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セカンド・プロポーズ

「今まで支えてくれてありがとう。
ここまでこれたのも君のお陰だ。花束を用意したんだ。受け取ってくれ」

サプライズが喜ばれると思うなんて、なんて単純な男なの。

観客まで用意したら、心の中は興ざめするに決まってるじゃない。

しかも拍手までされたら、
「こんなのバカみたい」なんて言えないじゃないの。

笑顔でこの場をやり過ごすしかない。

つらい、なんてこれっぽっちも考えないんでしょうね。


なんで、喜んでくれると思うのかな、こんな茶番。

あなたはいい人で、尊敬できて、人からも好かれて我慢強い。

だけど、そんなことは私にとって全然魅力的じゃないと気づいたのに。

だけど、いまさら後戻りして考え直すことなんて無駄だと思っていたのに。

あなたは私のことなんか、全然分かっちゃいなかった。

知ってたけど。

私の好みに付き合うふりはしてたけど、ただの世間体みたいなこと。

好きなものが違う。

嫌いなものが違う。

したいことが違う。

大事なものが違う。

全部違うことを見ないふりして暮らしてたのに。

欲しかったのは、テレビなんか見ないで楽しく食事できること。

欲しかったのは、ただいつも言葉をかけあうこと。

あなたは私を見ていないで、世間のイメージだけ見てる。

私がやりたいことを知らないから、自由にさせてるだけ。

私が好きなものも知らないから、何かの真似してるだけ。

きっと花束は、「頑張った自分へ」を変えた賞賛なのかも知れないね。

私への花束ではないと思う。

私は黄色のひまわりなんか欲しくない。

小花にふちどられた、ゴージャスな、
情熱的な赤いダリアの花束なら欲しかったのに。

そんなこと、あなたは知る必要がなかったんでしょう?




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野原 綾
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