ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも 上田 三四二(みよじ)「涌井(わくい)」
まだこの歌に追いついていない頭のわたしがおぼつかない言葉をつけても 追いつけないのだろう。
ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも
じーっと見て
きれいだなあと
ぼーっと思えば いいのだと思う。
音が次の音へと流れていくさま そして意味を連らならせ ふくらませながら
「谷にゆくかも」に すーっとおさまっていくまでの
ゆったりした一首の旅。
きれいであればあるぶん さびしい旅でもあるだろう。
ひとところに とどまれない
かずかぎりない ちる花。
その無音の音楽。
(つづく)