今橋愛

歌集「O脚の膝」「星か花を」「としごのおやこ」。 共著「トリビュート百人一首」他。 歌人の花山周子さんと百人一首の翻案をしています。note「主婦と兼業」→https://note.com/brainy_impala376

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「主婦と兼業」について

2017年くらいから  歌人で装丁家(ブックデザイナー)の花山周子さんと 百人一首の翻案をしていたのを、 この2月から再スタートします。 活動名は「主婦と兼業」です。どうぞよろしくお願いします。 https://note.com/brainy_impala376  

    • 金もくせいを食べたの金もくせいも食べたのだから歯の痛みにはキス(山田詠美)

      金もくせいと思ったのも もうだいぶまえで本日となって は もう季節はずれなのだけれど。 すきな言葉について書きます。 金もくせいを食べたの 金もくせいも食べたの だから歯の痛みにはキス 休符をおぎなうと 短歌のようでもあるけれど、 これは小説「放課後の音符(キーノート)」(山田詠美著) に入っている短編「Red Zone」からの引用。 高校生の男の子と、うんと年上の女の人の恋のお話。 ふたりは こんな会話をする。 金もくせいの匂いがする 甘くて歯が痛くなりそう 秋に

      • 2024年~

        今年発表のものを書きだしてみます。 『ねむらない樹』vol11.に書評を寄せました。 ねむらない樹 vol.11|短歌ムック ねむらない樹|書籍|書肆侃侃房 (kankanbou.com) 菊竹胡乃美さんの 第一歌集『心は胸のふくらみの中』について 『胸のふくらみの中に咲く花』という題の文章を書きました。 とても純粋な歌集です。 菊竹胡乃美『心は胸のふくらみの中』全国の書店員さんから反響の声ぞくぞく!|書肆侃侃房 web侃づめ (note.com)  角川『短歌』

        • 年寄りが泣いている/子供たちがおびえてる/信じられるものが ひとつふたつ/僕らをとり残しても「虹が出たなら」宮沢和史 

          メロディのついた「虹の歌」を思いだしました。 矢野顕子。 「虹が出たなら」  作詞 宮沢和史 僕は何もあげられないから 一日中 君の顔 きれいにみがいてあげる ある朝 君が死んで一人ぼっちになっても 花のベッドですりきれるまで 毎日みがいてあげる 年寄りが泣いている 子供たちがおびえてる 信じられるものが ひとつふたつ 僕らをとり残しても 虹がでたなら 君の家まで 七色のままで とどけよう 年寄りが泣いている 子供たちがおびえてる 信じられるものが ひとつふたつ

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          まいにち/虹のようなものが/出ないかな/空に。石垣りん「虹」

          お片づけで平岡あみさまについて書いていた文章が 行方不明。出てきたらまた掲載します。 紙類の束の中から出てきた詩をひとつ。 石垣りんの虹という詩です。 虹       石垣 りん 虹が出ると みんなおしえたがるよ とても大きくて とても美しくて すぐに消えてしまうから ためておけないから 虹をとりこにして ひとつ金もうけしようなんて だれも考えないから 知らない人にまで 大急ぎで教えたがるよ 虹だ! 虹が出てるよ にんげんて そういうものなんだ 虹が出ないかな まいにち

          まいにち/虹のようなものが/出ないかな/空に。石垣りん「虹」

          行ってきます帰りの時間はわからないわたしだって何かあるんだ 平岡あみ

          歌集『ともだちは実はひとりだけなんです』 短歌・平岡あみ 解説・穂村弘 絵・宇野亜喜良  2011 ビリケン出版  12歳から16歳までの歌。 けれども、いわゆる「子どもの歌」ではない。 母と暮らし、父とは別々に暮らしているという環境からか、 この作者の思索は俗に転ばず、深い。 壁に穴あのときわたしが開けたのは捨て子扱いされたからだ 真夜中に母がガラスを割りましたけんか相手はわたしでした 壁に穴を開けるのは 本来いけないことだ。 けれども、壁の穴と 捨て子扱いされるこ

