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[AWT]03アートウィーク東京(11/7-10)最終日 ルートCのバスで目黒,麻布を巡る

 アートウィーク東京、11/7-11/10。


 初日の11/7と、

 1日おいて、11/9にも参加した。

 さて、いよいよ最終日。巡回バスに助けられて、10ギャラリーを駆け足で回ることができた。

 本稿はそれぞれのギャラリーの概要、展示の簡単な紹介を。



ルートD→C→Dを巡る

 最終日も、出発は東京オペラシティ。始発10時のバスに乗ることができた。

 新宿、原宿、六本木を巡るルートDから、六本木界隈で麻布、目黒から天王洲エリアを運行するルートCに乗り換えて一周し、再びDルートの最終便で東京オペラシティに戻ってきた。体感的には、あっという間ではあったけど、実は8時間も都内を巡ったことになる。


日動コンテンポラリーアート(D10)

 Dルートで回りそこねていた、日動コンテンポラリーアートから。

 国立新美術館の最寄りなのだけど、今回は、未知のギャラリーとの出逢いを優先したいので、美術館系は割愛した。

 美術館前の坂を下る。「マンションのモデルルームのような入口で……迷われる方が多くて」が、バス発着所のスタッフさんの弁。

 たしかに。意外な場所にあり、「モデルルーム」という表現にも、なるほどと思った。

 訪ねたのは大正解。

リム・ソクチャンリナ「Letter to Water (Tanle Sap Lake)」

リム・ソクチャンリナ(1987年カンボジア・プレイベン生まれ、プノンペン在住)は、写真、映像、パフォーマンスなど多様な手法を用いて、現代のカンボジアにおける政治や経済、環境、文化的変化やその問題に焦点を当てた作品を発表している。巨大なグローバル資本と様々な政治的思惑によって急速に変化する社会や風景を日々記録し、これまでの地域のコミュニティや文化、自然が失われていく未来に警鐘を鳴らすのである。今回は個展にあわせて新作を発表する予定。

同上

 手桶の中に、現地の風景や人々の営みのフィルムが投影される。水面と桶の淵に、美しく映りこむのがなんとも幻想的だ。

 今までの展覧会と同様、特に印象に残ったものについては、後日個別で記事をアップしていくつもりだ。

Eルートを経てCルートに乗り換え

 ホテルオークラ正面の、大倉集古館が重要なイベント会場になっていて(残念ながら時間の都合で、外観のみ)、そこは異なる路線の乗り換え地点でもある。

 D10からEルートへの乗り換えは、歩いたほうが早そうだったので、六本木ヒルズ前のE4バス停まで歩き、乗り換え地点まで。

 スタッフさんの被る白い帽子は、車中からも道からも、とても目立って、恰好の目印になる。そしてとても親切。

 Eを経由して、無事にCに乗り換えた。C1の大倉集古館をスタート。


PGI(C2)

 こんなふうに、東京タワーが間近。

 歩道橋をのぼって、下りて、

 ギャラリーへ。

今道子作品展「Recent Works(仮)」

今道子は、自身の想像の中にある非現実の現実を、視覚芸術である写真を用いて表現する。1980年代半ばより作家活動を始め、野菜や魚などの食材、また花や昆虫を素材としてオブジェを制作し、それらを撮影して印画紙に焼き付けた作品で知られる。近年は幾度となく訪れているメキシコのモチーフを取り入れ、同地の宗教観や自身の死生観を融合させた作品を制作。よりリアルに生と死や輪廻転生をも連想させるオブジェが使われている。民話や伝説の中で生かされる想像上の動物が教訓の寓意であるように、今作品のオブジェは彼女の死生観、ひいては祈りの寓意でもあるのだろう。今回の個展では、新作約20点を発表予定。

同上

 今道子作品は、モノクロの画面に浮かび上がる魚の目と鱗の光沢に、ずっとドキドキしてきた。

 コラージュは初めて観た。最近の取り組みだという。

 作品に見入って、浸って……をしていると、体力も脳の容量も保てなくなりそうなので、会期中に再訪しようと決めて、次へ。


タケニナガワ(C3)

 麻布十番は、ふしぎな街だ。超都心なのに、この、のどかな風景。

 ギャラリーも、意外な場所にある。

青木陵子

青木陵子はドローイングや手工芸品などを用いて、世界を日常と地続きのものとして知ろうとするような作品をつくり続けている。そこでは動植物や日常の断片のかたち、さらには幾何学模様などがイメージの連鎖として描かれ、布や紙、その他の素材で作られたオブジェと組み合わせられる。彼女の作品は、イメージがどのように私たちの知覚を形成し、反映し、変化させるのかを探求する、コンセプチュアルとも言えるアプローチによって発展を続けてきた。今展では、Take Ninagawaの空間をひとつの「箱」ととらえて、サイト・スペシフィックなインスタレーション作品を発表する予定である。青木は1973年兵庫県生まれ、京都在住。1999年に京都市立芸術大学大学院ビジュアルデザイン科を修了している。

