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声に出したい美しいビジネス用語
日頃仕事をしていると、横文字を必要以上に多用する人というのがしばしば観測されます。
「あ、さんしちゃん?キックオフミーティング用のドキュメントのフィックス版だけど、クライアントに事前に展開しておいてね。アサップで!」
字面だけ見るとルー大柴が喋ってんのか上司が喋ってんのか分からないですね。このへんを揶揄する風潮は、もうずいぶん前から方々で叫ばれているわけですけれども。まー横文字だって全然使えばいいと思うんです。場合によっちゃ日本語よりも伝えたいことの解像度が高いときもありますしね。ただ、中には無駄だなと思う横文字もあるわけです。アサップだのワザップだの、そういうのはここ10年くらいでよく見受けられるようになってきた言葉だと思います。それ以前は全然そういう言葉ナシでもおれたちやっていけてたじゃん!と20歳くらいの頃、久しぶりに会った地元の友達が酒浸りになっていたり、ヘビースモーカーになっていた時と同じ感情になるわけですよ。
横文字を使うことで端的に己が言いたいことを表現するという他にも、何か相手にイキり散らかしたいという思惑が見え隠れしている一方、おれもおれで横文字を使うことで、スムーズに業務を回せているような感覚になる、くせになりそうな瞬間もあるので、お酒やたばこの類と近いものがあるというのはある意味で真なのかもしれません。
ここまで世の中的に横文字を揶揄する風潮が蔓延しますと、同じイキリでもここはひとつ違うアプローチでイキって参りたいという気持ちになってきます。なるべく日本語を使おうと思っていますし、最近だとメールとかSlackとか、連絡手段も様々増えていますけれども、一周回っておれは矢文でやりとりしてますから。初めてやりとりするお相手ですと、うっかり相手を射抜いてしまうこともありますし、NTTの矢文課から毎月届くパケット代(死語!)ならぬ矢文代とかすごいことになってます。
それはともかくとして、日本語にも大和言葉をはじめとする素晴らしい言い回しやビジネス向きの表現がありますから、イキるならギラギラの英語力よりもさりげない国語力をアピールしたほうが教養があるように見えてかっこいいな、と思うわけです。また、ビジネス現場で小粋な表現を自然と使いこなしている人を見るたびに、何か羨望のまなざしを投げかけてしまいます。できるだけ美しい日本語を使いたい、また日本的なアプローチでもって仕事で付き合う人たちから一目置かれたいという欲が、ムクムクと湧いてくるわけですよね。そういうこともありつつ、日頃拙noteの記事をご覧いただければお分かりの通り、おれは人間性がちょっとアレなものですから、せめて言葉くらいは美しいものを選びたいと常々思っているわけです。なんだ人間性がちょっとアレって!ぶっとばすぞ!
油断するとつい横文字を多用したくなってしまうわけですが、断酒・禁煙を成功させるにはガムやコーヒー等、別の刺激をもたらすことでこれらへの依存から脱却するのがコツだと聞いたことがあります。そこで今回は、社会人生活の中で見聞きした、マネをする機会を常に伺うようなかっこいい、美しい日本語表現を10個ほど紹介したいと思います。
委細承知いたしました
メールなんかでゴチャゴチャとお願いをしたときに、仕事のできる人からこのフレーズが帰ってきたときの安心感ったらないですよね。「すべてを理解した」と同義ですのでね。すこしお堅い仕事の方なんかだと類義語で「仔細」なんて表現を使う方もいらっしゃいますけれども。おれは「仔細」を見たときに、一瞬脳を仔猫が横切ります。にゃ~ん。
無論
ちょっと助けてほしい時に同僚とか協力会社の方なんかから「無論協力させていただきます!」なんて返ってきたらすぐ好きになっちゃいますからおれみたいなモンは。日常生活だと磯野家くらいでしか耳にしないフレーズですが、時々仕事で耳にするとビビッときてしまいます。いいなあ。おれも使いたい。無論です!どうでしょう。かっこいい?
