シェア
そあ
2021年3月19日 21:00
綺麗な水から生まれた君の かくれんぼに付き合って 遊んでいたら 春 夕暮れ 陽に透けた嘘も 伸びた影に隠れた本音も また明日 手の鳴る方で 会えるかな 不確かだから 触れて欲しかった 君の体温で 僕の言葉は色が変わるの 何もかもを飲み込む優しさで 埋もれた世界に生まれ落ちた君は 産声を持っていない 閉じ込めてしまう 冬の香りと白く
2021年2月19日 21:00
花束を買って歩く道すがら 恋人の裏切りに出会うような日 ミュージックビデオを馬鹿にした季節は ありふれたフィクションへ 落下してゆく 汚れた鏡に 自惚れた自我が歪んだ 何度目かの感傷は モノクロノイズに蹴散らされる 暗闇は泡 行方知らずは言葉 君は 僕に 必要な 傷跡 いつかの涙で この花を飾ろう きっと 時間に染まってゆくだけ 朽ちてゆくまで 見届けたなら きっと 虚
2020年12月29日 21:25
ぼんやり光る 部屋の壁続けて報せるならば 眠りにつけるでしょう明日 目覚めたら 分かることやっぱり 君だったねって 答え合わせしたい会えない春は 積み重なって会えそうな夏は 零れ落ちて会ってみたい秋は 叶わなくて冬の星座だけが 美しいまま 廻る今宵も月が 一夜分 隠れてしまうように少しずつ 心の余白に 風が入り込んで君は 私の知らない人になる滲んだ空の隙間に忘れていた
2020年10月20日 21:00
琥珀で死んだ蝶に 触れたかった扉に手をかけて 動けないねもう時間は 冷たい床に吸い込まれて反響する 偽物の一歩を踏み出した音沈黙が伝える 溢れない言葉 止まらない思考影はあまりにも 無愛想で気怠げだった君の価値観で 僕が否定されてゆくほら 苛立って 昔話を始めるのさ読み違えたカレンダーに未来を語りかけて 笑い者皆 一人で 幸せになっていったねえ 君の理想の幸せの中に僕が
2020年8月27日 21:00
階下 見下ろして流れた涙強がりが剥がれ落ちて 大怪我をした回らない観覧車は 夜の時計台電飾と歓声が消えた夕景補正できない 視界は雲隠れシャッターを切るたびに 君は赤い瞳熱風に吹き飛ぶ カリカチュアは忘れられた怒りの風刺か過労のキリギリスが 自販前でバーンアウトエメラルドの蜂鳥は 水煙管に集う地下への入り口は すっかり閉じてしまって君も僕も 細く長く 生きるだけぬるい炭
2020年8月9日 21:05
残り時間を 持て余した夜には水溶液に 月の雫を一掬い暗転した部屋に 波紋 広がって 冷たさに 孤独と揺れる鏡の中 ベルーガと対話水泡で紡ぐ 『さ び し い』 信じないよ だから裏切らないで触れ合わないまま 交わす体温縛り付ける 引力と傷跡ここから先は 遊泳禁止の記憶気まぐれに 足を踏み入れたなら埋め立てられた群青に 気づいてしまうはらはらと 星の砂集まれば こんな
2020年7月27日 21:07
見透かしたような猫の目線をビニール傘で隠した早足 乾いた喜怒哀楽に寄り添うは生ぬるい風のひと吹き右足 灰色の過去に捕われて風景 滲んだら 負けよ感傷 喉に詰まらせて上手に泣けやしないのにダウナーとハイが隣り合わせなこの季節の仕組みは 躁と鬱シューゲイザーで 霞ませてゆく心象降りしきるのは ただ 焦燥の雨首を切られた紫陽花が 朽ちる頃に青い空と 狂騒を思い出す疑心
2020年7月24日 21:00
太陽を隠した雲の縁が銀色に透けてグリッターあの夏が来たと勘違いして黒い駅のホームに鳩が堕ちる慰めは高い塔 青い光の点滅にフラワーダストの瞬きを重ねた低く低く飛行機は翔けて手を振る人は5秒間の物語になる放射 火花 咲いて 静寂次の灯火は誰の残像?網膜は正常で 偶像を殺めたのは僕の脳結べない 無数の残響僕の目の中で 君は死ぬのさ絶えず屈折する希望 涙から掬い上げた金魚
2020年4月12日 19:47
両眼が空っぽな雌の兎 歪なグレーの眼窩誰かが落としたオペラグラスを 嵌め込んだら狂ったように跳ね返って 彼女が動き出した それって つまり 僕の過ちは 消えたってこと 綺麗な景色が見えるかな また遠くに行けるかなううん 罪悪感から解放された それが嬉しかった 僕は彼女を愛してはいなかったけれど失くなったら困るんだ 僕の手が汚れるから 何度も君の頭を撫でた 薄い右掌 従順で口
2020年3月19日 22:39
泣きたい時に限って 涙は流れない死にたい時に限って 誰も暇じゃない 春の檻の中で 転げ回って 従順な血統書付きの犬の目つきが変わる噛み砕いた蝶番の鍵は 君の首輪の鍵だった 思い出を捨てたい時に限って 月曜日は来ない全てを忘れたい時に限って 雨は降らない アルコールランプで 教科書を燃やして無口な優等生は広大な世界を知る放り捨てた学生証は 重力に逆らって舞い散った 神様に
2020年3月17日 22:19
暗い星々に吸い寄せられたのは 夜に惑う僕鴉が落とした風羽根で 君に書く手紙は 虚構毒付いた花々 群がる蝶々むせ返るほどの鱗粉 瞳に 孤独が 乱反射した 3段ケーキは斜塔 傷口から蝋が溢れ出したら君に渡したかった言葉 怯えに変わって 霧散いつだって 本音は 瞬きの合間に 零れ落ちるメレンゲで出来た翅が 型抜かれて 消えゆく 月の光さえ届かない 閉じた世界で君が酸素と反応する音を
2019年11月14日 20:22
誰かにこの話 垂れ流したとして解決したことは 何だっけ愛の問題は置き去り 綺麗な話の出来上がり君と向き合うのは 先延ばしにして ガラス 曇った 読み合ってるよ 表層から深層を不意に捲れる本音のページに 栞挟んだあの一瞬だけ君は僕に似ていた 悲しみの青いインクで 僕たちは繋がれる気がした 蜘蛛の巣にログインして 感傷が剥がれてゆく 傷だらけのビーチグラス 拾い集め
2019年10月30日 22:15
フラスコに生けた白百合に飲み込んだ嘘が 析出してしまう裏切りと優しさのグラデーションで染まっていく水溶液君の涙を吸い上げた試験紙は 無反応だった悲しくなくても泣いて嬉しくなくても笑って嘘を謳歌するこの〈実験〉に 終わりは来るの投げ銭を受け取った白衣が 我を忘れて笑ったああ ほら また 君を傷付けたくなる溶かそうと思えば 君は一人で溶けてしまうから混ざっても僕は 触媒のまま