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詩:『Alice in Paradox』

『Alice in Paradox』

ある朝、私の前に私が現れた。
「おはようございます、
私はあなたの幽霊です、
あなたを抹消しに来ました。
私は私の幽霊に抹消されて、
あなたの幽霊になり、
あなたを抹消しに来たのです」
こんなナンセンスな世界を、
世界が肯定する世界だから、
私は深く傷ついたのだ。

死はいつも自分の顔をして、
自分の前にやってくるそれは、
自分が自分としてしかこの世界を、
肯定することができないことの、
証左であり肯定なのだ。
その肯定を肯定することのみが、
人生を賭けて取り組む価値のある、
私たち詩人の仕事だった筈だ。

兎は懐中時計を気にして、
残りの寿命をカウントする。
一方アリスは永遠を拒否し、
兎とは違う肯定へと至る。
私はアリスを肯定する。
私の私は此処に至り私を、
抹消することを肯定した。

なんて素敵な夢だったのかしら、
アリスは夢から醒めて、
私は私の幽霊を見た。

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