ヴァージニア・ウルフ「青と緑」など
二階堂奥歯氏という編集者を知っているだろうか。
「八本足の蝶」という、彼女の日記を通して、筆者は知った。
若くして自ら死を選ばれたが、極めて博識な方だったのだろう、レヴィナスからファンタジー小説まで、私はこの一冊に幅広い知識を知らせてもらった。
そのなかに、ヴァージニア・ウルフ氏の「青と緑」から引用された下りがあって、それがとても綺麗だった。
そして、その先にどんなめくるめく物語が広がっているのだろうと興味を持ち、筆者の手元には今「青と緑」がある。
しかし、この小説は2ページだけだった。
その1ページ分、つまり「緑」を奥歯氏は引用していたのだ。
ので、筆者は「青」を引用する。
(だからこれで読者さんが「八本足の蝶」を読めば、ひとまずヴァージニア・ウルフ「青と緑」の全編を読んだことになる)
「青」
肋材とは船における肋骨の位置にあたる部位の名称(らしい)。
糸沙参とはキキョウ科ホタルブクロ族の、青紫の花。
被衣とは、(おそらく)ローブ。
ほとんど物語性を持たない、散文詩に近い(そして極めて感覚的な閃きに満ちた)鮮やかな文章だ。
なお、役者の西崎憲氏は歌人兼作家。
筆者は「未知の鳥類がやってくるまで」収録「行列」―マジックリアリズムとも幻想小説とも呼べる不思議な作品だった―を読んだきりだが、中身は他にも「東京の鈴木」や「ことわざ戦争」など、ユニークなタイトルが並ぶ。もしよければ、合わせて読んで、ぜひ感想でも読ませてほしい。
最後、ウルフからもう一つ引用する。
「月曜日あるいは火曜日」末文から。
世界の細部に目が開かれていくような、そんな文章だ。