人であるという自覚を持っていた。彼らは、地球人類を滅

          【第153回 開催レポート】「美しい星」三島由紀夫

          【第152回 開催レポート】「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」ジュノ・ディアス

          開催日:2019年4月26日 課題図書:「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」ジュノ・ディアス  「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」は、ドミニカ共和国出身の米国人作家、ジュノ・ディアスの作品。ピューリッツァ賞と全米批評家協会賞をダブルで受賞し、ミリオンセラーとなった長編小説だ。原作名は「The Brief Wondrous Life of Oscar Wao」。Wondrousという言葉を直訳すると「奇跡の」とか「不思議な」といった意味になるが、主人公であるオスカー・ワオの

          【第152回 開催レポート】「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」ジュノ・ディアス

          【第151回 開催レポート】「獄門島」横溝正史

          開催日:2019年4月5日 課題図書:「獄門島」横溝正史 瀬戸内海に浮かぶ孤島、獄門島。切り立った崖のこの島の一部に、家々が寄り合って暮らす集落がある。天候不順、重い灰色の雲に覆われたこの島を牛耳るのは、本家と分家に分かれた鬼頭一族。その家の存続をめぐって、謎の殺人事件が3件続けて起きる。花子、雪枝、月代、見目麗しい三人の姉妹をだれが、どうやって殺したのか…。 この連続殺人が起きる直前、島にひょっこり現れたのが金田一耕助である。太平洋戦争から復員する船の中で死んだ、三姉妹

          【第151回 開催レポート】「獄門島」横溝正史

          【第150回 開催レポート】「情事の終り」グレアム・グリーン

          開催日:2019年3月16日 課題図書:「情事の終り」グレアム・グリーン  モーセの十戒のひとつである「汝、姦淫するなかれ」。キリスト教信者にとって、いえ古今東西の宗教に関わらず、如何なる理由があろうとも不倫は「許されざるもの」との認識でほぼ一致していると思います。あなたはその不倫についてどのようにお考えですか。  今回の課題図書はイギリスの小説家グレアム・グリーンの1951年発表の「情事の終り」。  グレアム・グリーンはメンバーの自由図書でも不思議と今まで取り上げることが

          【第150回 開催レポート】「情事の終り」グレアム・グリーン

          【第149回 開催レポート】「1R1分34秒」町屋良平/「ニムロッド」上田岳弘

          開催日:2019年2月22日 課題図書➀:「1R1分34秒」町屋良平   純文学が苦手な自分にとって芥川賞は鬼門だ。以前にも『異類婚姻譚』で痛い目に遭っている。もちろん、「文字」に「芸術」を紡ぎ出すポテンシャルがないと考えているわけじゃない。お絵描きがときに芸術へと昇華することがあるように、作文が芸術になってもなんら不思議はない。ただこれまで、なるほどこいつは紛う事なき芸術だ、と思えるものに出会ったことがないだけの話しである。そういう渇望感が、逆に僕の純文学作品への期待値を

          【第149回 開催レポート】「1R1分34秒」町屋良平/「ニムロッド」上田岳弘

          【第148回 開催レポート】「夜間飛行」サン=テグジュペリ

          開催日:2019年2月1日 課題図書:「夜間飛行」サン=テグジュペリ サン=テグジュペリは1900年にフランスのリヨンの伯爵の子として生まれ、作家であり、また郵便輸送のためにパイロットして欧州と南米間の飛行空路開拓に携わった操縦士でもあります。サン=テグジュペリの代表作である「星の王子さま」は、一度は耳にした方が多いと思います。個人的なことですが、曽祖父の名前がついている道がリヨンにあり、私の家がリヨンと深く関わりがあり、幼少期からこの街のことを耳にして育った私にはこの街の

          【第148回 開催レポート】「夜間飛行」サン=テグジュペリ

          【第147回 開催レポート】「夏の朝の成層圏」池澤夏樹

          開催日:2019年1月11日 課題図書:「夏の朝の成層圏」池澤夏樹 2019年の今年、9年目を迎えた赤メガネの会、新年最初の課題図書は、池澤夏樹さんのデビュー作「夏の朝の成層圏」。ちなみに僕も読書会に参加してから初めての開催レポートを書くこととなり、デビューつながりな感じである。 こんなに澄んだ題名をよくつけたなと思う。「夏」の「朝」の「成層圏」。透き通っていて、静かな言葉が表紙の深い青と一緒になって、読む前からもう爽やかな気持ちになっている。 本を開くと、「ぼく」は空

          【第147回 開催レポート】「夏の朝の成層圏」池澤夏樹

          【番外編】第6回合宿 in 沼津

          合宿日:2018年10月27日~28日 課題図書:「和解」志賀直哉  気のおけない仲間と夜を共に過ごすのは、少なからず心惹かれるコトだと思う。ことさら合宿なんていった日にゃぁ、部活に励んだ学生時代が呼び覚まされて、ほろ苦かったり、甘酸っぱかったり、はたまた炎天下に走らされた記憶で吐きそうになったりするよね。って、そりゃないか・・。 さておき”体育会系読書会”をもって自認する赤メガネの会の合宿も今回で6回を数える。合宿地に選ばれたのは、静岡県は沼津市の泊まれる公園「INN T

          【番外編】第6回合宿 in 沼津

          【第146回 開催レポート】「新編 日本の面影」ラフカディオ・ハーン

          開催日:2018年12月14日 課題図書:「新編 日本の面影」ラフカディオ・ハーン 2018年最後の赤メガネの会。課題図書はラフカディオ・ハーンの「新編 日本の面影」です。 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、今回の選書者にとっては故郷・島根ゆかりの作家。 これまでも自由図書でハーンに関連する本を紹介してきましたが、今回はメンバーの皆さんがどんな読後感を抱くのか、ちょっと楽しみでもありました。 雪女や耳なし芳一などの『怪談』でも知られているハーンは、アイルランド人の父とギ

          【第146回 開催レポート】「新編 日本の面影」ラフカディオ・ハーン