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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2021年12月の記事一覧

詩:『book girl』

詩:『book girl』

『book girl』

転がり出した本は
空気に分解されて
拡散し冷えた音を放ち

万華鏡の白い底で
歌い踊り詩を読んでいた
四人のアイドルも白かった

椅子から立ち上がった
わたしは拍手を続けた
ステージで鯨が精製された

かの人が居る廃墟に今
わたしを案内して欲しい
こんなに苦しいのだから

生きていく上で必要なもの
それはたいして多くはないよ
別れの理由はいつも特別なんだ

コ、井、矢、和

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詩:『鶯谷↔日暮里』

詩:『鶯谷↔日暮里』

『鶯谷↔日暮里』

下半身に違和を感じ
悲鳴を呑み込んで沈黙し
列車から逃げ出した鶯谷駅
得体の知れない数分間
可能性に過ぎなくとも
綿密に計画されたものなら
恐ろしいことだけれど

全ての人格が内包する
負のイマジネーション
実際に行われなかった
可能性の膨大な識閾下
現実に表出しない性癖
日常の偏執的な想像力
その如才なさが何者かによって
真っ直ぐ暴き上げられたとき
わたしの精神は耐えられるか

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詩:『道化』

詩:『道化』

『道化』

自分のやっていることの
滑稽さに気づいた瞬間から
ドロップアウトしてゆくのだ
この社会からこの世界から

詩:『ワニ園』

詩:『ワニ園』

『ワニ園』

15歳、水晶は逃げ出した、裸足で
死ぬつもりだった、何処かで一人
静岡方面の列車に乗った、底冷えする夜
少年が待っていた、ワニ園で
「初めまして、お嬢さん」
少年は名乗った、爆弾魔と
「もったいない、死ぬなんて、
逆に吹っ飛ばそうぜ、世界を、
そしてその前に靴を履こうぜ、君は」

二人は爆弾をしかけた、ワニの檻に
たくさんの爆弾は、少年が用意した
園のあちこちに、爆弾をしかけるうちに

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