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#夏

【詩】 夏の終わり

【詩】 夏の終わり

どこかに行ってよと 
あんなに願ったはずなのに 
いなくなってしまったら
とたんに寂しくなった

わかってたはずなのに
止められなかった

素直じゃない
わたしの目には

まぶしすぎたの 
あなたのきらめき 

【詩】 夏を味わって

【詩】 夏を味わって

窓を開けて 扇風機つけて

夏の午後を味わう

酷暑の海を渡ってきた やわらかく たわむ風 
姿の見えぬ 蝉たちの伴奏

今 この季節の 最大演出

横になって 目を閉じる

裸足の足を投げ出せば 
するり撫でられる 解放感

何のために生まれてきたの

この辛さがあるゆえの 快楽よ

それを味わうために 生まれてきたのよ

ちいさな声が 聞こえてくる

夏の午後を 味わうことは

生きてることを

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【詩】 プルーストの夏

【詩】 プルーストの夏

扉を開けると 夏のにおい

あの頃の記憶がバッとよみがえる

あれから幾とせ 季節は巡るけれど

いつもそこは

あの夏のにおいがした

わたしがわたしに戻る

独りだけの あの個室

篭った濃密な空気とともに

守られるプライバシィ

ああ そこは きっと

来年も また次の年も 同じまま

このむせ返るような

いとおしい

夏のにおい

【詩】 夏の午後の太陽

【詩】 夏の午後の太陽

夏の午後の太陽は
その大きなやわらかい舌で
僕たちをやさしく舐めた

夏の午後の太陽の下で
僕たちは 息も絶え絶えに
笑いあった

アスファルトの上 
あの彼方に見える蜃気楼は
まるで僕らの希望のよう

夏の午後の太陽は
なんと無邪気で無慈悲なことか