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企画参加作品

49
no+eで開催されている様々な企画に参加した作品集です。        シロクマ文芸部(毎週)・旬俳句(季毎)・54字の宴
運営しているクリエイター

#小説

チョークの効用 毎週ショートショートnote

宮坂教授の研究室は混沌を極めていた。そこはむしろ倉庫と呼ぶのがしっくりくる。そのせいもあ…

歩行者b
1年前
75

らっきょうの瓶 毎週ショートショートnote

「単純な事件だ。さっさと済ませて引き上げだ」警部補が誰にとはなしに怒鳴った。 事件当時は…

歩行者b
1年前
43

旧友 毎週ショートショートnote

第一志望の公立はスベった。当時は仕方なく入った私立だったけど、特進クラスで友人にも恵まれ…

歩行者b
1年前
56

白いシーツ #シロクマ文芸部

走らない刑事の私に何が求められているのか、私はよく理解しているつもりだ。そもそもキャリア…

歩行者b
1年前
60

腋の薔薇時計 #毎週ショートショートnote

「先生、問題の腋というのを見せていただけますか」 医師は遺体の右腕を大きく持ち上げた。 「…

歩行者b
1年前
61

秋の空時計 #毎週ショートショートnote

空時計が流行っている。 といってもお店で売っているわけではない。空を見上げて「お腹が空き…

歩行者b
1年前
65

あの人を探して #シロクマ文芸部

月めくりをしながら、つい溜息を漏らしてしまう。 月日の過行く早さを嘆いてのことではない。 五ヶ月前、あの人が玄関を出てゆく後姿を今でもはっきり覚えている。 いつものダークグレーのスーツに黒い鞄。 でも私には違って見えた。その肩から、背中から寂しさを感じた。 喧嘩をしたわけではない。いつものように朝食を摂り、身支度を整えて出かけた。何の変哲もない一日のスタートのはずだった。 あの人は姿を消した。 あの人が勤めているはずの会社には在籍していなかった。 必死で探した。 でも私は

成仏宴の行く末は #毎週ショートショートnote

私の父が生まれ育った村では、葬式に宴会が催される。 亡き人を快くあの世に送るための儀式だ…

歩行者b
1年前
60

読む時間 #シロクマ文芸部

読む時間をたいせつにしている。 体の正面で両の手で持ち、題名を改めた後、表紙を厳かに捲り…

歩行者b
1年前
82

博物館にて #毎週ショートショートnote

これがかのメソポタミアの楔形文字ですか。なんのこっちゃわからんなぁ。   そりゃそうです。…

歩行者b
1年前
82

呪いの臭み  #毎週ショートショートnote

揺らせば笑うことだってある。 大学の地下室で、解剖用の死体を処理するバイトをしている。理…

歩行者b
1年前
67

紅葉の陰で  #シロクマ文芸部

小牧部長様 よろしくお願いいたします。   498字 秋が好き、それには超絶という修飾語を付…

歩行者b
1年前
76

あいつのこと  青ブラ文学部御中 

我が家の猫の額ほどの庭には、ただ一つだけ鉢植えがある。毎年春先に桔梗の種を蒔き育てている…

歩行者b
1年前
50

叔母の愛歴 シロクマ文芸部御中

愛は犬の涎のようなもの、と去年亡くなった叔母が言っていたのを思い出す。 叔母は生涯に3度の結婚をした。最初は親の勧めた結婚で、間もなく破綻した。 2度目は就職先の会社の上司だったと聞いている。叔母はこの結婚ではずいぶん苦しんだのではないかと思う。 およそ20年に亘る結婚期間中、夫に愛人がいなかった暇はなかった。何度となく入れ代わり立ち代わり変わっていく愛人を、叔母は一人残らず知っていた。知っていながらそれを許していた。 それは、自分が選んでもやはり失敗したと言われたくないと