詩:『平日』
『平日』
深夜ラジオの選び抜かれた曲群が
リスナーたちの体重を拾いながら
寝落ちのあとも独り言のように
居心地良く幽世(かくりょ)に揺らす
やがて目覚ましに
ピピピとうち切られて
憂鬱ののち飽和した朝が
肩やうなじに降り掛かる
週末土日は晴晴しく遠方に去った
昨日は今日、今日は昨日で
終わらない黙示録の進水式
私の未来は蜃気楼のようだ
昼過ぎにルーチンが暴走して
犬はしっぽを追いかけている
追い詰められた上司が
何かを喚いている
納期は今日だ!
今日なんだ!!
全ての顧客データを別の
フォーマットにコピペしろ
VLOOKUP関数で全ての
売上げデータを抽出しろ
潮目が完全に消えたあとも
波間の残響に呑まれている
これは幻聴ですか?
そうです、あなたは病気ですから
これが日常ですか?
そうです、あなたは真っ当ですから
深夜ラジオにリクエストした曲が
わたしたちの毎日を表現しながら
寝落ちのあとも子守唄のように
居心地良く幽世(かくりょ)に揺らす