くらもちひろゆき

盛岡で演劇をしています。このページでは、過去に書いたものを備忘録的に上げていきます。新…

くらもちひろゆき

盛岡で演劇をしています。このページでは、過去に書いたものを備忘録的に上げていきます。新聞に掲載されたものや、劇団のパンフレットなどに書いた文章を徐々に時間をさかのぼっていくように掲載します。ときどき時系列が行ったり来たりします。

最近の記事

ある年の高校演劇県大会の講評

 幕開け一目見て、どこかの部室であることが伝わりました。よく見ると演劇部であることもわかり、会話の中でもさりげなく様々な情報を伝えています。しかし、初めてこの芝居を見て細かいところまで伝わるかといえば、なかなかそうなってはいないと思いました。 パネルがすぐ後ろにあると、声が反射して客席に届きやすいのですが、それでも聞き取りにくいところが散見されました。会話劇なので、できる限り細かく伝えたいところです。 今回のお芝居の最大の問題点は、そこにありました。何しろ、できる限り隅々まで

    • ある年の高校演劇県大会の講評

       幕開けというか、幕前で宇宙空間を表す試みはまずまず成功しています。宇宙服の背中にランドセルというのが面白いです。音の使い方が自然で良いと思いました。  最初のホログラムでなぜか寅さんの場面なのですが、寅さん役の独特な声質と微妙に回っていない滑舌がちょっとツボにはまってしまいました。これは役者としてはとても貴重な愛嬌を持っているということです。他の役者たちは比較的声も通って、セリフも客席まで届いていたので、何を言ってるかわからないというストレスを抱えることはありませんでした。

      • ある年の高校演劇県大会の講評

        屋上革命  幕開けで屋上の雰囲気がきっちり出ているので、場所の設定は成功しています。登場人物が2人、フラットで何も置き道具がないという、照明泣かせな舞台だったと思いますが、ホリゾントに多様な色を映してかなり健闘していたと思います。  放課後を表すようなガヤの音も工夫されていて、時間がわかるのですが、入るきっかけや消すきっかけ、レベル、また、どのくらい流すのか? ということをもう少し細かく考えた方が効果的だったと思います。場面の要求によって風に乗ったガヤが聞こえてきたり消えて

        • ある年の高校演劇県大会の講評

          「ツナグ」  セットの説得力が素晴らしいです。ろくろなども回っていて、ちょっとスゴい手間かかってるなぁと感心してしまいました。ただ、モノを出してしまうと、実際に作業しないと、もったいないと感じてしまいます。そうなると本物のろくろを使って削り作業まですることになってまうので、むしろ作業場は舞台裏にあって、作業する音が響いてくる、という舞台設定にした方が良かったかも知れません。  序盤の昭和的なギャグのノリツッコミが微妙にスベっていたのですが、わたしとしてはそのスベり方がツボに

        ある年の高校演劇県大会の講評

          ある年の高校演劇県大会の講評

          「横断歩道の真ん中で」  幕開けにジャンプしている熊田の高さにまず感心してしまいました。これは素人じゃないなと思いました。また、陽向の黒板消しのマイムがとても上手でした。全員のセリフも問題なく客席まで伝わっていて、安心して観ていられました。  事の発端は、紀香とゆなのケンカということになるのですが、幼なじみの二人が今ここでなぜケンカしなくてはいけなかったのか? という掘り下げが若干弱く、そのためか、ゆなが酷いことを言うまでの手続きがちょっと簡単に感じられました。もう少し丁寧

          ある年の高校演劇県大会の講評

          ある年の高校演劇県大会の講評

          「I WiSH…」  既成の戯曲を選ぶといっても、なかなか簡単ではないのは事実です。基本的に戯曲は売れないので、出版されたとしてもすぐ絶版になってしまうし、そんな発行部数の少ない戯曲を配架している図書館も絶望的に少ないのが現状です。  Amazonなどで探そうとしても、タイトルや作者名を知らないと検索できないので、それも簡単ではありません。なんとか戯曲を探すべく様々な手段を講じたのだと思います。そんな現状の中で、ネットに頼ってしまうのは致し方ないことでしょう。  高校演劇で

          ある年の高校演劇県大会の講評

          長年演劇をやってきたわけですが

           何かいいことがあったかというと、それはもう数え切れないくらい良いことがあったわけで、それを具体的にどうこう言うと、あっという間に原稿用紙300枚くらいになっちゃうので、ここでは書きません。 ホントは良いことなど書けないんじゃないか? と勘ぐられるのも癪なので、代表的な良いことひとつをあげておきましょう。これが果たして本当に良いことなのかどうなのかについては、みなさんの判断を待ちます。 まず、お金目当てで近づいてくる人がいません。どんなに良い人間関係も、お金が絡んでくるとこじ

          長年演劇をやってきたわけですが

          あの年の盛岡2011パンフ文章

           あのとき、わたしたちはみんな当事者でした。街角で、学校で、仕事場で、劇場で、車の中で、自分の家で。そして、目撃者でもありました。直接その目で、テレビの中で、ラジオの声で、ネットの動画で。それだけでなく、傍観者でもありました。何かできることはないか、何かしなければならない、何かできるはずだ。実際に何かできた人もたくさんいたでしょう。しかし、何をしてもその隣には、自分の力の及ばない、ただ、見ていることしかできない人々がたくさんいました。何をしても無力であることを思い知らされたの

