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[卵]の意味,時代を辿る -中西夏之1962~2011@SCAI PIRAMIDE
7月某日、六本木ピラミデビル。
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中西夏之:1962〜2011(6/22-9/14)@SCAI PIRAMIDE
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作品を観て、力強さに惹きこまれた。そして今頃だけど、美術界の重鎮であった作家だと知る。
「コンパクト・オブジェ」
美しい作品の連続のなかに、既視感を覚えるそれはあった。
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観たことがある。思い出した。国立近代美術館でのことだ。
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記憶のなかのそれは、たまたま作風の似た作家さんのものだったのか、それとも中西さんの作なのか。
検索すると、作品名が出てきた。
作品解説
ポリエステル樹脂の卵の中に、いろいろなモノが入っています。この作品は、街に持ち出し、日常をかく乱するパフォーマンスに使用する目的で制作されました。MOMATでは、中西夏之の砂を盛り上げた初期作品と、80年代の絵画作品をすでに所蔵していました。しかし、初期を代表する「コンパクト・オブジェ」は欠けていました。これを補うため2013(平成25)年に購入したのが、この作品です。おまけに調査の中で、この作品が、当館で開催した「彫刻の新世代」展(1963年)に出品されていたことがわかったのです。いわば、きっちり50年ぶりにコレクションとしてMOMATに帰って来た作品です。
日常かく乱のパフォーマンス? 気になって、さらに検索を進めた。
ハイレッド・センター
高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之の3名によって1963年に結成された集団。名前の由来は、3人の苗字の頭文字(高=ハイ、赤=レッド、中=センター)であるが、3人以外にも和泉達、刀根康尚、小杉武久らが活動に参加することもあった。「ハイレッド・センター」という名称が初めて公にされたのは63年に行われた「第5次ミキサー計画」においてであったが、その前年に行われた「山手線事件」というハプニングも彼らの活動の一部に含まれている。
さすがに、赤瀬川原平の名前は知っている。
時代感がつかめてきたところで、説明のなかの「山手線事件」という単語も、そういえばどこか記憶にあった。
「山手線事件」(1962年)
「山手線事件」とは、高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之らによる鉄道を舞台とした日本初のパフォーマンス美術です。
電車の中で顔を白く塗った人物が卵型のオブジェを懐中電灯で照らす、ホームに長いひもを伸ばすなど、白塗りの彼らは山手線の車内や駅構内でさまざまな行動をとり、周囲の反応をアートとして示しました。
そして、美術手帳をチェックすれば、
62年、高松次郎、川仁宏らと《山手線事件》と称したパフォーマンスを決行する。63年の「第15回読売アンデパンダン展」に、キャンバスから出た紙紐にアルミ製の洗濯バサミを大量につける《洗濯バサミは撹拌行動を主張する》を出品、代表作となる。
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抱いていたイメージを修正
そうだったのか……。思わず笑ってしまった。理由は2つあって、そのパフォーマンスの場を想像してしまったことと、あまりにもかけ離れたわたしの解釈だ。
国立近代美術館で鑑賞したとき、この「卵型のオブジェ」はとても印象的だった。そしてわたしは、時間を止めて永遠に保管しておこうとする試み、つまりタイムカプセル的な、ちょっと感傷的な作品であると捉えた。それはとても静的なイメージだ。
まさか、「電車の中で顔を白く塗った人物が卵型のオブジェを懐中電灯で照らす」という、動的なパフォーマンスに用いられていたとは。
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そういう目で見れば、なぜか卵の殻や昆虫!までもが樹脂で固められ、卵を構成するという理由もわかってくる気もする。「えっ」という驚きの上書き、ユーモア?
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アートは時代を超える。そして鑑賞者の受け取りありき、という捉え方もあるかもしれない。とはいえ、なんという捉え方の違い。そして知ってしまった後は、作品そのものも異なって見えることの興味深さ。
「連作の作家」
展覧会案内のページに、光田ゆり(多摩美術大学教授・アートアーカイヴセンター所長)氏による「中西夏之 画家への問いと画家からの問い」というタイトルの文章があった。
それによれば、中西夏之は連作のかたちで制作・発表してきた作家であり、年代順に編集した1冊の画集は自分の絵には適合しないだろう、分冊のかたちでまとめるほうがよい、と作家自らが語っていた。そうした意味で、今回のような展覧会は、画家の生前にはおそらく実現されなかったものであろうと筆者は記す。
たしかに、さきほどの国立近代美術館のほかの収蔵作品の作風も、まったく異なるものだ。
同じシリーズであると思われるこの4作が連なるだけでも、大変なパワーがある。
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まるでグループ展のような
今回の展示は、未発表作品を含む約10点だ。
されど10点。先に述べた特徴のある作家の、これはダイジェスト的な個展。
それぞれの作品の完成度が高い、異なるカテゴリーの作品が並べば、同じ作家の作でありながら、グループ展であるような興味深さがあった。
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1作品ごとの、重量をしっかりと受け止めながら。
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