瓶詰とぼく(アルミキャップのガラスボトル)
先日、ガラス瓶を買った。親指の第一関節と同じ高さで、太さもそれくらい。80円(+税)でお買い得だったので、3コ買った。(ちいさなものを揃えるときは、必ず3コ。)並んでいるだけで、充分かわいい。
一応、目的はあった。この前遠出したとき(車で30分)路上で鈴を拾った。ので、小瓶を発見した瞬間、コレにしまっておこうと思った。ひしゃげた鈴の瓶詰め。パーカーのポケットに入れておいて、歩く度ちゃりちゃり音が鳴るのを楽しみたい。
入りませんでした。ぎりぎり入るかと思ったんだけど。ぎりぎりでも何でもなく入りませんでした。はい。
しょんぼりするぼく。とりあえず鈴だけ鳴らす。振る度、土やら砂やら出てくる。机の上をお片付け。拾ったその日に綺麗にしたつもりだったんだけど。無限に出てくる。それはさておき。
小瓶に入れるもの。入れたいものといえば、水だ。なので、早速水道水を汲んでくる。
ふしぎだ。ただの水なのに、なにかぼくの知らない液体に見える。薬。雨粒。野草の朝露。いいえ、水道水です。それでも、容れ物が違うだけで、普段ごくごく飲んでいるものが、こんなにもいとおしい。
ついでに、ぱちゃぱちゃと振ってみる。ぱちゃぱちゃと……。あんまり音がしない。瓶の半分以上は注いだからかな。音も楽しみたいぼくは、中身を少し減らしてみる。
わかりにくいけど、底になんとなく溜まっている程度に減らした。改めて、振ってみる。音はあんまり変わらない。完全密閉。まあ、いいか。水は、見ているだけで癒されるよ。
仮に何も入っていなくても。ぼくの宝物が、また増えた。誰に見せなくてもいい。ぼくの手の中にあればいい。宝物はきっと、そういうものだ。
今朝は、コーヒーを淹れた。ので、豆を挽く前に、一粒瓶に入れてみた。
標本みたいになった。振ってみると、カラカラ鈍い音が鳴る。いかにも瓶詰だけど、豆がもったいないので、すぐに出してあげた。
不在の瓶には、豆の芳ばしい匂いが残った。ぼくは、すぐに蓋をした。目には見えない、匂いの標本。たぶん、次に蓋を開けたときには、もうなんの匂いもしないだろう。でも、それはそれでいい。
今度は、なにを詰めようかしらん。それとも、空を詰めたままでいいかしらん。机の上には、毎日瓶が整列して、ぼくを見上げている。