1000文字小説 白い羽
高いビルから見下ろした世界
まるでミニュチュアのようで
実はあの世界には人間以外の魔物が住んでいる。そんな気がしてならなかった。
カチッ
足首に冷たい感覚がした
見下ろすと、足枷がついていた。
繋がった鎖の先は
ぼやけていてわからない
外そうとしても外せない
誰かの足音がした
「助けて」
呟く私の声は消えていく
足音の主は真っ直ぐ前を向き
私には気づかない
先程の私のように
手すりから下をのぞいて
ニヤリと笑っていた。
ゾクっとするような笑い顔に
背筋が寒くなった。
次の瞬間
その男性の背中に羽が生えた
真っ白な羽は
少し折れていた
男性は身を乗り出した。
(あの人には足枷がつかないの?)
次の瞬間、男性は空を舞った。
“あの人は、もう、何日も、
あの行為をくりかえしているの”
何処からか声がしたが、姿は見えない。
どうやら、私の脳に直接、話しかけてるようだ。
まじか!信じられない!
まじです!信じてください
脳だけに響く声に驚異を感じながらも、
怖いもの見たさで男性が舞った空を眺めていた。
しばらくすると
今度は女性が現れた
今度は泣いていた
(あの人も…)
“さっき、あなたもあの柵の向こうをのぞいてたでしょ?危険だな、と思って、足枷つけたの。あなたはまだ、この世に未練があるようで良かったわ。そうじゃないと足枷はできないから”
何度も空へと舞っている人は
この世に未練がなかった人なのね
“最初は自分で自分に見切りつけたのだけど、今は後悔してるの、だから、毎日同じ事を繰り返しているの”
だから、表情が暗いのね。
“あなたは優しい人だから、彼らがあなたに気づいたら取り憑かれてしまう、あなたなら助けてくれるって。だから、逃げて。2度とここには来ないで”
その言葉と共に足枷が外れた
私は立ち上がった
足元がもつれて倒れ込んだ
頭を打ったようだ
目眩と共に意識が遠のいだ
ーーーーーー
「おーい!しっかりしろ!」
誰かの声がした。
「こんな所で寝てたら風邪ひくぞ」
私はうっすらと目を開けた
私は公園の滑り台で寝ていた
ホームレスのおじさん達が覗き込んでいた
ひゃゃあー
「よし!生きてる」
そういうとホームレスのおじさん達はゾロゾロと歩き出した。
「あ、ありがとうございました」
やっとの思いでお礼をいうと
片手をひらひらした
うん?あれ?
今、背中に羽があったような…
まさかね
私は体を起こし、腰をさすりながら
立ち上がった。
変な夢みたなぁ…
苦笑いしながら、カバンを掴んだ
少し強い風が吹いた
足元に白い羽が…