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ワンファクターモデル経済学:国の生産性は大体時間によって決まることから分かること。国の政策、企業の戦略、格差の原因、社会問題の多くをこのモデルは説明できる!!

生産性は労働時間によって決まるワンファクターモデルだ

国の生産性は労働時間だけで大半が決まるワンファクターモデルだ。つまりこのモデルでいえば働き方改革(労働時間削減)だけが、ほぼ唯一の成長政策になる。

図を見ると縦軸の時間当たり生産性は、横軸の労働時間に対してかなり直線的に決定さていることがわかる。

労働時間が1600時間を下回るあたりで時間当たり生産性と一人当たり生産性は急上昇する。これを1600時間の壁と呼ぶ。これは高いパフォーマンスを出す男性の年間労働時間が年間1300〜1560時間であることに対応している。全体で1600時間を下回ればいいようで、意外にもその国の短時間・長時間労働者率は関係ないようだ。これを今後、日本は登るため生産性が急上昇すると見られる。

生産性のワンファクターモデル。

例外はグローバル企業の影響が大きい、ルクセンブルク、ノルウェー、アイルランドだ。アメリカはアイルランド+日本のような生産性を取っている。このグローバル企業の影響を入れたものが2ファクターモデルだ。アイスランド、韓国、台湾も今は2ファクター的な成長を遂げているようだ。とは言え、ベルギー、オランダ、デンマークもグローバル企業の影響は大きいがワンファクター的だ。

日本への海外からの直接投資は世界的にみても小さいので、日本はワンファクターモデルになる。

なぜ労働時間だけが国の生産性を決めているのだろうか?「労働時間を決める=知の探索を決める=イノベーションを決める=生産性を決める」だから。

国の生産性は、最終的にはその国の技術水準によって決まるとされている。
ようはその国がどれだけイノベーションを起こし、高い技術を保有しているかがその国の豊かさと同じという意味になる。これは経済の教科書で常に語られることだ。

もちろんこれは誰だってそう思うことだろう。しかし本質はここからで、イノベーションを起こすには知の探索が欠かせないとしている。

これは、仕事や職場内で完結する知の深化ではなく、それこそ休暇や趣味などで外から得られる知識を得ることを指している。アメリカのユニコーン企業の創業者の大半は移民であるという記事があったが、これも外部の視点を取り入れる知の探索がいかに必要かを示している。

ということは、その国の人間がどれだけ知の探索ができたかが、やがてどれだけイノベーションできたかの量になり、その国の生産量を決めるのだ。

労働時間を削減することには、知の探索を進める効果がある、つまりイノベーションを起こし、生産性を上げる効果があるのだ。

このため、このモデルによって1ファクターモデルが説明できるだけでなく、2ファクターモデルも説明ができる。しかし移民が比較的多い国でもかなりワンファクターなので、2ファクターモデルになるには、それこそアメリカやアイルランドレベルの国際的な資本交流が必要なようだ。この示唆もかなり大きい。

幸福度的な側面も大きい

国家ごとの幸福度にも1600時間の壁がある。幸福度が高いと生産性は二倍違うとのデータも指摘されており、労働時間が短いことで、幸せになって、幸せだから生産性が上がり、さらに労働時間が短くなって幸せになる、というループが発生するのが1600時間のようだ。

タイムリーダーシップ戦略とも深く関係している!!

タイムリーダーシップ戦略は時間的に加速することで、コストを業界で一番低くするコストリーダーシップ戦略を含んで超える戦略である。資本回転率をひたすら加速することで、そもそも経験量を増やし経験曲線そのものを加速する。スタートアップなどでも、超高速で小さくリリースを繰り返して、経験を増やし、経営効率を高めていくことができる。そして、さらにリリースが早くなり経験量が増える、という加速ループを作り出すのがタイムリーダーシップだ。短縮すればさらに加速するということにも対応している。このタイムリーダーシップが成功した企業としてはAmazonが挙げられる。顧客に届くまでの時間をひたすら短縮することによってAmazonはGAFAになることができた。

こうしたミクロ的な要因が複合しているために1600時間の壁が存在するようだ。

ワンファクターモデルでは労働時間が生産性を決めている。成長戦略において働き方改革以外はわりとどうでもいい!!

このワンファクターモデルが示すのはまさに、労働時間を適切な水準に収めることだけが真の成長戦略であるということ。規制緩和政策、他の成長政策、財政出動、財政均衡などはそれと比べれば、長期的に見て何ら影響のない政策であることを指している。

逆に生産性に大して影響がないのならば言えること

労働時間が生産性を決定するのだから、それ以外に関する政策は最長期的にみて生産性への影響が薄い。

このことが示すメッセージはとても大きい。政府のありかたの本質もついているからだ。

ワンファクターモデルを反映した政策とは?

民主主義国家では労働時間が最適化すると、それに合わせて国民が政府に期待する政策も改善するようだ。そうした背景があるからこそワンファクターモデル的に生産性が決まっていると見られる。

成長政策よりも安定化政策、再分配政策、福祉政策のほうが優先度が上?