よろしゅうございますか?
池袋のジュンク堂なんかに行って本を買い求めますと、「カバーをおかけしてよろしゅうございますか?」と毎回店員さんが言ってくれます。このフレーズはジュンク堂の店員さんみんな使うものなんでしょうか。分かりませんが、一段階ていねいな印象を受けますよね。古風な女性のような雰囲気もしますが、電話口などで声をワンオクターブ低くしてさりげなく使ってみたい表現です。「お電話口の方の会社名とお名前をもう一度お伺いしてもよろしゅうございますか?」その感じで聞き逃しているのかよ。
荷が勝つ
ちょっとたいへんな仕事を抱えている人なんかに、「キャパオーバーなんで~」ではなく「ちょっと僕には荷が勝つので助けてください!」と言われたらやっぱり一皮脱がなくては!という気持ちになります。ちょっとくらい持つよ持つよ~~~ってなります。
ひとしぼり
これは字面で見るとあまりピンとこない表現ですが、以前強い雨の降るなか来社された方から、「ちょっと駅からひとしぼりやられましてね」と言われた時に知った言葉です。意味を調べたら強い雨に降られたというそのままの意味なのですが、ちょっと小粋な感じがします。これは常々使う機会を伺っている言葉です。雨の日がちょっといやじゃなくなります。言葉の魔法!
ひとかたならぬお力添え
プロジェクトがひと段落した翌日のメールなんかで関係先からこんなフレーズが届いたらちょっと浮足立ってしまいます。「お力添え」は「ご協力」よりも一段階ていねいな印象がしますし、「ひとかたならぬ」がそれに一層お力添え感を演出している!お力添え感とは?あまり多用すると「お前の"ひとかた"はどれだけハードルが低いんだよ」と思われかねないので、これはおれも最上級に感謝したいときに満を持して使っています。ひとかたがなんなのかはよく分かっていません。
心ならずも
以前これを使っている人に会った時、「残念ながら」や「あいにく」よりも自分の言葉で喋ってる感があっていいな、と思ったことがあります。心ならずも。いいですね。お誘いを断る時2~3回に一度くらいは使いたいですね。
公算が大きい
「確率が高い」とか「可能性が高い」よりも頭脳派な感じがしていいです。ちゃんと計算をしている感じがある。なんなら検算までしてますよね、この方。
芸は身を助ける
誰かにお金を払って作ってもらうほどでもないけど、あると嬉しいちょっとした制作物が緊急で発生した時、学生時代にちょろっとその道齧ってましたみたいな人に対応してもらった後にさらっと「芸は身を助けますね…」と言われたことがあって痺れた記憶があります。おれも芸を身につけて助かりたいと思い、カメラを始めようとしてやめたことがあります。身につけろよ。
言質をとる
ちょっと刑事用語感があっていいですよねこのフレーズ。文字にするなら漢字ではなくカタカナで書きたいです。「ゲンチとっといて!」みたいな。「サンズイの疑惑の件、証人からゲンチとっといて!」みたいな。かっこいい。おれもゲンチとりまくりたいです。
これで10個です。これらを見ると、おれの琴線に触れることばというのはていねい、かっこいい、美しいがごっちゃになっている感じがありますが、なんとなく、「深く読んで理解させるのではなくあくまで記号として直感的に意味が理解できて、でも少し心に残る」。そんな言葉が好きなのかもなと思いました
ただ、日本語の難しいところは行き過ぎると途端におじさん臭くなってしまうところにあります。「テレコ」とか「座組み」とかね。イキりも突き詰めていくと加齢臭がしてくるものなのかもしれません。そう考えると、横文字表現もいずれ臭ってくるのでしょうか。分かりませんが、いずれにしても言葉遣いは行動や思考、習慣にも表れるということで、少しでも美しい日本語を使うことで、少しでもましな人間になれたらいいななんて思っております。
斯様な形でございます。
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