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仮想読書会:「勝負師の条件」守屋 淳 著の(1)

***** 【 仮想読書会が初めての方へ 】 ******
6人のキャラクターとの仮想読書会 ~AIと創る新しい読書体験~
「仮想読書会の進め方」と「このnote」
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【 今回の仮想読書会の範囲 】
「勝負師の条件 同じ条件の中で、なぜあの人は卓越できるのか」守屋 淳 著
まえがき ~『孫子』を読んだ同士が戦ったら、どうなるのか~
I 部 「勝負師」たちの土台――当たり前だけど、当たり前にできないこと
第一章 ある領域での長く深い経験 ①察知力と直感
第二章 ある領域での長く深い経験 ②経験の巧みな積み方

※引用に適した文字量などの事情もあり、元の書籍にある詳説のほとんどは、読書メモから割愛しています。今回の範囲に限りませんが、具体的な話や数値など、詳細に興味をお持ちで未読の方は、是非、ご自身でお読みになることをお薦めします。

【 読書メモ(引用、問いなど)】

・「ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています。」 
有名な羽生善治棋士の「高速道路論」だ。
将棋は今、主要な大局をネットで同時生中継しているため、素晴らしい新手を指したとしても、あっという間に周囲にそれがバレ、対策を考えられてしまう。
また、将棋ソフトを使っての学習も盛んだ。豊富な情報を活かしてお互いが学び合うため、ある程度のレベルまではみな高速道路を走るようにスイスイ行けるが、みな似たようなレベルで頭打ちになって渋滞、先に行きにくくなってしまう。(p.2)

・パソコンが普及してからエクセルに記録することに変更しましたが、かならず自分の手でコピー&ペーストしています。これをずっと続けていると、人の気づかない本当に微妙な変化に気づけるようになるんです。(中略)
他の人が気づいていない指標の連動——こっちの指標とあっちの指標が実は繋がっているということも、わかったりします。 
今の若い人からは、『そんなの記録しなくても、データベースはパソコンのキーを叩けば、いつでも見れますよ』と言われたりしますが、データベースがいくらあっても、変化に気づけないなら、意味がないんです。(p.24)

・一方の現実社会というのは、便宜上何らかの枠——たとえば国や組織、さらには個人、専門領域等々——を設けたとしても、そこで完結はしない。程度の差はあるが外部世界に開かれているので、他との相互交流の中で枠自体やルール、構成要素が移り変わっていく。(中略)
会社や業界の内部をひたすら注視して微妙な変化やパターンに気づいたとしても、それをベースに「全体像」や「ビジョン」は浮かび上がってこない。プラスして自社に影響を及ぼしてくる外部世界の知識や見識が必須となる。(中略)
現実の世界では、ある領域やレイヤーが閉じているのか、開いているのかは二項対立ではない。複雑に入り組んだり、グラデーションになっている。
まずは、この構図を認識することが、「ある領域での長く深い経験」を卓越した判断力に結びつけられるか否かの第一歩となる。(p.30-32)

・「長く深い経験」を積むための、古今の「勝負師」たちに共通する原理、その筆頭が、「直後の徹底した振り返り」の実践だ。(p.35)

・「通勤電車での反省と準備を日課にしていました。(中略)
家に帰ってからも考えて、翌日はどうするかの考えがまとまるまで寝ないんですね。
翌日の出勤の電車で、今日やることをもう一度検証するという繰り返しでした」(中略)
「即座ではありませんが、小さな結果の連続で成り立っている、ある結果の塊を、もう一回自分で説明してみることはやっていました。
トップは自分の足跡を一ミリ単位で説明できなくてはならない。
やる前にどう思ったか、結果なぜそうなったか、ともに言えなければならない。だから、ある一呼吸を置いて、説明してみるんです」(p.40-41)

・「定点観測しないと、自分がそのとき気になったものしか見なくなる」と述べていたが、変化している対象を観察するのに、自分までふらふら動いてしまうと、変化は捉えられなくなる。(中略)
また「定点観測」には、自分自身の変化を知るという効果もある。(中略)
道具を変えることによって自分の技術のつたなさを補ってしまうと、自分自身の向上や劣化といった変化がわからなくなる。
逆に同じクラブを使うことが、自分に対する定点観測となり、自分を進歩させるもと、体調を知るもとになるわけだ。(p.47-48)

