足皮すすむ

物書きをしています。過去に出版しておりました数々の書籍が現在廃盤となり全く流通しておりませんので、手元の原稿を元にこちらのnoteに書き写し投稿いたします。

足皮すすむ

物書きをしています。過去に出版しておりました数々の書籍が現在廃盤となり全く流通しておりませんので、手元の原稿を元にこちらのnoteに書き写し投稿いたします。

最近の記事

むきえび (後編)

(前編をお読みになってからこちらをお読みください。マジで。) ポリスメンは少したじろいでから言う。 「お前…本当にもう脱獄ルートを考えちまったのか…?わ、わかった。それなら俺はお前のせいで無実の罪でここに入れられたわけだから、むしろお前は俺を連れて脱獄するべきだ。明日の朝だな、同行させろ。」 「よしそれなら準備がいくつかあるのでそれをさっさと終わらせるぞ。ここだと目立っちまうから森に入ろう。」 〆々とポリスメンは来た道を戻り森に再び入った。 ゼビーンはそれを、何か含みを持っ

    • むきえび (前編)

      足皮すすむ(2024年) 〜はじめに〜 この世界には、何かひとつの事柄に突出した才能を持った人間が一定数存在する。音楽や絵、スポーツや暗算など、その傾向は多岐に渡る。 そんなあらゆる才能の中でも"脱獄"ときいたら読者の皆さんは何を思うだろうか。 褒められたものではない、何の役にも立ちやしない、犯罪者を擁護し持ち上げる必要なんてない…。ええ、わかりますとも。私だってそう思います。 しかしながら今回この本を執筆する場合は別です。多くの場合本というのはエンタメの側面を持っています

      • ヂマヌィム・オムホ

        足皮すすむ・1999年 〜はじめに〜 洋食亭"bet-veht.(べとべと)"をご存じだろうか。 「いらっしゃいませ、お待ちしておりました足皮様。」 店に足を踏み入れた瞬間そう言って出迎えてくれたのはここのオーナーシェフ。いかなるときでも素晴らしい料理を振る舞ってくれるとあらゆる業界からも評判で、洋食界に於いて彼の名が話題にあがらない日はないとまで言われている。 出迎えてくれた彼の姿は今でも忘れられない。禿げ散らかり不潔で脂っぽい頭に、Tシャツ越しでもわかる情けないビール腹

        • よしべえ's チョーク

          足皮すすむ・2020年 〜はじめに〜 私が頭狂大学在学中に、その一人暮らしの寂しさを紛らわす為にペットを飼った。ガチョウだ。 飼う前から名前は考えていた。雄ならガッツ、雌ならわたゆきにしようと思っていたが、結局ドルスペッチョと名付けた。 ドルスペッチョは変わったガチョウだった。(私に似たのかもしれぬ。)いわゆる鳥用の餌はいっさい食べず、カチョエペペだけ食べた。時々濃いブランデーを与えてやるとため息を夜風に乗せ、目を瞑って過去に思いを馳せていた。スロウジャズを流してやると尚の

          羽子板の魂・下

          足皮すすむ ※今作は下巻です。上巻をまだお読みになっていない愚者は先に読んでからこちらをお読みになってくださいまし。 この下巻を先に読んでも話がわかるような文体で書き上げた私もさすがではありますが、やはり上巻のエモさったらないので上巻を読む事をとても推奨しております。 『羽子板の魂・下』 ズニョズニョなんとか地区大会を優勝したチー油学園高等学校・通称チー高の羽子板部は、突如として校舎上空に飛来した伝書鳩さんが、そのかわいいクチバシにちょこんと咥えてたおてがみをよみました

          羽子板の魂・下

          羽子板の魂・上

          足皮すすむ ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ ※今回は番外編です。このnoteというアプリを使って少しずつ過去の作品を書き写し投稿してきましたが、この度書籍にしない完全新作を執筆しnote限定で投稿してみました。私の青春時代の全てを書き記しました。読み進めるうちにあなたも足皮少年に感情移入し、いずれは私のコピーとなる事でしょう。 足皮すすむ(2024年) ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○ 『羽子板の魂・上』 「ワーセローイ!」 「ワー

          羽子板の魂・上

          象牙の矢尻

          足皮すすむ・2024年 この世の中にはさまざまな人間がおり、そのひとりひとりが独自のストーリーを持った人生を歩んでいる。そしてそのストーリーをスリリングに、そしてドラマチックに彩るのは、主人公である各々の"感情"である事は間違いない。 嬉しい、楽しい、悔しい、悲しい、悲しくはない、やや辛い、甘い、エモい、キモい、キショいーーー。 そういった数多の感情の一つに"怖い"がある。これはしばしば「恐怖症」となって当人の脳裏に強くこびりつく。 こびりついた恐怖症は、それに因んだものに

          ある老父の料亭にて

          著・足皮すすむ (2017年) 〜はじめに〜 宮島十蔵という伝説の荒くれ者をご存知だろうか。彼は1664年から1693年までの約30年間、彼の住む村とその近辺の村を含めた一帯で年に一度行われる一番の荒くれ者を競う大会で、いつも一等だった。 宮島の持ち味はその台詞だった。彼は大会中、必ずといっていいほどストーリーじみた声を上げながら荒ぶるのだ。 その内容の高揚感やストーリー性や人間模様、そして時に涙を誘う台詞回しに人々は感動し、宮島に票を入れる。 そんな特殊な荒くれ者宮島十蔵