          行ってきます帰りの時間はわからないわたしだって何かあるんだ 平岡あみ

          子の為に靴下のやれつくろはむ暇ある日の嬉しきこゝろ 柳原白蓮『流轉』

          白蓮、43才の時に刊行した歌集『流轉』より。 宮崎龍介と一緒になり、二人の子どもにも恵まれ、幸福な頃の歌。 「やれ」とは破れのこと。靴下の破れ。 子どもの世話や雑事に追われ あれをせなあかん。これをせなあかん。と ばたばたしているとき頭の中もそれらでいっぱいで こころは窮屈になっている。けれど、そこに置いて気になってた子どもの破れた靴下のつくろいをやろう。そんな暇があるなあと思うとき こころの中にも自由な空間がうまれて、あー嬉しいなあ。と思う わたしのこころです。 そんな

          子の為に靴下のやれつくろはむ暇ある日の嬉しきこゝろ 柳原白蓮『流轉』

          書いたものと今年の目標 

          ・斎藤茂吉記念歌集 第四十九集に一首寄せています。 ・今出ています角川『短歌』に七首寄せています。『О脚の膝』というタイトルです。 ・2009年くらいから「未来短歌会」に入会していますが、この度選歌欄を移動しました。大阪の道浦母都子さんの選歌欄でお世話になっています。 ・今年の目標は大量の紙類を整理して歌集を出したいです。書き終わらない300枚くらいの小説も書き終えて発表したいです。  どうぞよろしくお願いします。

          書いたものと今年の目標 

          子の為に靴下のやれつくろはむ暇ある日の嬉しきこゝろ 柳原白蓮『流轉』

          この人は、時おり ぞっとするほど寂しい顔をしている。 ほっておけなくなる。そんな顔。 生まれてすぐに母から離され1才で里子に出される。 3才の時に母は病死。9才で北小路(きたこうじ)家の養女に。 父もこの年に亡くなっている。15才で結婚するも20才で離婚。 そして福岡の伊藤伝右衛門(いとうでんえもん)と見合い結婚をしたのは26才。 宮崎龍介と出会い文通が始まる。 白蓮、35才。 「魂をしつかり抱いてゝ」と言いながら 「覚悟していらつしやいまし」「いやならいやと 早く仰し

          子の為に靴下のやれつくろはむ暇ある日の嬉しきこゝろ 柳原白蓮『流轉』

          「なにか嬉しいことを言つて」と朝通話君の声こそ最も嬉しきに         (高島裕『雨を聴く』ながらみ書房2003)

          恋の歌のことを相聞歌(そうもんか)という。この歌集を読んで、相聞歌っていう言葉を思いだした。 「雨を聴く」は 一年を通して恋のことだけを歌にしている。 深さと潔さのある歌集で 似たような歌集を わたしは見たことがない。 「なにか嬉しいことを言つて」と朝通話君の声こそ最も嬉しきに 嬉しいことを。と女のひとに言われて                今、話している あなたの声こそが いちばん うれしいんだよ と思う作者。骨抜きにされているさまが、とてもいいなと思う。 何とかこ

          「なにか嬉しいことを言つて」と朝通話君の声こそ最も嬉しきに         (高島裕『雨を聴く』ながらみ書房2003)

          詩「私は隠れ蓑を着ていた」(阪田さかえ)

          紙の束があふれて片づけています。過去に詩のアンソロジーのこれはと いうのをコピーしていたものが出てきたけど、どの詩もなぜか一切ぴんと来ず、もはやコピーした時とは別人になっているのだと気がつきました。 おそらく、そのなかに、この私は隠れ蓑を着ていた(阪田さかえ)もあったのだと思うのだけど、この詩だけ手書きで書きつけてあった。 なにを思って手書きをしたのかはもはや不明だけど、この詩のみが良かったので引用してみます。 この阪田さかえも、原色小倉百人一首(文英堂)の付属CD(最近の

