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ショートストーリー

7
あなたの人生にストーリーを。
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信号 1

信号 1

もし。
もしも。
あの横断歩道の信号が
赤も青も
どっちも光っていたら
私はどうするんだろう。

横断歩道で待ってる時間
私はいつも考える。

赤は止まれ。
青は進め。
赤いと止まらないといけないけど
青いと進まないといけないわけじゃない。

赤はバツ。
青はマル。

ではなくて

赤はバツ。
青はスキニシタライイ。

そんな感じ。

私は、どうするんだろう。
いったい、何が赤なんだろう。

赤を

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思い出

思い出

彼と別れてから色々と気持ちに整理がついて、彼との思い出も物を整理しようと箱を開けた。
淡々と思い出を分けていった。
なんの感情もない。
静かな静かな作業。
ダンボールの底と小さな思い出たちの擦れる音。それだけが響く、機械的でとても優しい懐かしい空間。

ふと、1枚の写真を手に取る。
仕事終わりに行った公園で、
観覧車に乗った時の写真だった。
観覧車のオブジェの前に立たされて
ニコニコの係員さん達が

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君を好きだとは言えずに。

君を好きだとは言えずに。

昼休みが終わる、5分前。
僕は、今日も彼女を止める。

何よ。
あぁ、また来たの?
毎日毎日ご苦労様ね。

うふふ、いやよ。
だって割と好きなのよ。
こういうあたしが。
それにこの時間も好きなの。
わたし1人だけ、青空の下。
この空を独り占めできるだなんて、ちょっと優越感に浸っちゃったりして。
うふふ。

授業をサボってる自分をかっこいいとか、そんなことは思ってないわよ?
みんなと違うことをするの

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紅茶の中で

紅茶の中で

流れゆく時間にに取り残されぬよう

必死に毎日を駆け抜けているはずなのに

どこかで私は

ずっと何処かで

立ち止まったままでいるような気がして

ふと、

明日に怯えたりするんだ。

両手に包まれた紅茶の中で

温かく漂う私と目が合ったので

コク、とひと口

紅茶を飲んだ。

まだ、紅茶は熱かった。

ベランダと少年

初めは何も分からなかった。
不安だった。
ここにいる自分の存在が。
これで大丈夫なのか?どうすればうまくいくのか?
見えているつもりでも全く見えていないようで、世界はぐるぐると僕の周りを狂い踊り続ける。その一瞬一瞬が残像のようなもので、はっきりと確かに見えたことはなかったんだ。

だから、不安だった。
不安だったんだ。

僕は、ある程度の“慣れ”を身につけた。
必死に、自分の立ち位置を見つけるため

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とまと

とまと

あなたのトマトを選ぶ時、値段なんて気にしなかった。
むしろ、国産直売!とかなんだとか書かれた、ちょっと良さそうな高いものを、あえて買ったりもしてた。
それを無駄とも勿体無いとも思うことはなかった。
むしろ、いつもより高いトマトを買うことに、愛おしさまで感じていた。

私は多分、あなたを愛してた
少なくともあのトマトひとつ分は。

🍅

プリン分の愛

プリン分の愛

あなたが買ってきた高そうなプリン。
もたっとした丸い瓶。
赤と白のチェックのそれっぽい紙がリボンでくくられて蓋となっている。
固まっていないカラメルが少し苦そうで、私の心はキラキラしていた。

ふと思った。
これがあなたの気持ちなら、
これが私への気持なら、
私はそれを壊したかった。
ぐちゃぐちゃにしてやりたかった。
だから思いっきり、この持ちづらい瓶を片手で縦に振ってやった。
カラメルと卵料理が

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