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エッセイ

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今までの日々や、ささやかな僕の奮闘を書いていければと思います。
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#クラスメイト

「ホームルーム」

「ホームルーム」

 中学生の頃、クラスメイトに増田さんという生徒がいた。
 ショートカットで大きな眼鏡をかけた増田さんは、授業中にいつも左手で眼鏡を抑え 、眉間に皺を寄せながら黒板の文字をノートに書き写していた。

「眼鏡の度数がぜんぜん合ってないんやな」

 それが増田さんに対して僕が初めて抱いた印象である。
 同じクラスになったのは一年生の時だけで、大して仲良くもなく喋ることもあまりなかったが、そんな増田さんを

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「星に願いを」

「星に願いを」

 大阪府枚方市は七夕伝説ゆかりの街として知られている。
 枚方市駅のすぐ近くを流れる一級河川の天野川は、天上の天の川になぞらえ平安歌人によって七夕にちなんだ数多くの和歌が詠まれた。
 現代でも七夕イベントとして枚方七夕まつりが毎年開催され、七月七日には街中が色とりどり短冊と地元民で埋め尽くされる。

 当時、僕は枚方市に隣接する寝屋川市に住んでいたので枚方の七夕まつりを目にすることがあり、その日も

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「金色の髪」

「金色の髪」

 中学三年のクラス替えで、最初に席が隣になった女の子は金髪だった。
 校則が厳しく男子の髪染めや整髪料は禁止されていて、女子に至ってはそれにプラスして肩にかかる髪は黒のヘアゴムで縛らなければいけなかった。
 そんな厳しい校則の中で、彼女だけが何故か完全な金髪だった。校則をものともしない彼女の気合いとその風貌に恐れおののいて、他の生徒達はその姿を遠巻きに眺めるだけだったが、僕は三年になり最初に指定さ

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「席替え」

「席替え」

  席替えの日は憂鬱だった。
  学生にとって席替えは一大イベントであり、好きなあの子の隣になりたいとか、前から二列目までの席には絶対なりたくないとか、様々な感情が渦巻いているのだが、皆それを悟られまいと振る舞い教室は異様な静寂に包まれる。中には自分が望む席に座る為に不正を働き、学級委員長を懐柔する者まで現れるのだ。

 もちろん僕だって好きな子の隣に座りたかったし、居眠りしていても見つかりにくい

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