哀愁でいと in 2023 下半期
インスタントなロマンス
2023年の下半期は、取り分け大恋愛をすることはなかった。マッチングアプリで気になった人と数回デートをし、今でもたまに会う人もいる。恋愛感情というよりも、人としての愛情が芽生えたり、なんだかそれも悪くないなと思ってきた。でも、数回デートをして終わりの人もそれなりにいると、あの一瞬のロマンスはなんだったんだろうと時折考えることもある。そんなプラトニックな愛とインスタントなロマンスに巡り合った2023年の上半期であった。
プラトニックな関係を築いている人とは半年で6回しか会っていないのに、今でも毎晩1~2時間の電話をしている。自分たちでも何を話しているのか、次の日にはほとんど覚えていない。サービスの悪いUber Eatsの配達員や相手の部下のことなど、その時々で自分たちのブームやトークテーマになる対象が変わる。毎度のこと、そのお決まりの対象に変わったあだ名を付けるのにハマっている。
8割が無駄話だと自負しているが、それがまた楽しくて心の支えになっている。勿論、相談事や大事な報告も数知れず。間違いなく彼の存在がなかったら、乗り越えられないようなことだってあった。お洒落なイタリアンでディナーをしたり、家に招くことがあっても、そこには恋愛感情が流れている感触はなかった。でも、常に笑いが耐えない愛しい空間である。正に、映画の" about time " っていう感じ。 そんな空間が、居心地が良くて仕方ない。それまでSDGsな男女の友情なんてないと思っていたのに、こんな関係があるんだと感動を覚えた。これからも彼とはそんな関係でいれたらいいなと思う。
インスタントなロマンスで言えば、思い出せない程ある。いわゆる、マッチングアプリですぐに会って、徐々に自然消滅してしまうパターン。そんな人たちとは、そんなに印象的な出来事は無かったも同然だ。一時は、短期間で色んな人に会った方が効率良く恋人ができると思い、毎週日曜日に3人に会うということを自分に課していた。それをすると、誰が誰だか分からなくなってきて、心身共に疲れてしまう。そして、インスタントなロマンスのプロローグくらいで、関係性が終わってしまうのだ。その方法が無意味な義務だと気付いてからは、すぐにやり方を変えることになった。
今度は複数人と同時進行ではなく、一時的に1人に絞り、その人との関係性に集中しようと決めた。その中でも特に印象的だったのは、クリスマスイヴに会った同い歳の人。彼とはなんと、その週に3回も会った。ちょうどクリスマスイヴも重なり、自分史上最速の恋の展開になるのではないかと、物凄く期待していた。しかし、結果から言うと、思い描いたような展開にはならなかった。
場所は日比谷。イルミネーション・映画・食事に色んなことを楽しめる上品な街は、日比谷しかないと思った。そして、ずっと気になっていたディズニーの新しい映画を見て、夜ご飯を食べた。その帰りの道中で、彼は私に結婚を視野に入れたお付き合いをしてほしいと言ってきた。私は、色々な価値観を確認したうえで承諾した。
衝撃的なことが起きたのは、帰宅したあと。2回目までと同様、「今日もありがとう」と絵文字付きのLINEを送り、彼からも同様の返事がきた。それから2時間ほど経ち、たまたまマッチングアプリを開いている時に彼にブロックされていることに気付いた。もしやと思いLINEも確認すると、案の定だった。ブロックされていたのだ。頭が真っ白になって、本当によく分からなかった。彼は何をしたかったのか、何を意図していたのか。私は付き合う前に身体の関係を持つことは無論ないため、余計に去って行った理由が分からなかった。
「この1週間に3度も会い、色んな感情を巡らせていた私はなんだったんだろう」と動揺を隠し切れなかった。こんな展開は予想もしておらず、何も考える間も無く、気付いた頃には目の前から去って行った。また違った形のインスタントなロマンスを味わい、そして、自分史上最速のインスタントなロマンスであった。
今年イチの哀愁でいとになり得ることを乗り越えた2023の末。どうか、彼を超えるようなインスタントな人は来年も再来年も現れないでほしい。2024の恋愛が、良いスタートを切れますように。