・「情報分析とは直観力を頼りに多元方程式をいっぺんに解こうとするようなアート(芸ないしは芸術)の要素がある。
しかも、この多元方程式は全ての変数が与えられているのではないので不確実な問題から不確実な回答を引き出す決断を伴うのが宿命である。
不確実の中の確実性を高めるツールとして経験あるいは失敗の集積、雑多な知識(ナレッジ)が役立つ。
その繰り返しからエキスパティーズ(専門技能)が育ってくる。情報を読むためには第一歩として『パターン認識』が大切だ。」 
ポイントは「失敗の集積」という部分。「蓄積」という表現ではないのがミソだ。
要は自分の失敗はもちろんのこと、他人の失敗を集めて蓄め込んでいくことで、判断の確実性が高められるというのだ。
これも同じような実践をしている「勝負師」は多い。(中略)
「成功事例には運が伴うので、あてになりません。逆に失敗事例は参考になります。(中略)でも見ない人も多いんですね。これは経験と人間性の差です。」(中略)
平戸藩主・松浦静山の名句、「勝に不思議の勝あり。負に不思議の負なし」を思い起こさせる言葉だ。(p.49-51)

・「自信をつけることと誤りを訂正されることの適切なバランスは、各個人が見つけなければならない。
経験からいって、”我慢できるうちは負けろ”は優れた原則だ。(中略)
勝つことは楽しく、連戦連勝が理想なのはたしかだが、進歩するには挫折が必要不可欠であると気づくことが大切だ。
挫折を経験しておけば、大事な戦いでいきなり壊滅的な打撃を受ける可能性は小さくなる。」(p.52)

・よく「他人の経験や失敗に学べる人こそ賢い」といった言い方がされる。
その方がより幅広い知識や教訓が得られるから、という面はもちろんあるが、しかしそれ以上に他人の失敗の方が客観視できて教訓にしやすいのだ。
逆に自分の失敗の蓄積は、下手をすると恐怖心や執着を呼び起こし、自分を縛るカセになってしまう。(p.54)

<今回の書籍を選んだ理由>
「生成AIやAIエージェントを効果的に使いこなせない人は不要になっていく」という話と、羽生善治さんの「高速道路論」を踏まえると、「高速道路を抜けた先の渋滞を抜けるには?」という問いが浮かびます。

今回の書籍は、まえがきにある「『孫子』を読んだ同士が戦ったら、どうなるのか」という表現と、先に挙げた問いが私の中で共鳴したため、仮想読書会を利用して、多角的な視点を通して読もうと思いました。

<問いの前に…「7人目」なりの学びの整理>
「今回の書籍を選んだ理由」で書いた「高速道路を抜けた先の渋滞を抜けるには?」という問いに対する答えに対して、今回の範囲では、下記の(A)(B)を学びました。

(A)ある領域での長く深い経験を積む
→外部世界からの影響も考慮したうえで、構図を適切に認識しやすくなる
→卓越した判断力を発揮しやすくなる

では、効果的に、長く深い経験を積むためには…

(B-1)「徹底した振り返り」を行う
(B-2)「判断を下す前の考えと、結果が出てからの理由を説明できる」ようにする
(B-3)対象のわずかな変化や自身の変化を知るために「定点観測」を活用する
(B-4)「他者の失敗も集積」し、適切な判断に繋がる「パターン認識」を育む
(B-5)「自信をつけることと、誤りを訂正すること」に関して、自分なりの「適切なバランス」を見つける

「与えられた情報が同じで、論理的思考を重ねれば、同じ解決策に辿り着く」というのはよくある話であり、私は「生成AIやAIエージェントを効果的に使いこなせるようになったあと、どういう形で独自の価値創出ができるか?」ということについて、高い関心を持っているため、次回以降の範囲を読み進めるのも楽しみです。

<問1>
第一章は「察知力と直感」に関する内容でした。
みなさんは、瞬時に状況把握ができるように観察力を高める、あるいは、適切な判断ができるように直感の精度を高めるために、どのような取り組みをされているのか、具体的なエピソードを教えてください。

