シェア
刀篤(かたなあつし)
2022年7月30日 08:15
『既知』カン、カン、カン、鳴る警報機 遮断機の内へ私の意識は脚を踏み入れた夕焼けと開かずの踏切カン、カン、カン、電柱から見下してくる一羽の大きな鴉を私はじっと睨み付けるカン、カン、カン、血の匂いを嗅ぎつけて彼奴は挑発し誘っていた未来を待っていたのだカン、カン、カン、畜生と蔑まれる彼奴等が私たちの見立てを遥かに上回る洞察力と明確な意図を持ってカン、カン、カ
2022年7月22日 19:32
『Alice in Paradox』ある朝、私の前に私が現れた。「おはようございます、私はあなたの幽霊です、あなたを抹消しに来ました。私は私の幽霊に抹消されて、あなたの幽霊になり、あなたを抹消しに来たのです」こんなナンセンスな世界を、世界が肯定する世界だから、私は深く傷ついたのだ。死はいつも自分の顔をして、自分の前にやってくるそれは、自分が自分としてしかこの世界を、
2022年7月22日 19:28
『パン屋』子供が病気だってなんてことないさ私たちが頓服薬を作って林檎も柔くおろしてあげる少年が凹んでたってどうってことないさ俺たちがギターを叩きつけてパンクロックを聴かせてやるぜパン屋はただ職人然として目前の固いパン種を熟す為毎朝3時半から仕込みを始める少女が飢えていたって心配しなくていいのさ私たちが牛乳を添えて待って行くよ世界を柔くした食べものを
2022年7月9日 12:37
『戦禍』"愛を注ぐ"という表現には本質的に語弊があるものだ家畜を肥え太らせるような競走馬に洗脳を施すような我が子を鞭で躾けるような沢山の人々が殺し合って随分あとになってからひょっとしたらと気付くあれは墓穴に"死体を注ぐ"のと違わなかったのでは?
2022年7月1日 19:59
『薮睨み戦場』私たちが共通の礎の上に匍匐して世界の末端として機動しているなら鹿も自分が喰われてゆく刹那に虎の模様を美しいと感じるか