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VPPとは何か(3)「電力の市場化」
前回の記事はこちら。
前回はVPPの基本をやりました。ここからさらにVPPの仕組みを深掘りして、電力の市場化について解説していきます。
ちょっと深堀り
さて前回は、特定卸供給と調整力についてはみてきましたが、電力には、実は他にも2つの要素があります。これらは市場となっていく可能性があります。
つまり、全部でざっくり4つの分類があるわけです。
調整力公募(調整市場)
先に調整力公募を説明します。これは前回のVPPの基本に出てきた、最初のパターンが含まれます。
インバランスにおいて、実際には送配電事業者が、発電所(供給側)と小売電気事業者(需要側)に需給の計画を提出させます。その後送配電事業者が実績を収集し、計画との差分を見ます。この差分がインバランスです。インバランスがあった場合には発電所(供給側)と小売電気事業者(需要側)の双方にその調整金を要請します。この金額設定が現在は送配電事業者が独自に設定しているのです。これを市場化すると言う構想なので(調整市場)となっています。
特定卸供給市場
元に戻って一番上の特定卸供給市場は、前回説明したVPPの基本の3パターンのうち、後ろ2つのパターンのことです。実際に使用する電気の実績について市場で取引を行うものとなり、前回の通り、アグリゲーターがその調整を担います。
容量市場
容量市場はより大きなエリアで見た場合の市場です。特定卸供給市場が「実績」に基づくのに対して、容量市場は「将来」にフォーカスしています。
日本全体で充分な供給力を確保するための取組で、電源等の容量に価値を認め、容量を提供した事業者に対価を支払うことにより、投資を促進させ、経済的な供給力確保を目指すものです。
「うちの発電所は○○メガワット発電できるんだ」という発電所そのものの規模を売りにするということです。
具体的に見ていきます。
まず、国(経済産業省)のもとで、すべての電力事業者が加入する機関とし電力広域的運営推進機関というものがあります。ここが日本全国の電力のバランスをまとめる役割をします。
電力広域的運営推進機関は上記の様に、日本全国の需給のバランスをとります。
次に、容量市場のプレイヤーですが、買うのは小売電気事業者です。売るのは発電所です。仲介を電力広域的運営推進機関が担います。
まず小売電気事業者は4年前に必要な全体能力を算定します。今年から運用が開始されていますので、今年20年の時点では24年分の必要分を計算します。
このとき、その必要な電力をいくらで買いたいかを合わせて決めます。以下の様な状態です。
発電所の側も、どれくらいの能力が供給できるか?ということと、その供給量をいくらで売りたいかを決めます。
言うなれば、電力広域的運営推進機関はオークション会場です。それぞれが数字を持ち寄って、売買を成立させます。
さて、仕組み自体はそんなに複雑ではないので理解ができたと思います。しかし、なぜ4年後の容量をオークションする必要があるのでしょうか?それは、発電所への投資に関わるためです。
一般的に、大規模な発電所を作ろうと思うと、10年単位の計画になります。大きな発電所は建設費用に莫大なお金もかかりますし、資金が回収できるかの計算もかなり慎重に行わないといけません。
一方で、将来的に電力が余るのか?足りなくなるのかは変動していきますし、エリアごとで増えたり減ったりもあります(先ほどの電力広域的運営推進機関の役割で説明した様なイメージです)。
発電所を増やすには10年単位で必要⇄需給のバランスは細かく変動が起こり得る・・・こうしたアンバランスなギャップを埋めるため、4年先でいったん区切るような仕組みを導入したのです。
電気小売事業者が4年後の必要分を計算するということは、発電所側からすれば、4年後にどれくらい資金を回収できるか、儲けが見込めそうかの目処がたちます。
そうなれば、発電側がは積極的に発電所へ投資ができます。。電気小売事業者も将来電力が不足する心配を減らすことができる様になります。加えて供給側のプレイヤーが増えれば、競争が生まれますので、電力料金を下げることも期待できます。
ここでもアグリゲーターが一役買います。それは小さい小規模電源を束ねる役割です。たとえば、自宅のソーラーパネル、これも電力を供給できる可能性はもちろんありますが、大規模電源に比べてあまりにも小さいため、こうしたオークションには直接参加できません。
しかし、アグリゲーターがこうした小規模電源を一纏めにすることで、ある程度の規模の電源として、オークションに参加することができる様になります。
非化石価値取引市場
非化石価値取引市場については、エネルギー供給構造高度化法という法律に基づく内容となります。電力の量ではなく、発電方法に価値を見出すものです。具体的に言えば、化石燃料を使わない発電方式(≒火力発電を使わない発電方式)に価値を与えます。つまり再生エネギーで発電したものには、発電した電力そのものの価値以外に、発電方法が環境に優しいことを「価値」として、市場で売買することになります。
詳細は、今回は割愛します。
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ここまで、VPPの基本的な仕組みや市場の構成を説明しました。
次回からは、こうした環境にあるVPPについて、さらに活性化させ浸透させていくためにどのような施作が今後取られていくのかについて説明します。
ということでまた。
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