<問2>
第二章は「経験の巧みな積み方」に関する内容でした。
みなさんは、(B-1)~(B-5)あるいは、その他のやり方でも構いませんが、どんな風にして、経験を深めるように取り組まれているか、具体的なエピソードを教えてください。特に、こんな困難があったけれど、このようにして乗り越えることができたなどといった事例があると嬉しいです。

【今回の成果共有】
芸術家:赤松さん
AIで画像生成はできますが、それを活かして人の心に響く作品を作るには、長年の観察から得た美的感覚や、社会への洞察が必要です。
例えば、キャンバスに向かうとき、最初の一筆を引くまでの「間」が重要で、その時間に周囲の空気や自分の内なる声に耳を傾けています。
直感を磨くための「定点観測」という考え方に共感し、制作過程での気づきを言語化・記録する新たな取り組みを始めることにしました。

実務家:青柳さん
グローバル企業での人材育成において、AIツールの活用方法を模索中です。
1on1ミーティングではAIで会話内容や感情分析を行いながら、個々の成長段階など、より深い洞察に注力するようにしています。
特に新入社員の成長追跡では、毎月同じフォーマットでの振り返りを継続し、数値では捉えにくい価値観の変化や、チームへの適応過程などを丁寧に観察するようにしています。

フリーランス:黄田さん
私の場合、世界各地での経験から、文化や習慣の違いを超えた「パターン認識」が重要だと感じています。
クライアントとの初回ミーティングでは、相手の話し方や身振り手振りから、プロジェクトの本質的なニーズを読み取るようにしています。
世界中のクライアントとのやり取りで、AI翻訳ツールは欠かせません。
でも、相手の文化的背景や、言葉の裏にある意図を理解するには、過去の経験から得た直感が重要です。
この「AI+人間の直感」という組み合わせが、新しい価値を生み出していると感じています。

起業家:緑川さん
教育系ベンチャーを運営する中で、失敗の集積と分析は非常に重要です。
特に新規サービスの開発では、ユーザーフィードバックを細かく記録・分析し、なぜその反応が起きたのかを、チーム全体で振り返る機会を設けています。
「自信をつけることと誤りを訂正されることの適切なバランス」という点が刺さりました。
特にスタートアップの世界では、スピードと正確性のバランスが重要で、完璧を求めすぎると機会を逃してしまう。
その中で、どこまでリスクを取るかの判断には、過去の経験値が大きく影響しますね。
この知見を活かし、社員教育でも「失敗から学ぶ」文化の醸成に注力したいと思います。

物理学者:白石さん
研究では、実験条件を可能な限り統一し、変数を最小限に抑えることで、本質的な変化を捉えようとするのが常套手段です。
そうしたアプローチを用いつつ、AI解析ツールも積極的に活用することで、若手研究者がデータの中の「意外性」に気づいたり、異分野との関連性を見出したりする力を養うのに役立てることを意識しています。
AIが提案する複数の仮説を検討しながら、これまでの文脈から予測される内容と異なる結果を多角的に分析するなど、AIと人間の強みを組み合わせることで、より大きな視点から研究の可能性を広げようと心掛けています。

政府官僚:黒木さん
政策立案の現場では、様々な利害関係者の意見を総合的に判断する必要があります。
その際、過去の政策の成功事例よりも失敗事例から学ぶことが多いですね。
特に、なぜその政策が機能しなかったのかを多角的に分析することを心がけています。
AIによるデータ分析は重要なツールになっていますが、利害関係者との対話では、言葉の背後にある意図や感情を読み取る努力を続けることで、テクノロジーの進化と人間社会の調和を目指したいです。

主宰者:7人目
今回の対話には、「AIを活用することで、経験を深める」事例がいろいろ登場し、とても興味深かったです。
「AIによる、文化的背景に基づいた暗黙の期待値の読み取り」や「失敗事例のパターン分析とAIによる予測の組み合わせ」が可能になったり、普及したりすることによって、「データと直感の統合による意思決定」が当たり前になっていくのではないか?と考え、「効果的な経験の積み方」も、AIの活用によって新たな可能性が拓けていきそうだと、期待が膨らみました。

◆今回の成果から、どんな問いや展開が浮かびますか?◆

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