詩:『既成事後』
『既成事後』
朝一番の無責任な言葉が
わたしの子宮内膜で着床した
それに今さら気づいたんだ
わたしの試行していた思考を返せ
わたしの施行していた嗜好を返せ
ある種の指向性をもって突き進んでいた
わたしの至高性を担保していた志向性を返せ
産みたくない膿みたくないんだ
成ってゆく胎盤を無かったことにしてくれ
事後に飲んでも有効なピルをわたしにくれ
既成事実を受精しなかったことにしてくれ
ただの言葉なんだ無責任な質量の無い言葉が
人生の訓辞がわたしたちを押し倒してきた
社会性の呪いが言葉に宿りわたしにも宿った
朝礼の校長先生のお話が射精した言葉が
わたしたちの処女性に飛びかかってきた
立ち眩みながら女子高生たちはみな裸に剥かれ
無防備に太陽の圧力に屈しなければならない
産みたくない膿みたくないんだ
洗浄しなければならない
すべからく堕胎したのちに
何ごとも無かったかの如く
無垢な処女のように至るまで
産婦人科に行かなければならない
産婦人科の先生に洗って貰わなければ
産婦人科をGoogleで検索……本番ありなら
堕胎費用は一晩で五万円が相場らしい