すこしだけおかしいことは、言葉にするのが難しい【『地球星人』感想】
『地球星人』村田沙耶香 著
おもしろかった!と言っていいのかわからない。けれど、続きが気になって寝る間も惜しんで読み耽ってしまった。最近読んだ中で一番早く読了した。というかそもそも、小説を読み切ること自体、大人になってからは数冊しかない気がする。
読むことになったきっかけは、この本がどこかで話題になっているのを見かけたこと。多分一番有名である同著作の『コンビニ人間』もずっと読んでみたいなと思っていた。だけど、先にこっちを読んだ。話題になっているからと、内容は全く知らずに読み始めたので、まさかこんな話だと思わずに衝撃を受けた。
最初はどこにでもあるような幼少期の話から始まった。嫌な家だなあくらいに思っていた。ある事件から急激に話が展開していく。先生気持ち悪すぎる。
犯罪は本当にいけないことだけど、私は自分の手で復讐し終わらせることができたシーンでスカッとした。これが泣き寝入りだったらもっと嫌な気持ちになっていたと思う。というか、先に犯罪を犯されているのだ。だからやっていい!とは、もちろんならないのは言うまでもないけど。
村田さんのこのインタビューの一部
何があってもハッピーエンドは嫌い、最後まで絶望的ということにすごく救われた、この部分が本当に共感できて。こういう部分の感性が似ている部分があるから、書かれた小説を読んでもおもしろいんだろうなと思った。
わたしも、映画でハッピーエンドだとがっかりしてしまうことが多かった。なんだ、結局うまくまとまるのか。今までのいろいろも、この結末を引き立たせるための茶番だったんだ、と。かなり捻くれているとは自覚しつつ…。
でもね、現実はそううまくはいかないから。悪いことがあったらいいことがあるわけでもなく、何となく大丈夫になったり、大丈夫なふりをして進んでいかなくてはならないだけ。
だから、バッドエンド、もしくは特別なことは起きずに日常が続きます系が好き。特に、今よりも落ち込んでいた時は、同じくらい落ち込んでいる人の書いた短い文章とかしか読めなかった。ひどい落ち込みには励ましや慰めではなく、同じくらいの暗さ、絶望しか救いにならない。救いというより、命を繋ぐ感じかな。なんとか、大丈夫、同じくらい落ち込んでいる人もいる、1人じゃないと思えることが大事なんだ。
それこそ、急に身近なひとにそんな暗い話はできないから。せめて、匿名だったり物語の中には共感を求めたくなる。同情して欲しいわけでも、慰めてほしいわけでもなく。ただ、感じていることを感じたまま、否定せずにそこにある状態としておきたいだけ。
途中までは、うんうんわかるわかるとなりながら読んでいたんだけど、夫はいきすぎているなと感じた。そこまで“洗脳”されてしまえばむしろ楽だろうなとも思う。そういうことは日常でもよくある。だから私は奈月に1番共感できるかな。
あとは奈月には由宇がいて羨ましい。解決することはなくても、1人でも理解者、心の拠り所があると違うよなと思った。
最後の方はいよいよ非現実みをおびてきて、ラストシーンは恐ろしかった。とことん我が道を極め続けられるのはいいなあとも思ってしまうけど。
本当におもしろい作品だったので、書いている人物のことが気になって、早速エッセイも買った。まだ最初の方しか読んでいないけれど、その感じではかなり一般的な感性だと思う。
コンビニ人間も絶対に読みたい。
ポハピピンポボピア!
気にいった箇所を、引用でメモにとっていたんだけど、多すぎて最後の方は制限がきてとっておけなかった。なので、できた分だけを共有する。
すり抜け・ドットコムがあったら、覗くだけしたいな。家から逃げる手段、大人なんだからいくらでもあるはずなのに、そういう手段をとらない、とろうとしない、とれないのが病なんだろうな。あくまでも言いつけを守り、『地球星人』として擬態し続けようとする奈月はすごいし、悲しくもあった。
改めて読んで、大人に失望して、人生に絶望して、それでも生き続けてしまう人たちの物語なのだと思った。生まれたら、生きるしかないんだよね。そういう人たちの物語が書かれているのが嬉しいし、出会えてよかった。
奈月も、由宇も、奈月の夫も、世の中に世界に地球に絶望しつつも、生きることだけは諦めていないんだな。なんでなんだろう。なぜ、生きてしまうんだろう。それは生物としての宿命なんだろうか。そこは地球星人と宇宙人の共通点なのかな。
なにがあってもいきのびること。
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