見出し画像

旧友 毎週ショートショートnote

第一志望の公立はスベった。当時は仕方なく入った私立だったけど、特進クラスで友人にも恵まれ、三年になって母校はすっかり僕のアイデンティティーになった。
二年まではまだ悶々とするところがあったのだろう。スベった高校の文化祭には足が向かなかった。女子高の文化祭には足繁く通ったのに。

間違いなく僕が逃したのは優秀な高校。そんなスベり高等学校に僕は初めて足を踏み入れた。
仲の良かった敦が焼き栗の模擬店をやっていた。いかにも敦らしい。よく栗を探して山を駆け巡ったものだ。
僕は臆することなく敦の目を見ていた。
しばらく他愛のない話をするうち、僕たちは昔に戻っていた。敦の投げたボールが他所に気を取られていた僕の側頭部に当たった時、敦は駆け寄ってきて、真面目な顔でスマンと言った。悪いのは僕の方だ。
人との関係なんて、赤い色がいつの間にか褪せてしまうように、希薄になるものだと思っていた。

敦は僕が憧れるような男になっていた。
大学でまた会おう。
                 410字

たはらかに さま
今回もお世話になります。
一日も早い回復をお祈りいたします。


いいなと思ったら応援しよう!