同上


カイカイキキギャラリー(C5)

 AWTには、海外、それも英語圏の方がかなり多く参加している印象だった。そして、村上隆人気もあってか、

 カイカイキキギャラリーには、多くの外国人もいた。

AYA TAKANO
銀河の神話よりも長く alternative future

AYA TAKANOによるカイカイキキでは10年ぶりの個展。TAKANOは画家であり、漫画家、SF愛好家、自然保護活動家。幼少期から科学やSF、超自然的な世界に魅了され、90年代からはマンガやSF的世界観を背景にした独特のエロティシズムが漂う作品を発表してきた。3.11以降は地方や自然に対する理解を深め、それまで都市や夜景、月明かりが描かれた画面に、豊かな自然や昼の光が頻繁に登場するようになる。環境への配慮から画材もアクリル絵具から油絵具に変更。人類の根源的な世界を、より神話的な美しさとスケールで描いている。本展タイトルは歌人・小説家の雪舟えまの作中のフレーズに、展覧会のテーマ「alternative future」を組み合わせたものである。「有機的で、まるで古代に帰るような新しい未来のイメージをつくりたい」と語る彼女の新作油絵が円環状に展示され、自身がプランニングから手がけたジオラマ模型も登場。過去・現在・未来、そしてさまざまな文化が共鳴して紡ぐ神話的な世界観を体感できる。

同上


MEM(C6)

 場所は恵比寿……の、一度ではなかなかたどり着けなさそうな場所。

 でも、長い長い階段を上って訪ねて、正解だった。

「モノ」と「コト」と「イメージ」をめぐって

「もの」と「こと」は、日本語での思考をかたちづくる重要な概念と言われる。美術作品も、このふたつの言葉を巡ってつくられると言えるだろう。「もの」は「空間のある部分を占め、人間の感覚でとらえることのできる形をもつ対象」、「こと」は「思考・意識の対象となるものや、現象・行為・性質など抽象的なものをさす語」と国語辞書にはある。それぞれに「物」「者」、「事」「言」と漢字を当て嵌めることで、より深い思索の森が広がっていく。そこへさらに「イメージ」という言葉を加え、立ち現れてくる新たな風景がある。展示作家の一人である大西茂(1928–1994)は数学者としての研究と同時に、実験的な写真作品や墨による抽象画を制作した、異色の表現者。瀧口修造やミシェル・タピエら評論家とも交流しながら独自の実践を続けた。本展では「モノ」「コト」「イメージ」をめぐる表現を、大西を含む複数のギャラリーアーティストの作品を通して紹介する。

同上

 あの作家のこの作品が、という出逢い。例えば、三島喜美代。


ポエティック・スケープ(C8)

 バス路線は、目黒方面へ。

 おしゃれなお店が並ぶ通りの、突き当りには、

 居心地のよさそうな、このギャラリー。

柴田敏雄

POETIC SCAPEでは2度目の柴田敏雄展。ほぼ新作のカラー作品約20点を発表する。ベルギー留学から帰国後、夜景の写真からスタートした柴田は、模索のなかで日中にダム、擁壁、橋などの構造物を撮影するようになる。これらを発表した1986年の個展名「Geo-Metry-Graphy」(ツァイト・フォトサロン、東京)は、Geography(地理)とGeometry(幾何学)にPhotography(写真)を掛け合わせた造語である。今回、出展作に幾何学的な構図を持つものが多いことから柴田は同展を思い出し、次のように語る。

「画面上に骨格、基礎となる構造を持たせることを常に念頭に置き、中立的な視点で形や対象を見る事を心がけて風景(Landscape)の撮影を始めました。それは、ある景色の紹介や説明、またVista Point*からの写真ではなく、目の前の任意の風景からあるSceneを自分のやり方で切り出す作業でした。モノクロ写真からカラー写真へと手法が変わった後も、この基本的な考え方はずっと続いています。」

*Vista Point:前もって用意された良い景色をみるための場所

同上


リーサヤ(C9)

 不思議な空間だった。

 地域のイベント?の賑わいを見ながら、教えていただいた「うなぎ屋さんの角」を曲がる。

 まさに、街角のギャラリーだ。


田中秀介「有様のほぐしくらべ」

暮らしのなかで日々出くわす驚きをもとに、絵画を軸とした制作を行う田中秀介の個展。今回は、星空、祖母、アンテナに丸太など、多種多様なモチーフを描いた新作14点を出展予定。雑多ともいえる絵画群の展示を通じて、現実の豊かさを体現しようとする。田中は1986年、和歌山県生まれ。2009年に大阪芸術大学美術学科を卒業後、現在は大阪を拠点に活動する。

同上


ミサシンギャラリー(C13)