          あの年の盛岡2011パンフ文章

          ひねりだし

           今回の執筆は、これまでで最も苦労したと言っていい。というか、まだその苦闘は続いている。そろそろ終わりにする予定なのだが、まだ続いている。  というのも、とにかく「人類史」をテーマにすると決めてしまったからだ。普遍的なテーマは、長く格闘するに相応しいモノなのだが、それを現実的に演劇に落とし込む作業は難しい。  これまで、産婦人科のロビーや保育園、写真館といった、現実の生活で、何かの節目に関わる場所で展開する作品を多く書いてきたので、どうも自分の経験したフィールドに落とし込まな

          岩手公園ものがたりパンフ用文章

          第2部あらすじ300字  知事官舎の敷地内にある車夫勘吉の家には、知事邸の女中や近所の女たちがいつも集まっている。ここ最近の話題は、荒れ果てたお城山を公園に、という街中での噂話。勘吉の妻吟子は、知事への進言をお願いするが「女は家のことだけやっていろと」言われ激怒。同じ頃、女中頭の林歌子も、中級武士の家柄として、荒れ果てた城跡に心を痛めていた。さらに北条知事の下で、宴会が増えたため、子作りの暇もない秘書の妻が訪れ、泣きながら現状を訴える。  そんなとき、知事の妻菊子が、勘吉の家

          岩手公園ものがたりパンフ用文章

          禁煙フォーラム2019用台本   「タバコ男をやっつけろ」

            登場人物 タバコ男         先生         ナース 白鳥 タバコ男登場、頭にタバコのかぶり物をかぶっている。 タバコ男 ここが敵の基地、禁煙外来だな。我々タバコの存在を脅かすこんな禁煙外来をのさばらせとくわけにはいかん、ぶっつぶしてやる!     ナース白鳥、タバコ男の背後から登場。 白鳥 どうなさいました? タバコ男 うわあ!(やたらとびっくりする)不意打ちとは卑怯なやつめ! そっちがそのつもりならこっちだって・・・。     「うおおおー」とか

          禁煙フォーラム2019用台本   「タバコ男をやっつけろ」

          架空の劇団第17回公演「露と答へて~鬼の業平 仏の双六~」の企画書に書いたもの

          コンセプト                               今回の作品は、架空の劇団が誇るもう一人の座付き作家、高橋拓による新作です。2013年11月に上演された「まるで血を塗ったような月が降りてくる~月下の一群 亜米利加編」以来、2年ぶりとなります。 これまで、高橋は、詩人をモチーフとした『月下の一群シリーズ』のほか、歌人や歴史上の人物などが登場する作品を得意としてきました。 今回は、2009年8月に上演された「風流怪談シリーズ」のPARTⅡということで、伊勢物

          架空の劇団第17回公演「露と答へて~鬼の業平 仏の双六~」の企画書に書いたもの

          寺シリーズ三部作あらすじ

          「寺のショウソウ2001」 あらすじ とある初夏の昼下がり、この日は照妙寺にとってとても重要な日である。と言うより、住職の忠房(ちゅうぼう)にとって憂鬱な日である。と言うのも、まだ未成年の長女しずかが、付き合っている男、竹花を連れてくるからである。 ただ付き合っているだけならまだしも、事もあろうにしずかはその彼と結婚したいというのだ。しかも竹花は寺の檀家で、年は四十四。厄年も終わってしまったようなそんな年齢なのである。 実はその竹花、かつて忠房が教職にいた時代の教え子でもあ

          寺シリーズ三部作あらすじ

          寺3チラシ裏

          お寺シリーズは、「寺で結婚話」を基本コンセプトに、1997年の「寺のショウソウ」から2001年の「仏壇のない家」、2006年の「はなやもめ」にいたる、一連の作品です。 「寺」という、一般的には、人生の終焉を司る象徴の場所に「結婚」という、一見、寺とは縁遠い出来事を展開させ、普遍的な家族の物語を紡ぎ出そうとする試みでした。 幸い、浄土真宗大谷派「専立寺」の皆さんの献身的な協力に支えられ、「お寺シリーズ」は、いずれも好評のうちに幕を閉じました。 今年、架空の劇団が復活15周年の節

          【第19回公演】第14回盛岡市民演劇賞大賞受賞「 風流怪談 露と答へて ~鬼の業平 仏の双六~」劇場版再演

           実は拓さんの作品を再演するのは初めてのことだ。わたしよりずいぶん多作な拓さんは、新作が次々に出てきてしまうので、再演をするヒマがなかった。今回そんなわけで、再演してみることになったのだが、劇場版であることや、初演の寺の雰囲気などを考えると「初演のが良かった」というような声は必ず聞こえてくるだろうと予想している。とまあこんな風に言っとくと、そう言いづらくなるだろうという予防線を張っておく。  役者は初演のキャストを揃えるつもりだったが、諸般の事情で一人入れ替わっている。この、

          【第19回公演】第14回盛岡市民演劇賞大賞受賞「 風流怪談 露と答へて ~鬼の業平 仏の双六~」劇場版再演

          架空の劇団が初の原作モノに挑む!

           その作品は第26回小川未明文学賞受賞作「スケッチブック~供養絵をめぐる物語」。作者のちばるりこさんは、盛岡在住の童話作家で、原作を読んだくらもちが、舞台化を切望し、快諾いただきました。  出版された作品の主人公は、小学6年生という設定でした。かなり大人びているなとの感想を持ち、作者に話を伺うと、読者ターゲットを小学生まで広げる都合で、書き直したとのことでした。そこで、原作の原作、受賞作を読ませてもらうと、主人公の設定は中3となっていて、なるほどそちらの方が納得させられる話だ

          架空の劇団が初の原作モノに挑む!