どうせ労働時間で生産性が決まり、特に他の政策が関係ないのであれば、国家成長戦略よりも、「物価と失業率を安定させる安定化政策」「富と機会の平等を目指す再分配政策」「人々のクオリティオブライフを高める福祉政策」などの優先度は、考えるよりも成長政策と比べて優先度がずっと高いと言えそうだ。

いわゆる「痛みを伴う改革」は不要(規制緩和微妙論)

痛みを伴う改革は、生産性上昇を目的とするならば不要になる。

例えば規制緩和を行い競争を激しくした上で、金利を引き上げ、最低賃金を一気に引き上げれば、ゾンビ企業などを淘汰できて国家の生産性が上がるといった考えがある。しかし、それが生産性のワンファクターモデルを打ち破れないのであれば、企業倒産や、失業の発生による自殺者が生じるリスクがある分、国家のあり方として相応しいないと言える。

どちらかというと、世界全体を成長させるイノベーションのために成長戦略はあると言えそうだ。そのために適切な規制がある言える。(そもそも適切な量の規制があるのであって、なんでも規制をなくせば生産性が上がるという話ではない)

成長政策はどちらかというと世界のためにやる

国の生産性のワンファクターモデルは、実は国家主導の成長政策不要論にも繋がっている。ようは国は大きな景気後退が起きないように注意しながら、労働時間を下げるよう徹底していけばいずれ生産性は上がるのだ。

しかし、それでも成長戦略が必要だとするならば、それは世界のために行うこと、つまり、ワンファクターモデルの直線そのものを全世界的に持ち上げることにある。

逆に言えばその国のイノベーションは、世界全体を豊かにするが、実はその国そのものを労働時間時間の削減ほどには豊かにはしていない、という結論を得ることもできる。もちろんイノベーションが活発になれば労働時間を削減を加速することができるが、やはりワンファクターモデルを打ち破る力はない。

イノベーションは、国家内の成長を促すのではなく、労働時間を削る速度を速めたり、ワンファクターモデルのこの直線自体を上に持ち上げることで国を成長させる。

安定化政策は自殺者を減らすことを目的と考えれば特に優先度は高い

失業率を下げ、完全雇用に向かう安定化政策の優先度は、国家成長戦略に対して「ワンファクターモデルを想定していない時に比べて」高くなる。

というのも、失業すると人はなぜか統計的に自殺することが確認されているからだ。国家の目的が国民の生命を守ることであるならば、自殺者を最小化させるのは国にとって本来経済成長させるよりも重要な課題である。つまり、失業率を限界まで下げ、さらに失業者には徹底して補助を行う。

このことを目的に多少市場が歪められても、「労働時間によって生産性が決まるのだから」正当化される。

実際アベノミクスは、労働参加率の増加をもたらし一人当たり生産性の低下を引き起こしたが、その結果失業率と企業倒産率共に低下し、年間の自殺者は一万人程度減った

ようは「生産性の一部を税金にして、失業者(一部がどうしても自殺してしまう)を減らす」ことが正統性を持つ。

逆に1997年には、アジア通貨危機による円安を収めるため、通貨レートの安定化などを目的に金融引き締めが起こり、これが失業率の増加につながった。これが自殺者を急増させているが、この場合も、今の日銀と同じように通貨レートより失業率の安定化を優先して良かったと言える。

国民の生命を守ることは通貨レート、物価の安定よりも優先度が高いので、つまり多少の通貨変動、インフレを受け入れてでも、失業率を低く収めることが重要だ。もちろん限度とバランスはあるだろうが、それさえも労働時間を削減したことによる民意改善で正しい政策へと導くことができる。

インフレ過ぎてもデフレでも生産性の成長が停滞するから、安定化政策が必要という考え方は一新されるかも知れない。もちろんインフレだと労働時間を増やそうとする圧が働く可能性があるのでそれには注意が必要だが。

安定化政策と合わせた、女性の社会進出は平均労働時間を減らすため国家成長戦略として特に優先度が高い

新規市場参入者の労働時間は基本的に低いため、労働時間を減らす速度を加速する成長政策として、安定化政策は機能する。女性の社会進出推進なども「平均労働時間の引き下げ(国家の成長と全く同じこと)」のために行うことができる。新たに働き始めた専業主婦の労働時間は短いので、この短さで全体の平均労働時間を落とすことができ、これが生産性を引き上げることにつながる。

基本的に1600時間の壁を登っていない国は「いかに平均労働時間を下げるか?」が重要であり、1600時間の壁を登った後の国では「いかにワンファクターモデルの直線を上に持ち上げるか?」が重要になるのだ。

再分配政策は労働参加率の上昇と労働時間格差を無くすことだ!!