 バスは天王洲を経由。天王洲アイランドに素敵なギャラリーが数多くあることは、もちろん知っているけれど……

 でも、降りてしまったら、そのままギャラリーの中を彷徨って、最終日のアート鑑賞は終了してしまう。

 また来るから、と景色だけを眺めるにとどめた。

 陽が傾く前の、最もコントラストが激しい時間帯。

 とても急な坂道で、距離も結構あるけど大丈夫ですか? というスタッフの方に「大丈夫」と答えて、薬園坂をのぼっていく。

 大使館のある通りで警備員の数も多かったので、撮影は控えた。

 坂の上のほうから振り向けば、こんな感じ。

 そこから横の道に入って坂を下った途中に、

 そのギャラリーはあった。

崔在銀

生命の循環や時間をテーマに制作を続けるアーティスト、崔在銀(チェ・ジェウン)の個展。2023年に銀座メゾンエルメスで発表した《White Death》から派生した写真作品の発表を予定している。《White Death》は沖縄の白化した死珊瑚を用いて、緊迫した環境問題に静かに迫るインスタレーション作品。本展では、こうした白い珊瑚を撮影した新作の写真作品を出品する。崔は1953年、ソウル生まれ。1972年の来日を機に生け花に魅せられ、草月流の三代目家元・勅使河原宏(てしがはら・ひろし)に師事してその空間概念や宇宙観を学び、80年代から自身の作品を発表。1995年には第46回ヴェネチア・ビエンナーレに日本代表の1人として参加するなど、国際的に活動を続けている。

同上

 海の底のような空間に、ひとり漂った。


ペース(C14)

 Cコース最後の場所は、麻布台ヒルズ。周囲の景色が突然、華やかになった。

アーリーン‧シェケット

アーリーン‧シェケットは1951年、ニューヨークに⽣まれ、現在はニューヨーク州北部の郊外で制作している。陶芸のジャンルに収まらないハイブリッドな彫刻で広く知られるこの作家は、⾦属、粘⼟、⽊の混在による建築的かつ有機的かつメカニカルな、特徴あるフォルムを⽣み出してきた。⼀⾒異質に⾒える形状や⾊彩、素材が統合された彼⼥の作品は、抽象的でありながら、⼼理的および感情的な要素を併せ持ち、鑑賞者の熟考を誘っているかのようだ。⽇本での初個展には、ここ数年の作品と新作が並び、静寂さと動きの両端を揺れ動く作⾵のなかに、この作家が⻑く惹かれてきた⽇本美術の静謐さと現代⽇本の物質⽂化という⼆重性が⾒て取れる。傾いたり、捩れたり、曲がったり、溶け出すようにも⾒えるその彫刻は、素材と形態による表現の可能性を掘り下げつつ、私たちがその本来的な⽭盾を感じながらそこに座ったり、周囲を歩き回ったりすることを促している。

同上

 2フロアを使った、大規模な展示。スタッフの方が、どの来訪者にも非常に丁寧に感じよく説明をしていた姿も印象的だった。


コースを逆に辿ってDコースへ

 雨が降ったりやんだり、という天候もあってか、陽はあっという間に落ちた。これ以上別のコースに進むことはできなさそうだと悟り、Eコース経由でDコースへ、戻り始めることにした。

 さすがに車内も、少し混みあってくる。


ケンナカハシ(D4)

 難しいかな、と思いつつ、最後になんとか回ることができたのが、新宿御苑近くのこのギャラリー。

 ゲイバーなどの飲食店が入った、エレベーターのない、なかなか足元が不安げな階段をあがった、5階にある。

原田裕規

原田裕規は、とるにたらない視覚文化をモチーフに、テクノロジーやパフォーマンスを用いて作品を制作してきた。今展では、原田にとって初めての取り組みとなる平面作品のシリーズ「ドリームスケープ」が発表される。同シリーズは、2020年頃より世界的に流行しているデジタル風景表現の潮流「ドリームスケープ」に着想を得たもの。非現実的な静寂感、安心感、無菌室感などに象徴されるドリームスケープの表現を、原田は「現代の世界情勢や地球環境を反映した風景画」であるとしている。こうした視点に立ってつくられた原田のドリームスケープ・シリーズより、本展ではハワイ・マウイ島のラハイナが題材になった《ホーム・ポート》と、原田の出身地・岩国の山々が描かれた新作の《残照》が発表される。

同上

 美しいのは当然として、多くのものが籠っている印象を受けて、思わず自分的に紐解きたくなったのだけど、

 「東京オペラシティまで戻って、自分的にイベントを終了させる」というテーマを優先することにした。

 ふしぎな建物といい、昼間はまた異なる印象だろうから、後日訪ねたい。


出発地へ。まとめは次回に

 ギャラリーを後にして、

 バスに乗り込んで、出発地でもあった、東京オペラシティへ。

 書き込みをしては消し、また書いて……のパンフは、折り目もついて、いい感じの記念の品となった。

 初回にして、「参加した!」という充実感でいっぱいになったけれど、「こうしておけばよかった」という反省点等もある。

 次回は、それについて書いて、まとめとしたい。



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