          詩「私は隠れ蓑を着ていた」(阪田さかえ)

          書いたものと書かれないもの

          ぴゃっぴゃてきとうにまとめようとしたが、上田三四二の事を書いた評論を買いこみ。そこから文庫の上田三四二歌集、そして西行、上田三四二の同時代の人々の集など貸りてきたりして 引用箇所、おもしろい歌、あふれる感情で脳内の収集がつかないので上田三四二その2は、また今度にします。 評論って、対象者への「誠実な」探偵、法律家、医療、相談員、そして何より恋の手紙と思いつつ。死後何年経ったから、もういいだろうとそっと書き出す、その関係者各位に対する配慮の塩梅、追いつめぶり、これが恋でなくて

          書いたものと書かれないもの

          ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも 上田 三四二(みよじ)「涌井(わくい)」

          まだこの歌に追いついていない頭のわたしがおぼつかない言葉をつけても 追いつけないのだろう。 ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも じーっと見て きれいだなあと  ぼーっと思えば いいのだと思う。 音が次の音へと流れていくさま                    そして意味を連らならせ ふくらませながら 「谷にゆくかも」に すーっとおさまっていくまでの  ゆったりした一首の旅。 きれいであればあるぶん さびしい旅でもあるだろう。 ひとところに とどまれ

          ちる花はかずかぎりなしことごとく光をひきて谷にゆくかも 上田 三四二(みよじ)「涌井(わくい)」

          恋を数へてとしまどす(佐藤正午「恋を数えて」)

          「恋を数えて」という小説 だったと思う。 どんな話かはいっこも思いだせないのに、この部分だけが残っている。 恋を数へて としまどす年増─ 娘盛りを過ぎて少し年をとった婦人。近世には20歳前後をさしたが、現代では30〜40歳くらいをいうなど、年齢は時代によって若干前後する。 堀口大學の詩に、付けたした(?)言葉だか、そんなだったように思っている。ちなみに したを数へて/エンマどす は、佐藤春夫( 秋刀魚のひと )が作って付けたしたもので、佐藤正午は、その事も踏まえているの

          恋を数へてとしまどす(佐藤正午「恋を数えて」)

          投票所のえんぴつは不思議と書きやすし筆圧高くひと息に書く(橘夏生/大阪ジュリエット/青磁社/2016)

          一読、ああ、たしかに。と思った。 不思議と書きやすし  そうそうと思う。 筆圧高くひと息に書く これも  そうそうと思う。 「不思議と」が効いている。 「投票所」は学校であることが多かったのだけど、 いつもは生徒がいて先生がいて授業があって校庭では子ども跳んだり走ったりしている場所が、選挙の日だけ廊下に何か敷かれたりしていて。 そこをとことこ歩っていくと、お習字(筆)で書かれた投票所の文字。 年末神社にお参りに行くとき程ではないにしても、何か非日常がある。 ほんの少し

          投票所のえんぴつは不思議と書きやすし筆圧高くひと息に書く(橘夏生/大阪ジュリエット/青磁社/2016)

          黒のダウン白い帽子とロングブーツ車椅子乗る母女ボスのよう(阿部しずり/NHK介護百人一首2019)

          コートをクリーニングに持っていく季節。どたばた。どたばた。そのようなとき養命酒を飲むようにちびちび冬読もうと思っていたのにどたばたで手に取れなかった宮本輝「流転の海」第九部 最終巻「野の春」(新潮文庫)の真ん中より後のほうのところで松坂熊吾の妻、房江が「私のことを女ボスと呼んでるって、ほんま?」って聞いて社員食堂の人が「ふたりをこき使いながら、椅子に坐って煙草を吸うてる姿は、まさしくボスですよ」と答えたところで房江はん良かったなあとしみじみ思った。 房江はんの親戚かなんかのよ

          黒のダウン白い帽子とロングブーツ車椅子乗る母女ボスのよう(阿部しずり/NHK介護百人一首2019)