【植栽家の日常】20221129 農場day。 オーナメンタルな冬枯れ姿を楽しめる宿根草
今朝は農場での仕事に加え、ちょっと植物観察の時間を取って晩秋〜初冬の冬枯れ姿もオーナメンタルで観賞価値が高い宿根草の写真を撮ってみました。
店に急いで戻らなくてはならず、あまり時間がなくて、あまり良く撮れてはいませんが、ちょっとした解説も交えていくつか紹介したいと思います。
オランダ人植栽家 ピィト・アウドルフ氏デザインによるニューヨークのハイラインパークのような、落葉性の宿根草とオーナメンタルグラスをメインに構成する「ニュー ナチュラリスティック プランティング」と呼ばれる植栽スタイル。今日、植栽スタイルの世界的潮流のひとつになっていますね。日本でも近年とても注目されています(私個人としては過剰な流行化傾向と思っています)。
この流れを受けて日本の園芸情報サイトや文献でもオーナメンタルグラスが紹介されることは多くなってきましたが、ピィト・アウドルフ氏自邸の幻想的な晩秋の景色を印象付けている、オーナメンタルなシルエットに冬枯れしていく宿根草については、私が知る限り、日本では具体的に個別解説されることはほとんど例がないように思います。
というわけで、今日、乙庭の農場で見られたグラス以外の冬枯れ姿がオーナメンタルで美しい宿根草を紹介しますね😊
おそらく、日本国内の園芸書ではなかなか得られない情報かなと思います。
ベロニカストラム チャレンジャー
ベロニカストラムは日本にも自生するクガイソウの仲間。本種は北アメリカ原産種由来の園芸品種です。
やや硬い質感でスパイク状の尖った長い種穂がドライに枯れていく姿が植栽の中でもよく目立ちます。
そして、ベーシック〜明褐色に枯れる植物が多い中、ベロニカストラムは焦げたような黒褐色に枯れていく点もとても特徴的です。
夏の花や茎に輪生する葉姿も美しく、春から冬枯れまでもれなく観賞できますね。
ユーパトリウムの仲間
日本に自生するフジバカマと同じ仲間です。園芸的には北米原産のマキュラタムなど花穂が壮麗な種がよく用いられます。
ピィト・アウドルフ氏の植栽でもベロニカストラムとユーパトリウムの冬枯れ姿を組み合わせている例をよく見かけますね。
北米系ユーパトリウムは比較的ダイナミックに育つものが多く、晩夏に咲く花序もとても華やか。
晩秋から初冬にかけて褐色に乾いていくフワフワした感じの種姿も、ベロニカストラムとはかなり対照的で、組み合わせると対比よく引き立て合います。
セダムの仲間
オオベンケイソウ系のセダムのドライな花殻も、ベス・チャトーガーデンなど、ヨーロッパのステキな庭園の秋の見どころとして自慢げに植栽されることが多いですね。
セダムの花殻は濃い赤褐色で、ユーパトリウムよりも硬い質感。遠目に横に広がるクラウド状のシルエットが、ベロニカストラムやグラスの穂など縦線状のシルエットのものと好対照に似合います。
アリウム メデューサズヘア
夏に花が咲き、秋に乾いたネギ坊主状の種姿をオーナメンタルに楽しめる宿根性のアリウムです。
春から秋に地際に展開する青緑色の葉も、品種名のごとくクネクネとヘビ状によじれて独特の観賞価値があります。
本種と前出のセダムは草丈が低いので植栽の前面に、ユーパトリウムやベロニカストラムは高さが出るので植栽の中〜後側に植栽するとバランスよい配置になりやすいです😊
今日面白いなと思ったのは、アジサイのカラーリーフ品種の晩秋期の葉色。
品種本来の葉色として紹介される春から夏の様子ともまた異なる、こっくりした複雑濃厚な色合い。園芸書では知ることはできない「実際育てている人しか知らない情報」だなと思いました。