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不眠症状と鍼灸治療の関連性
今回の記事のベースは不眠症状と鍼灸治療の文献をベースに書いています。
はじめに
本論文では、不眠症状と鍼灸治療の関連性について、多角的な視点から検討しています。鍼灸治療を受ける患者の多くが不眠症状を併発している現状を踏まえ、その改善効果や治療法について探求しています。
1. 鍼灸治療と不眠症状の現状
鍼灸治療の臨床現場では、肩こりや腰痛などの整形外科的な訴えだけでなく、不眠症状を訴える患者も多く見られます。森ノ宮医療大学附属施術所での調査では、来院患者(平均年齢55.5歳、n=30)の63.3%がPSQI-Jで6点以上の睡眠障害を有し、56.7%が入眠困難を抱えていました。また、主訴に対する鍼灸治療後、夜間の覚醒回数が減少する傾向が示されました。
2. 東洋医学における不眠症状の理解と経穴の選択
東洋医学では、不眠症状はストレスなどの心理的要因による「神」の乱れと捉えられます。そのため、心を鎮め、精神を安定させる経穴として、以下のツボが用いられます。
神門穴(HT7):手関節の掌側横紋上、尺側手根屈筋腱の橈側に位置し、心を安らげる作用があります。
内関穴(PC6):前腕の内側、手関節から上に2寸の位置にあり、心を清める効果があります。
百会穴(GV20):頭頂部の正中線上に位置し、肝を鎮め、精神を安定させます。
三陰交(SP6):下腿内側にあり、三陰経の気血を通し、心腎のバランスを整えます。
これらの経穴は、心理的側面の改善を目的として選択されています。
3. 鍼治療の科学的検証と効果
近年、海外を中心に不眠症状に対する鍼治療の臨床研究が増加しており、その効果が科学的に検証されています。多くの研究で、神門穴への鍼刺激が不眠症状の改善に有効であることが報告され、PSQIスコアの有意な低下が確認されています。また、百会穴やその他の経穴も治療に用いられ、その効果が支持されています。
4. 現代医学的視点からの不眠症状と鍼灸治療
現代医学では、不眠症状の要因は多岐にわたります。睡眠障害国際分類(ICSD-3)では、不眠障害の診断に際して他の睡眠障害(睡眠時無呼吸症候群、概日リズム睡眠・覚醒障害、睡眠時随伴症候群など)を除外する必要があるとされています。適切な睡眠を維持するためには、生活習慣の見直しや睡眠衛生習慣の改善が不可欠であり、厚生労働省も「健康づくりのための睡眠指針」を策定しています。
5. 自律神経と体温調節に着目した鍼灸治療の効果
本研究では、自律神経と体温調節の関係に着目し、鍼灸刺激が不眠症状に及ぼす影響を検討しました。入眠には中枢温度(脳や内臓の温度)の速やかな低下が必要であり、そのためには産熱機序の低下と放熱機序の亢進が求められます。鍼刺激は交感神経活動を抑制し、末梢血管の拡張を促すことで皮膚温度を上昇させ、放熱を促進する可能性があります。
6. 灸セルフケアの有効性
被験者自身が就寝前に四肢への灸セルフケアを2週間継続して行う臨床試験では、介入2週目に夜間の覚醒回数が有意に減少し、日中の眠気も改善することが確認されました。また、施術所の来院患者に対しても、週1回の治療に加え、灸セルフケアを指導した結果、夜間の覚醒回数と日中の眠気が改善傾向を示しました。
7. 鍼灸師の役割と地域医療への貢献
これらの結果から、定期的な鍼灸治療と灸セルフケアを組み合わせることで、不眠症状の改善に有効であることが示唆されます。鍼灸師は、東洋医学と西洋医学の両方の知識を有し、不眠症状を訴える患者に対して適切な鑑別診断を行い、必要に応じて医療機関への受診を促す役割を担っています。また、伝統的に有用とされる経穴や科学的に検証された経穴・手法を用いて治療を行うことが可能です。
8. 伝統的な鍼灸療法とセルフケアの重要性
歴史的に、鍼灸師は地域社会に密着し、住民と共に生活することで地域医療の担い手として活躍してきました。灸治療やツボ療法は家庭内で行われ、鍼灸師は住民に治療部位を教授し、セルフケアを促進してきました。これはプライマリケアの一環であり、セルフケアの実践でもありました。
おわりに
本論文は、不眠症状に対する鍼灸治療の有効性を、伝統的な東洋医学の視点と現代医学の科学的検証の双方から明らかにし、鍼灸師が地域医療において果たすべき役割を示しました。不眠症状に悩む患者に対して、鍼灸治療とセルフケアの指導を組み合わせることで、健康の維持・増進に貢献できると考えられます。今後も、さらなる科学的な研究を進め、鍼灸治療の効果を明確にすることで、地域社会における健康増進に寄与することが期待されます。
参考文献:不眠症状と鍼灸治療
わたし自身も不眠症の患者さんには基本的には頭部に鍼をしています。
特に百会や四神総、前頭部の反応部位などなどです。
もちろん症状によって変わりますけどね。
みなさんはどんな治療法で行っていますでしょうか?
コメント欄にて教えていただけると幸いです
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