世界一小さな芸術祭No3〜繋がっていく〜
真ん中にある座椅子にしばらく座っている。
周りの作品と線に囲まれていて心地よい。
この空間の心地よさを更に引き上げているのが入ってきてからずっと流れているラジオだ。
これも作品なのだろう。
楽しそうでいて何よりパーソナリティの声が柔らかで耳に心地よい。言動から察するにとても優しい人なんだろう。線をみたら全員と繋がっている。
「アトリエ憩」というラジオで小川じょうじさんがパーソナリティとなりゲストに毎回参加者を一人ずつ呼んで話すという構成になっていた。
ゲストによって話す内容も変化していて、その声を聞きながらその人のデザインされた額をみているとどんどんその人が見えてくる気がした。
ある展示物が目に入り私は座椅子を立ち上がっていた。
これは。
私が目撃した「戯画リンピック マスクオンマスク」ではないか。彼ら二人の戦いの写真の数々、その時のポスター、引地川と寺越と山下を表したオブジェ、戯画リンピックの歴史、マスクオンマスクの説明などがあり、私の頭の中にはあの時の二人の激闘が蘇っていた。
ただ私は納得がいかない。山下の華麗な必殺技の数々、寺越の泥臭い躍動感、引地川の水しぶき、オカリナゆうこの音、ハマっ子さんの存在感、これらが伝えきれてない。歯がゆかった。
私が戯画リンピックの時に書いた記事があるのでそれを見て頂けると幸いです。
次に目に飛び込んできたのは紙芝居だ。
何点もありオリジナルなのだろうか、あまり聞いた事がない題名が多い。
絵はとてもポップで丁寧に描かれている。
線をたどると吉田みずほさんと中山侑子さんに繋がっている。これは紙芝居屋をイメージしているんだろう。どこかで行われるのだろうか(この時は知らなかったが二人はこれを機に鋼鉄紙芝居ユニット寅パンクを結成)行われるのであればどのようにやるのか一度見てみたいものだ。
近くをみるとAmazonの箱と包み紙がある。
中をみるとどちらにも同じ形態の本のようなものが出てきた。開くと写真と言葉が書いてあるフォトブックだ。
一つは梅崎信一さんで、もう一つは吉田みずほさん。それぞれの写真が貼り付けてあり言葉が切りとられて書かれていた。線をみるとどうやら中山侑子さんが二人と作ったもののようだ。
中山侑子さんは二人のこういうところを切りとるのかと彼女の視点が見え隠れしていた。
Amazonをつかっているのは何でも揃っているがどれも同じものはないという事なのかもしれない、そう、人間のように。
隣の小さな机をみると原稿用紙が大量に置かれていた。そして壁にはぐしゃぐしゃになった原稿用紙が貼り付けてある。書きなぐっている文字は汚いが苦労してこれを書いたのは痛いほど伝わる。ノンフィクションライターではあるが書き手としてこの苦労はわかり過ぎる。原稿用紙を手にとり読んでみる。どうやら短編小説のようだ。線をみたら梅崎信一さんが中山侑子さんと村山かおりさんと繋がっていた。もしかしたらこれは梅崎信一さんの実際の視点で進んでいるのかもしれない。だとしたら梅崎信一さんは少し捻くれ者なのかもしれない。梅崎信一さんの顔をみて汚い字で書かれた文章を読み、微笑みが溢れた。
全ての作品を見終えて、ふと見ると今までここにきた人の感想が付箋で壁に貼られていて、その近くに感想ノートもあった。
真ん中の座椅子に戻り、それをゆっくり見ていく。多くの人が楽しんでいるようだ。
中でも興味深かったのが、ここは暖かく感じるという感想が多かった事。これは私も少し感じるところがある。ここには暖房もなく外も寒いのになぜなのだろう。
都心の東京ど真ん中で繋がりというものが線や作品で可視化され自分もその繋がりの一部だと心が温んでいるのだろうか、どうなのか、私にはわからない。
感想を読み終わり、また先ほどのように座椅子に座り虚空を見つめる。
時間をみたら驚いた事に2時間経っていた。
こんなに私はいたのか、ここに。
そう思ったら階段を登ったのがだいぶ前にも感じるしついさっきのようにも感じる。
不思議な場所だ。
ただ、まだ動けそうにない。
もうしばらくは線や作品に囲まれて座っていたい。
どうやら私はもう繋がってしまったようだ。
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