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我が子に送るギフト

名前が親から子供に送る最初のプレゼントだとしたら、それが子供の生きる枷になってはならない。そう思いながら名付けた娘の名前は、親の願いが見えない名前になった。どうかあの子がその名前に込められた意味や意図を知った時、その思いを受け入れてくれるようにと願っている。

5年前に我が子は生まれた。エコー検査で女の子だろうと言われたまま、その子は女の子の姿をしていた。スピード安産で生まれたその子は、産声を一度あげたあと目を見開いてまじまじと外の世界を見ていた。生まれてすぐの分娩室での写真には、目を見開いて私を見るその子のキョトンとした顔が残っている。

子供が生まれたらどんな名前にしよう?

もちろん、妊娠中にずっと考えていたことだ。女の子だと聞いていたから、可愛い名前がいいだろうか。2人目ができた時には、対になるようにつけたいな、どんな名前だと可愛いかな。……

人並みに頭を悩ませたと思う。遥ちゃんと彼方ちゃんとか可愛いんじゃないかな。季節の花の名前からもらうのもいいかな。そんなことを考えながら、ふっと思い出したのは私の友達のことだった。


その友人と出会ったのは中学生の頃だった。その子は元気が良くて、小柄で、性格もサバサバしていて、男女問わず仲良くできて、女の子にとてもモテた。

武道系の部活に入っていて、髪も短く刈り上げにしていた。道着姿から見える黒いシャツがなんともかっこよかった。そして、部活の休憩中に目が合うと子犬のように走り寄ってきて「お前も入れよ楽しいぞー!」と誘ってくれるような、そんな絵に書いた「カッコかわいい子」だった。

成人して久しぶりに会った時、『彼女』は男の子になっていた。私は彼女が彼になったことをすぐには気づかず(…そもそも中学の時から男の子のような姿だったから、髭の跡があるとかまったく気がつかなかったのだ)後から夫に「今の男だれ?」と不機嫌に言われて初めて気がついたのだ。

その後、友人が中学生の時からずっとセーラー服に違和感を持っていたことを知った。そして、数年前に性別を適合させたことを知った。(夫にはその経緯を説明してそんな不機嫌になる対象ではないよと弁明しなければならなかったのは余談だが)

そう。私は我が子の名前を考える時、その彼のことを思い出したのだった。

私は彼女が彼になったことを知ったあと、これから彼をどう呼んだほうがいいのか考えた。私が知っている彼の名前は『彼女』だった頃のもので、そして彼女の名前は女性のそれだった。いつからかは知らないが、今彼は男性の名前を名乗っていて、でも彼は『お前は古い友達だから昔の方が馴染むよ!』と言ってくれて、私もそれに甘んじて古くからの名前で呼んでいる。でも、もし本当は嫌だったら申し訳ないと、心の片隅で思いながら。

『中性的な名前にしよう』。

着地点はそこになった。

それなら、女の子ですねと言われて生まれてきた赤子の股間にモノがついていても大丈夫。そして、女の子の体に男の子の心が育っても、名前を自分で付け替えることなく、彼みたいに「親からもらった名前を捨てた」と心に病むことなく、身分証と通り名が違うという不便もなく過ごせる。

もしかしたら、親の心配などよそに娘はそのまま女の子として大きくなるかもしれないし、もっと女の子らしい名前が良かったと言われる日もあるのかもしれない。

それでも、どちらでも良い名前っていう着地点が私からのギフトだ。あなたがどう育とうと、変わらず愛していくから気にするな、というメッセージだ。

男の子でも、女の子でも。あなたの中に男の子が育とうと、変わらず愛す覚悟があるよとつけたんだと、いつか名前の由来を聞かれたら答えたいと思っている。


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りくとん@PSWなママライター
駆け出しライター「りくとん」です。諸事情で居住エリアでのPSW活動ができなくなってしまいましたが、オンラインPSWとして頑張りたいと思います。皆様のサポート、どうぞよろしくお願いします!

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