病院に行って 2
「はい」
娘が差し出した一冊
病院の待合室に置かれていた冊子である
中身を開くと、エンディングノートのようだった。
あぁ、私もそろそろ用意しなきゃかしらね。
母が亡くなり、ゴタゴタぐちゃぐちゃになったのを見て、娘は心配になったのかもしれない。
ページをめくってため息がでた
過去の思い出を語るほどはなくて
心から笑った事も少ない
一番楽しかった想い出と言えるほど
想い出もない
スピリチュアル的な事は好きじゃないけれど
私のオーラを見た人が
「今まで辛くて悲しかったのですね」と言った。
その時に“そうだったかも”と初めて思ったという体験をした。
私の中にはいつも悲しい、寂しいがあり、
笑いや楽しいと感じる感覚が薄くなっていたのだ。
だから、
“どれが?”と聞かれてもわからないのだ。
比べる対象がないわけだからね。
娘から手渡された時に
「知りたい事があるなら、元気なうちに聞いておいて」と無茶な事をいった。
“大切な事”って、なくなってから気づく。
“聞いておけばよかった”もいなくてから気づくもの。
私がそうだったように
子供達も感じてしまうかもしれない。
この冊子にまだ書くことができない事がいっぱいある
伝えなきゃいけない事もまだわからない
だから
この冊子にかけるような
体験をするために
私はまだまだ生き抜いてやる
“これが一番楽しかったんだよ”
“これが一番笑った事だよ”
って言えるようにね