          ある老父の料亭にて

          モンスーンがふく頃に

          著・足皮すすむ (2023年) 〜はじめに〜 2022年7月。 初夏の元気な日差しがその温暖だけを残してようやく姿を消し、繁華街が賑わい出した刻。 私はその日執り行われた、お得意先のオオハラ氏との会談を、今しがたようやく済ませた所だ。 オオハラ氏は超大手印刷会社の管理職をしておられ、それはそれは頭の回転が速い方で、いわゆる「キャリアマン」なのだ。 いい香りのするジェルで髪をバシっと固め、フランス製のネクタイがお気に入り。勝負の日は必ずリトアニアから取り寄せた最高級の豆を使っ

          モンスーンがふく頃に

          異文化放浪記・後編

          ※こちらは「異文化放浪記・前編」の続きとなります。 まだ前編を読んでいない方は是非読んでから来てください。 さもないとストーリーについてこれなくて泣きを見ますよ。泣いてる顔を愛する人に見られたいのですか? 5日目「がんもどき」 静かなる平原に、山に、川に、朝焼けが色を与える。色付けられたそれらは生き生きとしはじめアレする。 ここはギーチョ村にある宿ヴィラ・エッピエッピの最上階。私とモォヒィ氏、のぶみち氏は同時に目を覚まし、同時にあくびをし、全く同時に同じ事を言った。 「「「

          異文化放浪記・後編

          異文化放浪記・前編

          著・足皮すすむ (2012年) 〜はじめに〜 日本国内有数のエリートが集まり、ユニークで多彩な専門学科をその道の最高峰とも名高い教師陣が、最先端の授業を以て教鞭する、国立頭狂大学。 私が在学中も様々な学部学科が設立されていき、その度に興味深い人生を歩んでこられた先生方がおいでになった。 中でも印象的なのは便所学部。便所にまつわる歴史や成り立ち、そしてこれからの便所に関して学べる。 "糞とは、富(当時の作物)を育てるもの"という考え方から当時は"富入れ"と呼ばれていたという。

          異文化放浪記・前編

          ギーヤギーヤ

          著・足皮すすむ (2001年) 〜まえがき〜 鬱陶しいくらい晴れ渡った真っ青な空の下、オーシャンビューを贅沢に感じながら海沿いの道路をセグウェイで走行している私に、後ろからクラクションを鳴らす輩がいた。 なんのつもりか知らないが、私は後続車に迷惑にならぬようしっかりと60km/hで走っていた。 だのに後ろの輩ときたら私にクラクションを鳴らしたのだ。 これは…レースだ。きっと相手は私にレースを申し込んでいるに違いない。 私はさらに前傾姿勢になりスピードを上げた。 着いて来れる

          ギーヤギーヤ

          ギョマニツ

          著・足皮すすむ(2006年) 今や国民食となった、ラーメン。 そのラーメンを突き詰め、極め、至極の味を提供する店は日本国内にも数多くある。 四国に「ギブミーチョップスティックス」というラーメン屋がある。 ここはサービスの良さと清潔な店内、そして何よりその味で勝負している店だ。 店頭に並ぶと、それはそれは素晴らしいスープの香りが漂う。 豚骨を極限まで煮立てコクを存分に出し、究極の配合で調味料が入れられる。 この究極のスープ。ありとあらゆる隠し味が入っているとファンの間で噂だが

          ギョマニツ

          足の皮

          著・足皮すすむ (2002年) 〜まえがき〜 私の大学時代の恩師に、木嶋先生という方がいらっしゃる。木嶋先生には本当にお世話になった。 学食の時間、私の嫌いなニンジンが配膳された際に30分格闘した事がある。そんなとき木嶋先生はこちらに駆け寄って、オキョキョキョキョと言いながら腕を固定し脚だけで前後左右に動き回る踊りを披露してくださった。 また私がレポート作成時にタイピングミスをした際、オキョキョキョキョ!!と言いながら、ギャツビーを塗った手で前髪を握ってニギニギニギニギして

          ガチョウ

          著・足皮すすむ (2005年) 〜はじめに〜 きたる2004年初詣。私と妻のじゅんこは浅草のとある神社に訪れていた。 お目当てはモチーフオブチョークのロゴ入り掃除機だ。 MOCの掃除機は最新技術を取り入れた逸品で、吸引力が日に日に増していくという。 つまり今日より明日、明日より明後日、そして数年後には宇宙に散らばる星々さえも地球に吸い寄せるという、まさに能ある鷹は爪を隠すといった代物だ。 そんな掃除機をリリースしているMOCとは一体何なのか、私は気になってしまった。 頭狂大

          黙浴を知る

          著・足皮すすむ (2018年) 〜はじめに〜 頭狂大学民俗学部を主席卒業した私でさえ、文庫本のこの「はじめに」「おわりに」欄の意味がよく分からなかった。 「はじめに」と「おわりに」欄。マナカナみたいな双子かと思っていたが、そうではない。 最初と最後に何かメインとは違うものが挿入されているのだ。 はじめとは何か。何に対してのはじめなのか。人類の?この地球の?それとも宇宙の? そしておわりとは。私の人生の?戦争の?食事の? 私はよく分からない事を分からないまま進めるのが嫌いだ。

          黙浴を知る