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暁に薮を睨む

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刀篤(かたなあつし)の厳選した詩集です。
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2021年6月の記事一覧

詩:『真理』

詩:『真理』

『真理』

女性に生まれて
美しく育つ

男、男、男、男、
単細胞の種馬ども

わたしはわたしの女性性の
深海に一人堕ちて行く

先輩はノーマルノンケ
わたしは危ノーマル

「おまえの病気を治してやる」
「男の良さを教えてやる」

わたしの先輩を見るな
わたしの先輩を誘惑するな
抱いた先輩の話をわたしにするな
抱いた先輩に飽きてゴミのように捨てるな

少年漫画は戦闘系か
それでなければエロ系か

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詩:『空』

詩:『空』

『空』

空を見るのが好きだ
斜めから眺めると

手前にいつも見える
電柱と電線はもっと好きだ

小さいときのわたしに
その存在はより大きく

等間隔を基点として
空は区画整理され

パズルのように
やや複雑に交叉し

茫漠とした青と白
積乱雲をも切り取り

文明の美徳の
暗喩のように

夏の日差しに
アンカーを穿つ

導線内を駆け巡る
隠匿された力は

自然の摂理にじっと
睨みを利かすように

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詩:『サリエル』

詩:『サリエル』

『サリエル』

苗字の確認は豊かな左胸の名札
好きなブランドはGoogle Lensで盗撮
居住マンションの所在は閉店後尾行
部屋はポストの苗字でなるべく絞り込み
帰宅後明かりが点灯したら住所確定

毎日彼女のお洒落な私服をチェック
毎日彼女のレジで安価な書籍を購入
毎日彼女のネイルとピアスをチェック
毎日彼女の香水を背後からチェック

話しかけなくもこれらの行為で認知は深まり
悪い意味であなたが

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詩:『既成事後』

詩:『既成事後』

『既成事後』

朝一番の無責任な言葉が
わたしの子宮内膜で着床した
それに今さら気づいたんだ

わたしの試行していた思考を返せ
わたしの施行していた嗜好を返せ
ある種の指向性をもって突き進んでいた
わたしの至高性を担保していた志向性を返せ

産みたくない膿みたくないんだ

成ってゆく胎盤を無かったことにしてくれ
事後に飲んでも有効なピルをわたしにくれ
既成事実を受精しなかったことにしてくれ

ただ

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【詩】±0

【詩】±0

ここには何もない

そう言ってしまうと語弊がある
少なくともここには語弊と同質量の
纏まった言語の痕跡が見られた

詩:『二次元』

詩:『二次元』

『二次元』

優しくされると
ニコニコするよ

じっと視られると
ドキドキするよ

ギュッてされると
ポカポカするよ

ズキズキするよ
ドクドクするよ

わたし/
わたし/わたし
わたし/わたし/わたし

入れ子状の
階層一つ下

搾取して?
虐げて?

架刑にして?
火刑にして?

嬲りものにして?
晒しものにして?

実在/非実在
議論/空論
感傷/感情

優しく
じっと
ギュッと
ズキズキ

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詩:『平日』

詩:『平日』

『平日』

深夜ラジオの選び抜かれた曲群が
リスナーたちの体重を拾いながら

寝落ちのあとも独り言のように
居心地良く幽世(かくりょ)に揺らす

やがて目覚ましに
ピピピとうち切られて

憂鬱ののち飽和した朝が
肩やうなじに降り掛かる

週末土日は晴晴しく遠方に去った
昨日は今日、今日は昨日で

終わらない黙示録の進水式
私の未来は蜃気楼のようだ

昼過ぎにルーチンが暴走して
犬はしっぽを追いかけ

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