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27歳で藝大に再入学してみて

私は2022年3月に東京藝術大学に27歳で再入学した。

それまでは地元の大学で哲学を学んだ後、地方公務員(図書館司書)をしていた。
この記事では、入学から1年近く経った今、入学前に気になっていたことなどをまとめている。

去年の今頃、「再入学 美大」「再入学 退職」などでググっては、自分と同じような境遇の人たちがいることに勇気をもらっていた。
この記事が、誰かにとってのそのような位置付けになれば嬉しい。

過去の自分に語りかけるつもりでこの記事を書こうと思う。

入学してよかったか

結論から言うと、入学してよかった。

入学前は得られなかったであろう設備・人脈・知識に恵まれ、制作に行き詰まっても相談できる人が身近にいることは大きい。

東京に住み始めて、美術館やギャラリーといった、アート鑑賞との距離も本当に身近になった。

田舎ではアートというぽたぽた滴る湧水を懸命に探して舐めていたようなものだったが、入学後は豊潤な濁流の中に身を投じているような感じがする。

同級生は歳下だが友達はできたか

これも、結論から言えばできた。

最初のうちは、年上ということもあり

「べ、別に友達作りが目的で藝大入ったわけじゃないし。1人でもアート作れるし…」

と思っていたものの、お互いの作品を講評で見たりしているうちにだんだん仲良くなり、ご飯を食べたり遊びに行ったりする友達ができた。

藝大は多浪が多く在籍するので、年齢の違いを意識することは他大学に比べ少ないのではないかと思う。

私の入った科の同期は、現役生は半分くらいだった。
同期では私が1番年上ではあるが、他の科には私より年上の人もいた。

また、藝大は科ごとの人数が少ないので、一人一人にフォーカスが向きやすく、全員と関わりを持ちやすいように思う。

最初に入った大学は学科の人数が100人以上いたこともあり、半分以上の人とは会話したことがなかったが、
今いる学科は定員が25名なので、全員と会話をしている。(というか最初に全員と自己紹介し合う授業があった)

作家としての将来性を見込まれて入学してきた人たちなので、興味深い人・面白い人も多い。
というか全員面白い。
歳下とか関係なく尊敬できる人が多い。

地元ではずっと孤独に制作をしていたので、同じ志を持つ人たちと同じ教室で学べることは嬉しい。

お互いに影響を与え合い、成長していることを実感できる。

仕事と受験の兼ね合いについて


最初に受験した年の10月頃の面談で、職場の上司には受験の報告と退職の相談をした。

生活費と学費を稼ぐ必要があったので、合否が分かるギリギリまで仕事を続けさせてもらい、合格が分かってから仕事を辞めることができた。

予備校には地元からオンラインで通い、
夏期講習、冬季講習、入試直前講習のみ、休みをずらしたり年休を取ったりしながら現地で受講した。

入試用にポートフォリオも制作しなければいけなかったため、退職前にはほとんど年休は残っていない状態だった。

たくさん休みを取ったことで、職場の人には少なからず迷惑をかけてしまった。
申し訳なく感じるとともに、とても感謝している。

お金の問題

ここ一年で使ったお金はだいたい150万円ぐらいだろうか(どんぶり勘定なのでこの数字を当てにしないでほしい)。

公務員時代、受験を決意してからはほぼ無駄遣いせずに貯金していたので、今もその頃の貯金で生活している。

藝大は年間の学費が60万円ほどだが、私大は200万ほどだそうなので、藝大以外は通えなかったと思う。

両親からは贈与税に引っかからない程度にお金をもらった。本当にありがたい。

そこに至るまでには壮絶な親子喧嘩・絶縁・和解があったのだが、その話はまたいずれ…。

目減りしていく貯金残高が怖いので、もちろんバイトをしている。制作時間の確保のために週2回ほど。

卒業後のお金のことも、心配ではある。

しかし、とある藝大卒業生は「卒業後もなんだかんだみんな生きてる」と言っていた。

卒業後は定職に就かず「行方不明」になると揶揄されがちな藝大生だが、
作家活動を続けたり働いたりして「みんな生きてはいける」そうな。



こんなところだろうか。

受験する前までは
「ものづくりをやりたいと思っていたのに、将来への不安から、一番やりたいことを選択できていないまま人生が進んでいく」
という状態で、行き詰まっていた。
なので、田舎で公務員を続けていたとしても、精神的な面で先はなかったように思う。

実は1度試験に落ちていて、2度目の受験で合格したのだが、最初の年に落ちた時も、
「初めて本当にやりたいことのために一歩を踏み出せた」
と思い、清々しい気持ちになった。

なので、再入学について迷っている方はとりあえず受験してみるのもいいかもしれない。
恐ろしいことは失敗することではなく、失敗を恐れて何も経験しないまま人生の取り返しがつかなくなっていくことだと思う。かつての私のような。

10年後に後悔していないとも限らないが、少なくとも現在の私は入学してよかったと思っている。

もし他に知りたいことがあれば、プロフィールにTwitterのアカウントを載せているのでDMください。

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