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季節外れのスイカ 「脳がバグる」
「今年のスイカは、クレームが多かった」。産直市の店長がぼやいていた。7月下旬に開催された恒例の「スイカまつり」。購入客から「熟れていなかった」との苦情が寄せられたと。「受粉した時に目印をつけ、積算温度で収穫時期を決める」と農業大学校で習った。積算温度の目安は小玉で800~900度、大玉1,000~1,100度。出荷農家は当然、実践したはずなのに…。
長雨と猛暑 蔓が萎びる
昨年に続き、今年も少量の苗と種を購入し、栽培した。だが、早々に出荷はあきらめた。梅雨時期の長雨、その後の猛暑。購入した苗「紅しずく」は、蔓が弱り、受粉から20日くらいで萎びてしまった。これでは実に養分が回らない。産直市で売られていたスイカも過酷な気象条件で生育がうまくいかなかったのだろうか。
何とか実を付けた株も、防鳥ネットの隙間をかいくぐったカラスにやられる始末。ネット購入した種「紅しずく」「黒煌」は、半分も発芽せず、定植が遅れてしまった。収穫できたのはほんの数個。スイカ栽培、収穫適期の見極めは難しい、と改めて思う。
季節外れに発芽 試しに定植
7月下旬、育苗ハウスの中に残っていたポットから5株、スイカの芽が出ているではないか。ものは試しに、と畑の一角に植えてみた。もう8月になっていた。
期待していなかった。ほとんど放置。8月下旬、雑草の中に、いつの間にか大きくなった実が。カラスにやられないよう、網をかける。小玉スイカは夏場なら日数にして30~35日で収穫できる。受粉日も記録していなかった。40日くらいは経過しただろうと推測して、大きめの実を一つ持ち帰った。
包丁を入れる。あれっ? 中が真っ白。やっぱり、季節外れはダメか…。
最後の収穫は10月中旬、もう秋
もう一つあった実は、しばらく置いておいた。そろそろ、後片付けをと思い、25センチくらいの大きさになった小玉スイカ「黒煌」を持って帰った。10月中旬。もう秋風が吹いている。
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また、真っ白かな。ドキドキ。えっ、赤くなってる。試しに真ん中あたりを食べてみる。夏場ほど糖度は上がっていないが、スイカだ。
妻の名言「脳がバグる」
カットして食卓に並べると、「夏の臭いがする」と妻。あまり、気乗りはしていないようだ。一口食べ、「あーー、脳がバグる」。なんという表現か。10月なのに、口の中に夏の風味が広がる違和感、ということらしい。
野菜の季節感が薄らいでいる。スーパーには年中、トマト、キュウリ、ナス、大根、白菜などの定番野菜が並ぶ。施設栽培、品種改良、物流などがそれを支える。農家サイドから言えば、あえて「旬」を外すことで、通常よりも高く売れるメリットはある。
でも、やっぱり、スイカは「夏」なのだ。
子どものころ、縁側でよく食べた。当時、我が家にエアコンはなかった。扇風機の風を受けながら、井戸水で冷やしたスイカにかぶりつく。みずみずしさと清涼感。夏とスイカは一体だった。
「脳がバグった」。今年の我が家の流行語大賞かも。
(あぐりげんき)
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