適切な労働時間になることで、適切な量の知の探索と深化のバランスを取ることができ、最大の生産性をもたらす。国家の成長とは労働時間を適切にして、知の探索の総量を引き上げることだ。

労働時間と生産性のワンファクターモデルは、国家ほどははっきりしないにせよ、やはり労働時間が少ないほど生産性が上がる関係が存在する。

ということは、職業ごとの労働時間格差を無くすことで格差を無くすことができる。これこそが、再分配政策の本質だ。そして、先ほど説明したように女性の社会進出を促し労働参加率を引き上げることも格差縮小に貢献する。

ワンファクターモデル的には、その国のGDPは平均労働時間と労働者数で決まるので、労働参加率を引き上げることはGDPの成長をもたらす。

ワンファクターモデルが示す日本への朗報と悲報

ワンファクターモデルが示す日本への朗報は、日本の生産性はいずれドイツや北欧などと同程度になるという点だ。失われた30年はいずれ勝手に解決される。

悲報は逆に言えばワンファクターモデルの直線から抜け出すような成長を遂げることはできないため、1600時間の壁を越えた後の日本のGDPは今よりも成長しなくなるという点だ。1600時間の壁を上った後は、ワンファクターモデルの直線そのものの成長を促すことでしか、国家は成長しない。

だからこそ時代は競争から協業へと移っているともいえる。

結論:生産性は労働時間によって決まるワンファクターモデルだ!!

考察:生産性が労働時間によって決まるワンファクターモデルによって、経済の見方は一変し『ワンファクターモデル経済学』が生まれる!!これは行動経済学、MMT理論のように、今の経済学にとって大きなインパクトを与えるものだ。的確に論文で示せれば、ノーベル経済学賞も取れる!!

ワンファクターモデル経済学派を作り出し、『労働時間によって生産性が決まるのだから、○○については○○』と、新たな視点を与える。このことが示す経済学へのインパクトは計り知れない。

国家レベルのデータ、産業別のデータ、業界別のデータ、個人別のデータは揃っているようなので、これをまとめた上で、ワンファクターモデル経済学という新たなジャンルを作れれば、ワンファクターモデルが真実であるならば(逆にそうでないならばそれを証明する価値もありそうだ)、ノーベル経済学賞を十分取れるだけのインパクトがある。

なかでもMMT理論のように『例え成立していたとしても、政策に実行するには疑問点が多く噴き出す』ものや、行動経済学のように『政策に実行するのにも正しいがナッジのように実は効果が小さかった』ものとは違い、このワンファクターモデル経済学は国家政策のあり方、経済の見方を一変するだけでなく『実行性も高くてかつ、効果も大きいアイデア』を提案することができる。

つまり、言いたいことは『ワンファクターモデル経済学はノーベル賞を取る!!』だから、研究者でない自分に代わって、誰でもいいのでワンファクターモデル経済学について研究してくれ、という話だ。

『ワンファクターモデル経済学』がノーベル経済学賞を取るまでの道筋

そこで、ワンファクターモデル経済学がノーベル賞を取るまでの道筋も考えてみる。

①国家間、産業間、企業間、個人間で、労働時間のデータ比較によって生産性が決定されているアノマリーがあることを示唆する。そしてこれらの関係が互いに組み合わさって、国家間での生産性が決定されることを示唆する。
特に1600時間の壁を登っている国、スロベニア、リトアニア、日本などから1600時間の壁を上る際にどのような産業変化があったかのデータを示す。また、ワンファクターモデルに則っていない国については、具体的な要因を示す。ミクロ経済学でもマクロ経済学でもワンファクターモデルは成立しているようなので、その両者間の関係を示す。

②国家の生産性が労働時間によって決定されることの数理モデルを完成させる。知の探索・深化のバランスや、政策決定に必要な知識の集積と、労働時間の関係を導き出し、労働時間が最適であることが最大のパフォーマンスを発揮することを示唆する。民主主義国家において労働時間が最適化されることが、政策決定の最適化においても重要なコアファクターであることを示す。

③生産性が労働時間によって決定されるワンファクターモデルであることを示した後に、生産性が労働時間で決定されるため、その結果言えることについてまとめる。労働時間削減が国家成長戦略のメインになるだけでなく、1600時間の壁を越えた国家と、越えていない国家で取るべき政策が異なること、その他すでに指摘されている「生産性の収束性」と合わせて議論を行う。

④富の再分配政策において、労働時間の適切化が格差縮小に貢献することを数理モデルを用いつつ説明する。労働時間格差が格差を生み出しており、日本であれば、正規労働者と非正規雇用者の格差を女性の社会進出が打ち消す形で、格差(ジニ係数)が均衡していることを示す。

とはいえ、ワンファクターモデル経済学は行動経済学あってこその考えだと思うので、これを背景に、さらに積み上げていく形になりそうだ。

というわけで。あとがき

経済学についてもワンファクターモデル経済学として、究極型パラダイムやタイムリーダーシップ、Being経営で示唆してきたように、かなり大きなものを考え付けたとは思う。あとは、これらのアイデアをまとめて書籍にする必要があると思う。いずれ総まとめにして、学問別にどう示唆できるか細かく話していく必要がある。

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